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ヒトデになった彩桜



 マヌルの里の広間にはドラグーナの子供達が ほぼ揃っていた。

『ほぼ』なのは、まだ神王殿から回収した封珠の中にも居るだろうし、人世で無自覚堕神として生きているだろうからだ。


暴走魔や神力射からの禍を受けた者も、命の欠片を成し・込め続けていた者も、封珠から出してもらえたばかりの者も皆 まだまだ万全ではなかったが、それでも、結界守(けっかいも)りを続けさせられ、神世の災厄を最小限に留めた兄弟姉妹(きょうだい)全神力(ぜんりょく)で治癒を当てていた。


治癒を当てている龍神達は部屋の宙に浮いている。

床は倍を軽く超える兄弟姉妹で埋め尽くされているからだ。


藤慈を背に乗せている狐儀は、力なく横たわる龍神達のすぐ上を飛んでいる。

術治癒をしつつ、目覚めた者に爽龍丸を配っているのだった。



 日付けが変わると、彩桜は誰にも告げずに そっと広間から離れた。

瞬移等も気付かれそうだと考えて、ラピスリの部屋へと飛んで向かう。


【待ちな】

アミュラが立ち塞がった。

【結界を強化してるから近づくんじゃないよ】


【知ってる。でも話さなきゃなの。

 今日なるの待ってたの。

 瑠璃姉、嫉妬とかじゃなくて心配かけたくなくて青生兄に会えないの。

 そんなの違うて言わなきゃなの】


【何を抱えてるんだい、あの()は?】


【話したら通してね?】


【……ま、いいだろう。

 モルガナは立派な大神だからねぇ】


【ソッチで呼ばないでぇ。

 とか言ってる場合じゃないよね。


 人としての瑠璃姉、親友さん2人なの。

 澪さんの旦那さんが飛翔さん。

 飛翔さん、悪ダグさんに狙われたランを護る為に身代わりなって病死したの。

 澪さん、とっても泣いたの。

 瑠璃姉、防げなかったて悔やんでたの。

 でもユーレイなって復活できたから、それは解決なの。

 でもダグさんに会いたくないの。許せてないの。


 も1人、小夜子さん。

 悪ザブさんが起こしたガス爆発事故で亡くなったの。

 小夜子さん、その前に癌なってたの。

 病院行くの怖くて末期なったの。

 瑠璃姉、人に使っちゃダメて悩んだけど治癒したの。

 それなのに事故で……神様としては改心したザブさん許さないといけないけど、どぉしても許せないの。

 心が濁ってる思ってるから、今ピュアリラとしても不適だと思い込んでて、囲まれるのも辛いし、ドラグーナ様に会うのも辛いの。

 青生兄に会うの、もっと辛いの。怖いの。

 魔に堕ちてってるて自分で自分を追い詰めてるの。

 だから、違うて言わなきゃなの】


【そうかい。人の心を知ったんだねぇ】


【月に呼んでもらえなかったのも、青生兄が女神様トコ通ってるのも、自分が魔に近づいてるからて思い込んでるの。

 見捨てられても仕方ないて。

 もぉいいでしょ? 通してください】


【気をつけるんだよ】


【うん。ありがとアミュラ様】


アミュラが広間に戻ったのを確かめてから彩桜は進み始めた。




 そして扉の前、結界の領域ギリギリに立つ。

【瑠璃姉、起きてるんでしょ?】


形ばかりの間を置いたが、待っても返事は無いだろうと続けた。


【聞いててくれるだけでいいから。

 ダグさんとザブさん、許せなくていいと思う。

 改心しても悔やんでも元に戻らないコトあるもん。

 だから仕方ないと思うの。

 ドラグーナ様だって青生兄だって理解して支えてくれるから結界なんか解いてよ。お願いだから。

 そんなので魔に堕ちたりしないから。

 当然の感情だから。


 この前、月に行ったの、大急ぎだったの。

 闇禍 来てたから道も塞いだの。

 瑠璃姉もランも呼べなかったのゴメンナサイ。

 助けた女神様達、消滅寸前なってたから治癒しに通ってたの。


 今も治癒が必要なの。此処の広間。

 瑠璃姉の強い治癒、みんな待ってるの。

 いっぱい共鳴してない?

