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超越者の邪魔者マーズ



 神王殿の道から月に行った彩桜はカケルに違和感を覚えていた。

景色を眺めながら飛んでいる間に瑠璃(ラピスリ)に伝え、集めていた禍を浄滅すると神殿探検だと探偵団メンバーを連れて離れた。


 青生は瑠璃の手を引いて皆から離れた。

【瑠璃、俺と彩桜の記憶もカケル君も次の何かの鍵になっているんだと思うよ。

 だから瑠璃は気にしないでね。

 その鍵を成すのに巻き込まれただけなんだから】


【青生……】


【考えてもみてよ。

 俺と瑠璃が顔を合わせ辛いとか、普通なら有り得ないよね?】


【……確かに】


【そんな心境にされてしまったの、腹立たない?】


【立つ】


【だから俺も彩桜も、今は故意に記憶の蓋を開けていないんだよ。

 裏をかいてやる、ってつもりでね♪】


【超越者様を相手にか? 青生らしいな】ふっ♪


【瑠璃らしく戻ったね♪ 良かった……】

とてつもなく長く感じる程に会えずにいた事だけは分かる数日分の想いを込めて抱き締めた。



―◦―



 彩桜は探偵団の皆と神殿内を楽しみながら、禍の浄滅前にイーリスタと話していた続きを詰めていた。

【たぶんね~明日だと思うの~♪

 何が、なのかは知~らにゃい♪】


【へ? 鏡のも覚えてないとか?】


【鏡さん? だったら俺達、ソレ絡みの鍵なってるのかも~♪】

奥の倉庫の扉を開けた。


【とにかく僕は明日、鏡と青生と彩桜を乗せて、月の道跡に隠れてればいいんだね?】


【うんうん♪】

〈たっくさん物が入る異界の壺、集縮(しゅうしゅく)さん達~♪

 小壺さん入ってるの、だぁれ?〉

皆との話は普通心話。


〖私です。聞こえますか?〗

手前の壺が1つ明滅した。


【獣神秘話法に近い? コレ聞こえる?】壺に寄る。


〖はいはい、聞こえますよ♪〗


壺の口に手を当てる。【コッチのがいい?】


〖よく聞こえます♪ 私達を使って頂けますか?〗


〈うんうん♪ 使うからねっ♪〉

【どっちの話し方がいい?】


〖どちらでも、よく聞こえています♪〗


【み~んなに お試しで小壺ちょ~だい♪】


〖はいはい、どうぞお持ち帰りください♪〗


〈お土産に?〉【ってコトでいい?】


〖はいはい♪〗


〈ありがと♪ 貰ってく~♪

 今日は1人1コね♪〉


〖はい♪ 使って頂ける事が私共、物の幸せなのです♪〗


〈うんうんお約束する~んるん♪

 はい、ちっちゃ集縮くん♪〉配るの~♪


〈もしかして壺と話してた?〉


〈ただの心話なの~♪

 ん? カケルさん、静かだけど大丈夫?〉

【俺、彩桜♪ また来るねっ♪】

〖サクラ王様!?〗【違うのぉ。中学生なのぉ】


〖パラレルワールドなのでしたね。

 三界のサクラ様は竜宝の王様なのですよ〗


〈そっか~♪ じゃあまた来よ~♪〉

【今度また聞かせてねっ♪】


〖はい♪ 此方でも使えるのかを調べて頂きたい物達が居るのですが……〗


【うんうん♪ 調べる~んるん♪】

〈マーズ、人世に行かなきゃだし、力丸とショウは忙しいもんねぇ〉

話しながら部屋の隅へ。


壺が明滅している。

〖多く御座いますので、僕の中身からお願い致します〗


〈コレ1番? ん、調べるからね~♪〉

大きな壺を頭に乗せた。

〈行こ~♪〉

飛んで行った。


〈彩桜、それは?〉


〈中身さん達が人世でも使えるのか調べるの~♪〉


〈それが約束?〉


〈うんっ♪ 瑠璃姉~♪ 帰ろ~♪〉



―◦―



 そしてマーズは東邦テレビのスタジオに揃った。

今日は紺も空も誰かの分身ではない。


いつもの電波ジャックと同様に始めたが、この日は派手なパフォーマンスは無く、穏やかなクラシック曲を演奏した。


パフォーマー達も演奏に加わっている。

笛だけなら音神級な紫がフルートなのは想定内。

他4マーズと黄緑(わかば)達はアリアナティが適性を見極めて指導した管楽器に並んでいる。


【母様? 神世にいらっしゃるものと思っておりましたが……】

また彩桜に聞かれたら別神(べつじん)だと言われそうなフィアラグーナが、浮かんで聴いているアリアナティの隣に並んだ。


【短期間でしたからね。見届けなければならないでしょう?】


【は? もしや普段は演奏しないマーズに奏法を御指導なさったのですか?】


【その通りよ♪ この国だけが足踏み状態で、担当の神マーズ達も手隙になっていたから一緒にね♪

 超越者だか何だかが仕組んだ事だとしても、地星の神は私達よ。

 おとなしく流されるなんて有り得ないわ】


【超越者が……では青生と彩桜が消滅寸前になったのも?】


【そうまでされてしまったの?

