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神世にも戸籍が必要だ



 彩桜達が電波ジャックを終えて帰宅すると、外は すっかり暗くなっていた。


【あれれ? 青生兄?】

【うん。最善行動だから気にしないでね】

青生は家ではなく動物病院に直行していた。



「彩桜、これからは?

 何もなければ一緒に行きませんか?」


「藤慈兄どこ行くの? 晩ご飯は?」


「キツネの里に半時間ほど」「行く!」

「では参りましょう」

慎介が二人を連れて術移した。



――キツネの里。

魂材神フレブラン持ちだった人達は起き上がれるようになっていた。

しかし長く仮死状態で放置されていた為に、手足などの末端を復元しなければならない状態で、紅火と理俱が作った補助具を使ってのリハビリに励んでいた。


【まだ体力的にも……だから人用の弱々治癒だよねぇ?】


【そうですね。少しずつです】

【ですが回復すると信じてくださっています】


 強治癒を優し~くしないとだから

 術治癒だと難しいんだね。

 ホントは青生兄に頼みたかったんだよね。


【ん。俺も頑張る。

 あ、そぉだ。狐儀師匠、噛みつき玉は?

 滅しちゃった?】


【いいえ。封じておりますよ】


【後で調べたいの】


【解りました】



―・―*―・―



 その頃、死司最高司の館ではマディア(エーデラーク)が執務をしていた。


 やってる事は同じでも僕が最高司なんだよね。

 もうナターダグラルは居ないんだよね。

 そもそも架空の存在なんだからいいんだけど。

 ……でも――


〈マディア様、今よろしいでしょうか?〉


〈ダグさん? うん。いいよ♪〉


〈エーデリリィ様は?〉


〈ユーチャ姉様トコ♪〉


〈では――〉

悩んでいる様子のダグラナタンが現れた。


マディアは執務の手を止めて首を傾げた。

「エーデが居たらダメ?」


「話すのを止められてしまいますので」


「ふぅん」談話卓へ。「座って?」


「はい」


「それで?」


「マディア様は封珠の中での事を覚えていらっしゃいますか?」


「ぜ~んぜん。

 封じるとは言われてたから封じられたんだろ~な~って感じ」


「やはり……」


「何か……あったんだね?」


「ティングレイス様も同じなのですが、新しい側の記憶を消された上に禁忌術から生じた呪を込められておりました。

 命と共に記憶を蝕んでいく退行の呪を。

 全てが分かりましたのは、封珠から出た後なのですが。


 呪の為に、時折、意識が戻られましても何もお分かりでない ご様子で、また意識が遠退いてしまうのです。

 譫言(うわごと)を含めての言動から、過去へ過去へと変化していると気づかれましたのは、エーデリリィ様でした。

 解呪なさろうと必死でしたが、ザブダクルは純粋な人神でなければ手出しの出来ない術を常に使いますので、呪を見つけ出す事すら出来ませんでした。


 ですが必死の対処が功を奏して退行に抗い、成長を促す事で速度だけは緩められましたので、その状態を保ちつつ脱出を計ったのです。

 封珠から出さえすれば解呪も叶うだろうと。

 神力が吸い取られてしまう封珠の中で静かな闘いが続きました。


 進行はティングレイス様の方が速かったのですが、お歳の差でマディア様の方が先に消滅の危機を迎えてしまったのです。

 マディア様が命の欠片に戻ってしまう寸前に、エーデリリィ様の神力が爆発的に高まり、封珠を破ったのです」


「だから身体に戻してもらった時、赤ちゃんだったんだね……」


「はい」


「エーデに頭上がらないよぉ。

 ずっと歳下だって思われないよ~に頑張って夫してたのになぁ~」

卓に突っ伏した。


その肩が震える。


「マディア様……」


「ん……ダグさん……話して、くれて……ありがと……」


「元を辿れば私が悪い訳で……申し訳ございません」


「そんなこと……ダグさんも、頑張って、くれたんだよね? ありがと。

 僕……いっぱい、恩返し、しなきゃ。

 償いも、いっぱい……頑張るよ……」


「神は何方も亡くなられておりませんが?

 マディア様が護られたのでしょう?」


「えっ?」


ダグラナタンはマディアの手に手を重ねた。

「全力で抗っておられましたよ」



―・―・―*―・―*―・―・―



〈ヤダヤダヤダヤダヤダッ!!

 ナンでっ!? だれなのっ!?

 オジサン大っキライ!!

 ボクきかないもんねっ!! ヤダッ!!

 ソレ丸くしないもんっ!!

 フタにしちゃうもんっ!!

 ボクのチカラだもんっ!!

 ヤダッたらヤダーーッ!!

 ソッチ行かないのっ!!

 おしえないもんっ!! イヤなのっ!!