 瑠璃姉の兄弟神様達、900くらい集まってるよ。

 人世からも月からも来てるの。

 ねぇ、瑠璃姉てば開けてよ!】


それでも無反応。静かなものだった。


【じゃあ瑠璃姉はヒキコモリしてていいからラピスラズリ様だけ出してよ。

 シアンスタ様達もゴルシャイン様達も心配してるから。

 それに瑠璃姉が放置してた欠片の女神様も会いたがってるから。

 瑠璃姉はウラに引っ込んでてよ。

 ラピスラズリ様、出てきてください!】


また少し待ってみたが物音すらも聞こえなかった。


 もしかして相殺消音してる?

 完全に拒絶?

 だったら――


もう最後の手段だと扉に両掌を当てた。

【瑠璃姉! ラピスラズリ様が必要なの!

 ウラにヒキコモリして出てきて!!】

苦痛に耐えながら、少しでも届けと大声を張った。


もう一度、最初からを叫んだが、反応は全くだった。

これ以上は青生にも影響してしまうと、手を離そうとしたが離れなくなっていた。


 え? まさかコレって闇闇吸着しちゃった?

 ええっ!? もっと強くなっちゃった!?


彩桜が離れようとした事に反応したのか、それとも意識を向けた事に反応したのかは不明だが、グンッと引き寄せられた。

離れようと足掻いたが、術移すらも出来ずに全身が結界壁の中に入ってしまった。


【瑠璃姉てば! どしてこんな結界して――】


急激に神力を吸い取られて気絶してしまった。



―◦―



【【青生!?】】


神用の滋養食が必要だからと狐儀が連れて来た黒瑯とオニキスは、話していた青生が唐突に気絶したので、慌てて落下を止めた。


【コレって、まさか! 彩桜!!】

【何処だ!? 返事しろ彩桜!!】


ゴルシャインが飛んで来た。

【ラピスラズリを連れて来ると言っていた】


【【ありがとうございます!】】


藤慈を乗せた狐儀も来た。

【ラピスリ様のお部屋でしたら此方です】

黒瑯を乗せているオニキスを連れて術移。



――扉前。【青生!? おい青生!!】

オニキスの背で黒瑯が支えていた青生が球魂化した。


【藤慈君、治癒を!】【はい!】オニキスの背に乗る。

【黒瑯様とオニキスは彩桜様を探してください!】


【神眼なら任――ん? 扉にヒトデ?【まさか!】】

剥がそうと同時に手を伸ばす。

【【イッテェ!!】】


【何をしているのです?】イラッ。


【【噛みつかれたんだよ!!】】神眼で凝視!×2!


【その桜色のヒトデが彩桜様なのでしょう?】


【イカツイ結界だ!】【取れねぇんだよ!】


【結界でしたら紅火様を連れて参ります!

 青生様をお願い致します!】術移!



 狐儀は紅火と理俱、梅華も連れて戻った。

【メイ、双子でしたら可能かもしれません。

 まずは結界に軽く触れてみてください】


話している間に紅火と理俱は結界を調べ、彩桜の周りだけでも解除しようと解還の神力を注いだ。


手を伸ばした梅華が大丈夫だと頷き、彩桜(ヒトデ)に触れる。

片手では無理だと両手で剥がしに掛かったが、

【扉に埋もれているようです】

爪の先すらも入らない扉を恨めしそうに掻いた。


【なんだい、この騒ぎは?

 ああもう、また無茶をしたね。

 ラピスリが無意識に込めちまってる闇に引き寄せられたんだよ。

 だから光だ。

 メイファ、ガツンと込めてやりな。

 双子なお前さんにしか出来ないからねぇ。

 結界を緩めてるアンタらは維持!

 他は皆で後押しだよ!】


【【【【【【【はい!】】】】】】】



 彩桜へと強い光を込めて暫し。

【ドラグーナは来るんじゃないよ!

 闇障持ちなんだから彩桜と同じになっちまう!