 そうだとしたら超越者も失敗に次ぐ失敗で焦っているのではないかしら?

 これを好機にしなければね♪】


母という大神は、とんでもなく強いのだなと改めて思い知ったフィアラグーナだった。



―・―*―・―



 マーズの優しい音色は心に響く。

たとえ音そのものが聞こえていなくても、だ。

にも拘らず、邦和の至る所で諍いが激化していた。



 邦和政府が土木建築業者に対し補助金は出すが儲けは無しで、人件費も政府算出のものでと決めたので、採算が合わないとの怒りから、マーズを拒絶した者の再建は請け負いたくないと業者が一斉に反発を示した。


そこから、一度は鎮静化していたマーズを拒絶した者達の怒りが再燃し、やはりマーズが地震を起こし、皆を混乱させているのだとの声が大きくなったのだった。


それでも、追い返した者全てではなかった。

地震前はマーズをよく知らなかった為に拒絶した人々も居た。

避難所でテレビから流れてくる音楽を聴き、語りかける言葉を聞いてマーズを知った者達は、外に出てマーズの活動を見て、騒ぎ立てる者達の言葉は間違っているとファンになってくれたのだった。


結果、地震前にマーズが回りきれなかった場所や新たにファンになってくれた人々の家の再建が早くなった。

それが怒りの火に油を注ぐと分かっていても、負のスパイラルに絡め取られていると感じても、要再建場所が多い為に立ち止まれはしなかった。



「お父さんなんて知らない! お母さん行こっ!」

「そうね。こんな分からず屋だったなんて知らなかったわ。さようなら」

そういう家族の分裂も多く発生していた。


復興が進んでも避難所に残っている人々の多くがマーズに反発している者と その家族で、避難所を運営しているボランティア達はマーズファンなので、ここでも対立が生じた。

マーズファンな家族に見捨てられた形の反発派ばかりになると、ボランティア達も居辛いからとファンの多い避難所に移動してしまい、環境は劣悪化していった。


支援物資はマーズからなので、配達しているボランティアはファンとして運びたくはない。

それでもマーズの『分け隔てなく』の言葉を守って届けるが、睨まれるので避難所の玄関前に積み上げて逃げるように去らなければならなかった。


これもまた互いの怒りの火に油を注いでいるのだが、如何ともし難い状況だった。



―・―*―・―



【人世が……しかも邦和が、このような有り様だったとは……】

しかも たった数日でと、瑠璃が驚きを溢した。


【うん。

 俺は記憶じゃなくて拾知で把握したけど、これも超越者の策略だと思うよ。

 超越者は地星を滅ぼしたいんだよ。

 なのに何度も耐えて、乗り越えてしまう。

 崩壊させても人世を作ってしまう。

 だから先に邪魔者を消して、それからリトライしようと考えたんじゃないかな?】


【それで青生と彩桜を?

 次はマーズ全てなのか?】


【そうみたいだね。

 それとは別に、明日、地星が生き残り続けてきた きっかけが起こると拾知が伝えてくれたんだよね。

 それも超越者は阻止したいんだよ。

 事実――真の歴史をねじ曲げてでもね】


【その鍵が青生と彩桜の記憶なのか?】


【存在そのもの、かもしれないけどね。

 だから起こる時には隠れておくよ。

 瑠璃は予定通りに動いてね】


【共に――いや、それが最善なのだな?】


【一緒に行動は……その後でね。

 起これば ずっと一緒だからね】


【解った。

 この演奏……届いているようだな】


【人世の楽器に神楽器を重ねているからね。

 神世まで届いている筈だよ】


【それも拾知か? 便利なものだな】ふふ♪


【拾知したから紅火に確かめたんだよ。

 家の楽器は全て重ねたそうだよ】


【神よりも神だな】


【そうだよね♪】



―◦―



【ねぇねぇ紅火兄~♪】


【む? 楽器に不備か?】


【じゃにゃくてぇ~♪

 古代楽器も神楽器化してもらいたいの~♪】


【ふむ。人数分、種類も増やして揃えておく】


【古代楽器、人の本能に響く思うの♪

 だから次のジャック、古代楽器したいの~♪】


【ならば今夜中に作る】


【ありがと~♪ ん? あ♪

 集縮壺さんの中にも楽器あるみたい~♪

 紅火兄ソレも~♪】


【ふむ。任せろ】


【楽しみ~♪】るんるんる~ん♪



 彩桜の陽の気が音色を明るくしている。

今日は穏やかに、と演奏していた兄達だったが、この陽の気こそが必要なのだろうと後押しし、拡げようと奏でていた。



【み~んな大好きなの~♪ 仲良くなの~♪】







どうやら仕組んだのは超越者で、地星の青身神達を一網打尽に消してしまおうと考えているようです。

青生と彩桜を狙ったけど失敗。

それならと邦和を不穏だらけにしてマーズ丸ごと戦意喪失させようと企んでいるのでしょうか?


こうなったら超越者に妨害されようが、明日の何かを運命通りに起こさせるしかないと決意した青生と彩桜なのでした。



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