彩桜の思い
「もう会議なんか終わってるよなぁ……」
もう何度目かのオニキスの呟きだった。
「行ってみたらど~だ?」
ボヤキは聞き飽きた状態のスヴァット。
「いいんですか? 黒瑯はまだまだ来ませんよ?」
「神は食わなきゃ死ぬなんてねぇからな♪
けど、もう一度だけ言うぞ。
見つけてソッコー怒鳴るなよ?」
「はい、ソレだけは。
着火しないよーに気をつけます」
「そんじゃあ後はオレに任せろ♪」
「ありがとうございます!」
先ずは王都に行き、上空から神王殿の様子を窺った。
続いてグルグルと周囲を確かめていき、避難所に至る。
あ、避難所の屋台トコで並んでるの
マディアとグレイさんと……ショウと力丸!?
ま、ナンにせよ会議は終わってるよな。
で、ラピスリは? 王都じゃねぇのか?
副都は……兄弟だらけで共鳴だらけかよ。
そんなら大都……あ、ソラが居た。
大都の王都側にソラを見付けたので瞬移した。
――【お~いソラ。ラピスリ見てねぇか?】着地。
【リーロン兄さん♪
響が同じ班で、ルサンティーナ様とゴルシャイン様が一緒だと思います】
話しつつ神眼で探している。
【あれ? 気を消してますね。
今ピュアリラ様だって騒ぎになるからでしょうか?】
【消してやがるのか。場所は?】
大都も共鳴だらけなので、それを頼りには出来なかった。
それどころか邪魔で、自慢の神眼も役に立たなかった。
【あ、はい】握手。
【ありがとな。けど、気を消してるならイキナリ行ったら逃げるかなぁ……】
【はい? 逃げるって、喧嘩でもしたんです?】
【そんなんじゃねぇけどな。
ナンでか皆を避けてるんだよ。
青生と彩桜の状態すら知らねぇんだ】
【え……それじゃあ伝達ユーレイを使いますか?
人数が一気に増えて、班も増えたから初心者ユーレイ用に そういう役割も作るしかなかったんです。
ちょうど飛んで来ましたし】手招き。
仕事だと嬉しそうに飛んで来た。
「響の班?」
「はい♪ 弟子にしてもらいました♪」
「この龍神様がラピスリ様を探してるんだ。
響を介して、行っていいのかを確かめてもらえる?」
「はい! ソラ班長♪」飛んで行った。
【瞬移も少しだけ。心話もまだまだだから、1時間くらい瞑想したら伝達の仕事をするんですよ】
【明日には龍も増えるからコキ使ってもらえるだろーよ♪】
【広間の龍神様達、もう元気になったんですか?】
【まずまず動けるよーになったよ♪】
【青生お兄さんと彩桜は?】
【今夜また来てくれるか?】
【はい。まだなんですね】
【アイツら無茶が過ぎるんだよなぁ】
【そうですか】【ソラ、いいって♪】
【ん。ありがと♪】
【そんじゃあ夜にな。ありがとなっ】瞬移。
――「やっと見つけた~」
「やはりオニキスか」
「気を消すなよなぁ」
「消しているのではなく再建に集中していただけだ」
「アミュラ様って婆様が呼んでるんだ。
マヌルの里に来てくれよ」ウソにはウソだ。
「ふむ。ならば私の代わりに再建を頼む」
「オレが!?」
「要領はゴルシャイン兄様に聞けばよい」術移。
「オレはヒマじゃねぇんだけどなぁ」ブツブツ。
オニキスはソッコー追い掛けたかったが、ゴルシャインには断っておかなければと探していると響が来た。
「なんか~、久しぶりですね♪」
「だな♪ やっとオレもコッチ来れたんだよ♪」
話し掛けてもらえたのは素直に嬉しい。
「そうなんですね♪
あ……レストランは?
黒瑯さんも居ないんですよね?」
「人世も復興中だからな、レストランとしては休業だが炊き出しはやってる。
少しずつ家も建ってってるからな。
で、オレ不在でも他のスタッフが居るからな♪
ユーレイ達もオレもシフト組んでやってるぞ♪」
「輝竜さん達はキリュウ夫妻の所に居るってコトに?」
「だよ。オーストリアだっけか?
そのまま滞在中ってコトにしてるよ。
神世に居るなんて言えねぇからな♪」
「ですよね~」
「オニキス、マヌルの里での手伝いは終わったのか? 他の兄弟は?」
「あっゴルシャイン兄様っ!?」
「何を驚いている?」
「サボってるんじゃねぇし!」
「そうかサボっていたのか」「違ぇし!」
「で、マヌルの里は?」
「兄弟捜しやらは だいたい終わりました。
回復した兄弟が見つけて、どんどん水晶から出してもらってます。
街やらの結界から出してもらった兄弟も半数くらいは回復したからオレ達の滋養食なんですよ♪
エメルドとユーリィは まだ治癒してました。
たぶん明日ならコッチに来れると思います」
「そうか」「そういうのも してたんですね」
「四獣神の子は即戦力だからと、水晶からの解放や解呪、人世魂の分離を急いで頂いていたのだ」
「じゃあ狐儀様とかは? 人世は人だけで?」
「神力持ちのユーレイを大勢 借りている以上、神も手分けせねばならぬ。
結界に封じられていたのは私の兄弟ばかり。
狐や猫達が人世で神マーズとして復興しているそうだ」
「狐儀と理俱も行ったり来たりだ♪」
「神世はユーレイも神様も増えたし♪
人世は神マーズ♪
これから どんどん進みますね♪」
「だなっ♪」「そう願っている」
「あ、ゴルシャイン兄様、ちょっと連絡あったんですよ」
引っ張って離れた。
【連絡とは?】
【ラピスリ来てたのは気づいてましたよね?】
【オニキスの同代だったな。
様子がおかしい件か?】
【はい。だからマヌルの里に行かせたんで追い掛けたいんです】
【行けばいい。此方は任せろ】
【はい♪】連続瞬移!