 他の闇持ちも離しておくれ!】


【闇持ち? あの二神ですか】

その廊下の両端、壁の角から様子を窺っている人神達を見、先ずはダグラナタンへと飛んだ。


話して部屋に向かわせると、今度は反対側のザブダクルとも話して部屋に戻した。


そしてラピスリの部屋の廊下とは反対側、外に出て離れた位置から彩桜が埋もれている扉へと治癒光矢を放ち、小さく爆発させた。


【サッスガ父様♪ 取れたよ♪】


オニキスの嬉しそうな声で廊下に戻った。

【藤慈、また水槽を頼めるかな?】【はいっ!】

狐儀と理俱の方を向き、

【他の兄弟も集めてもらえる?】【【はい!】】

そして

【メイファありがとう。痛かったよね】

優しい治癒で梅華の両手を包んだ。


【お父様ありがとうございます。

 お姉様は どうしてこんなことを?】


【思い込みと誤解と、少しだけ拗ねているのかな?】


【お姉様が?】


【抱え込み易い娘なんだよね】


【そうですか……】【で、頑固娘は?】


【瞑想していましたよ。

 この騒ぎは全く知りません】


【彩桜の命懸けは無駄だったってのかい?

 どうするかねぇ……ま、朝になってからだね】


【そうですね】



―◦―



 ドラグーナの部屋に集まった輝竜兄弟とリーロンは、各々の得意神力を駆使して青生と彩桜を保とうと必死になっていた。


【リーロン兄さん? 何かあったんですか?】


【サーロンも治癒を頼む!

 オレの気に来てくれ!】【はい!】「え?」


【近くに居たんだな?】


【はい。イーラスタ様に乗せていただいて】


【そっか。広間も見たんだな?】


【はい。術治癒しながら丸薬を配っていました。

 それで、水槽の中に彩桜を感じるんですけど……】


【青い光球が青生、桜色のヒトデが彩桜だ。

 神世だからこそな神力枯渇状態の姿だ。

 チョイと無茶した結果なだけだからな。

 治癒してりゃあ元に戻るよ】


【こういう時でもヒトデなんですね】苦笑。


【寝言もバリバリだ♪】


【安心しました♪ あ……紗ちゃん?】広間に。


【彩桜を探してるんだろ~な。

 オレも滋養食を作らねぇとだから出てって相手するよ。

 神としちゃあ姪っ子だからな♪

 此処は任せたぞ】【はい!】

兄としてポフッとすると笑顔で瞬移した。



――広間から廊下に出たランマーヤを捕まえた。

【彩桜は疲れて寝ちまったよ。

 何か頼まれてたんだろ? ソッチは?】


【お母様が目覚めたから父様と話したいかな~って此方に来てみたんです。

 でも治癒する者も増えたからって……】


【そんなら飛翔さんトコ行ってやれよ。

 ショウもソッチなんだろ?】


【はい♪ じゃあサクラをお願いしますね♪

 あ……ラピスリ叔母様は?】


【ヒキコモリ瞑想中だよ。困ったもんだ。

 明日も頑固オバサンを頼む】手を合わせて拝む!


【父様から明日の会議は代わりに出てほしいって言付かってるんですけど~。

 王都時間の早朝に待ち伏せしますね♪】


【アーマル兄様が何か――あ!

 さっき『母様』とか言ったよなっ】


【はい♪ サクラと青生先生が見つけて治癒してくれてたんです♪

 神力枯渇で球魂になってたそうですけど、元気になりました♪】


【もしかして社で治癒?】


【はい♪】


【そっか。治癒しなきゃなんねぇ女神様ってミュゲさんだったのかぁ】


【はい? あ~、そうですね♪

 サクラと青生先生が通ってた理由ですよね♪】


【だよ。ラピスリのヤツ、ソレを誤解してヒキコモリかよ。ったく~】


【困った叔母様ですよね~。

 あ、私、パパの所に行きますねっ】術移♪



オニキスもランマーヤも、上手く誤魔化せたと思っている。







神力枯渇状態になってしまった彩桜と青生。

危うく命を落とすところでした。

そんな恐ろしい結界を成した瑠璃(ラピスリ)は全く知らないまま瞑想中です。


日付けは変わっても朝を待つべきだったんでしょうか。




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