――マヌルの里、ラピスリの近く。
あ、マジでアミュラ様に捕まってる。
ナンでザブダクルが居るんだよ。
で、ナンか揉めてる?
気を消してラピスリの背後から近寄る。
うわわヤバ。怒らせてるのかよ。
伝わるピリピリに限界だと留まった。
と同時にラピスリの神力が一気に高まり、
「青生と暮らしたいのです!
アミュラ様に復輝降臨!!」
叫んで術移した。
オニキスは昂っているラピスリの気へと瞬移した。
――「ヤメロ!」
悲しみやら怒りやらで感情グチャグチャのまま結界を成そうとしていたラピスリを突き飛ばした。
「乱暴してスマン! けど結界はヤメてくれ」
支えて起こす。
「その結界の強さ、自覚してるのか?
闇を込めてたのはザブダグへの罠か?
わざとなのか?」
「闇、だと?」
「無自覚かよ。けど……その結果は見るべきだ」
ドラグーナの部屋へと瞬移した。
――兄弟5人が向く。
俯いている瑠璃の顔は見えないが、察して離れようとした。
「金錦兄 白久兄、すまねぇ。
紅火 藤慈、悪ぃな。
黒瑯、皆を厨房にしてる部屋に頼む。
食って休むべきだからな」
「おう」
その返事だけで兄弟を連れて部屋を出た。
「顔上げて水槽の中を見ろよ。
てか、もう分かってるんだろ?
結婚の絆は閉じたり出来ねぇからな」
顔は上げきっていなかったが見えたらしく涙が落ちた。
「どうにか消滅は免れた。けどギリギリだ。
彩桜は瑠璃に伝えたい言葉を言い続けてる。
けど、いつもの寝言じゃねぇからな。
眠ってるんじゃなく、意識が切れてるからこそ言い続けてるんだ。
行って聞けよ」
「何故……」
「オレは青生と話してたから彩桜を見てなかったんだ。
だから想像だが、彩桜は瑠璃に伝えないとと廊下から必死で叫んでたんだろーな。
けど伝わらない。聞こえてねぇと思って結界の中に踏み込んだら、闇と闇が引き寄せ合って逃げられなくなったんだろーよ。
助けも求められずに、神力を吸われちまって、青生も連動して気絶した。
それでオレと黒瑯が気づいて彩桜を探したんだ。
アミュラ様が来てくれなかったら助け出せなかった。
結婚の絆があるから瑠璃は直接的には青生を滅するなんか出来ねぇ。
けど彩桜が消滅したら道連れだろーよ」
「……青生……彩桜……」
「だから行って聞けよな。
それと、あの結界は二度とするな。
仲間内禁忌に決定だからな」
頷く。
「ラピスリなら助けられるだろ?
てかラピスリにしか無理だろ。
だからオレは廊下から領域供与するからな」
また頷いたので、オニキスは手を離して廊下に出た。
「必ず助けてくれ」
扉を閉めた。
水槽に近付くのも、顔を上げるのすらも怖かった。
兄弟が離れ、オニキスが話して、更に数分。
治癒を込めた聖水に浸かっていても、昇華や供与の後押しの無い状態で時が過ぎている。
誰の神眼視線も感じない。
それは、必ず助けてくれると信頼されているからこそだと理解は出来ている。
しかし動けなかった。
(……瑠璃……)
空耳かと思える程に弱々しい声は、結婚の絆からのものだった。
「青生? ……青生っ! 消えないで!!」
駆け寄り、二人を掬い出して、取り込む。
そして自身の内を治癒で満たした。
〖ねぇ……瑠璃姉てばぁ。俺ね、思うんだ。
ダグさんとザブさん、許せなくていいの。
だってソレ、瑠璃姉の優しさだもん。
優しいから湧いちゃう感情だもん。
だから仕方ない思うの。
ドラグーナ様だって青生兄だって理解して支えてくれるから拒絶しないでよ。
そんなので魔に堕ちたりしないから。
人として当然の感情だから。
ラピスリ様じゃなくて瑠璃姉の感情なんだから。
この前、月に行ったの、大急ぎだったの。
闇禍 来てたから道も塞いだの。
瑠璃姉もランも呼べなかったのゴメンナサイ。
助けた女神様達、消滅寸前なってたから治癒しに通ってたの。
今も治癒が必要なの。此処の広間。
瑠璃姉の強い治癒、みんな待ってるの。
いっぱい共鳴してない?
瑠璃姉の兄弟神様達、900くらい集まってるよ。
人世からも月からも来てるんだよ。
結界守りしてた龍神様達、マディア様を支えたの。
だから地下に街まんま造れたの。
龍神様達 縛ってた結界、建物のダメージまんま受けちゃうから龍神様達ボロボロなの。
だから助けてよ。
瑠璃姉ダメだったら、ヒキコモリしてていいからラピスラズリ様で出て来てよ。
シアンスタ様達もゴルシャイン様達も心配してるんだよ。
あとね、お社に瑠璃姉が放置してた欠片の女神様も会いたがってるの。
瑠璃姉はウラに引っ込んでてよ。
ねぇ、瑠璃姉てばぁ。
ラピスラズリ様、出てきてください!
瑠璃姉! ラピスラズリ様が必要なの!
ウラにヒキコモリして出てきて!!〗
「彩桜……」
ようやく彩桜の言葉が瑠璃に届きました。