 キライキライ大っキライ!!〉



―・―・―*―・―*―・―・―



「ずっと、こうでしたのです」


「騒がしくてゴメンね~」


「それがパタリと止んでしまい……」


「生まれる前になっちゃったってコト?

 僕でなくなる寸前?」


「……はい」


「エーデ泣かせちゃった?」


「はい」


「それで爆発?」


「はい。激しく美しい爆発でした。

 その力が膨張していた頃、ザブダクルはマヌルの里を襲撃していたそうです」


「そっか。身体を生かせる為に少しだけ繋がってたんだね。

 だから それまでは僕が行かなかったんだね……」


「そうではないかと」


「命令に従う理由すら記憶が消えてるんだから仕方ないよね」あはっ。


「そうですね」


「立ち直ろ。頑張らなきゃねっ。

 神世はいいとしても、人世は償わないと」


「交通事故とガス爆発事故で亡くなられました方の多くは堕神か欠片持ちでしたそうで、堕神は神に戻られたそうです。

 欠片持ちの皆様からはアミュラ様とカウベルル様が欠片を分離なさいましたそうです。

 望まれた人には神力の写しを与えられましたそうで、修行を兼ねて明日から救出に加わらせますそうです。


 あの……救世主のカケルも交通事故で――」

「ザブさん慰めてたけど知ってるの!?」


「さぁ……そこまでは……」


「ん~~、ガス爆発の方は?」


「欠片持ちですらなかった人が含まれておりましたそうですが……」


「やっぱりね……頑張らなきゃ」


「どのように?」


「本人に確かめて最善に? かな?

 グレイさんに どこまで許してもらえるかにも依るけどね。

 あの時の目的はウンディだったんだけど浄化域送りなんかになってないよね?」


「ウンディ様でしたら――」窓の外に銅鱗?

『お~いマディア~♪』コンココンコンッ♪


「え?」窓の外にウンディ♪「入って♪」


『いや、それがだな。

 抜けられないんだよなぁ』ガシガシ。


「ちょっと待って♪」あははっ♪


行って掴んで戻った。

「無事で良かった~♪」


「ガス爆発で死んだけどなっ♪」


「ゴメンね~」


「だが俺は不死身だ♪

 人世でも戸籍を復活させてもらったぞ♪」


「戸籍?」


「マジな話、神世も作るべきだ。

 どこに どんだけ住んでたか分からんつって救助班が苦労してっからなっ」


「もっと教えて!」


「アーマル呼ぶから待てっ」焦っ。

【アーマル! 来てくれ!】


「うん♪ ダグさんも手伝ってね♪」


「え? ・・・私!?」


「おうよ♪ 頼むぞ♪」「うんうん♪」


「えええっ!?」



―・―*―・―



 彩桜は魔女オーガンディオーネの『噛みつき玉』と睨めっこしていた。

当然ながら離れて、だ。

噛みつき玉は飛んで襲わないように狐儀が掴んで、更に動きを封じている。


【彩桜様、あまり近寄られては――】


【うん。ありがと狐儀師匠。

 やっぱり前トキの拾知、ダメダメだった。

 コレ、初代 今ピュアリラ様達が魔女を封じた術の悪用。

 闇禍に教えてもらって凶悪アレンジなの。

 対象は人神の男神様。

 男神様限定しないと魔女もガブリされちゃうから。

 フレブラン様の他にも能力とか知識とかに目を付けて浄魂刑した男神様も人世で探してたみたい】


【他、とは? いったい何方を?】


【もちょっと…………ええっ!? ブルー様とチェリー様!?

 会ったの!? でも神力て獣神様なのに!?

 ……獣神様じゃなくて超越神様?

 なんか勝手なコト言ってるぅ】


【お待ちください彩桜様。

 ブルー様やチェリー様を浄魂刑に処したのですか?

 有り得ないでしょう?】


【んとねぇ、超越神様は取り憑くんだって~。

 闇禍も超越神様、ブルー様達も超越神様だから取り憑くて言ってるぅ。

 勝手に決めつけてるのぉ。

 だからソレぽい人神様、処刑したみたい~】


【あまりにあまりな……身勝手が過ぎます】


【だよねぇ。

 うわわ……そっか。

 アフェアン様とサマルータ様もブルー様とチェリー様が憑いてるて言ってるぅ。

 美武神の大神様で術に長けてるから、蒼月煌して女神して取り込むんだって~】


【つまりフレブラン様の魂片も女神化を?】


【したみたい~】身震いした。


【あの時……青生様と彩桜様を女化したのは、取り込む為だったのですね……】


【怖ぁいのぉ~】ぐすん。


【明らかになったとは言え……】


【元に戻れて良かったのぉ~】


【そうですね】


確かに恐怖は覚えるが、魔女は終わったとの声を確かに聞いたし、この事も瑠璃を説得する材料になると思い直して立ち上がった彩桜だった。


【それで、浄魂された方々は?】


【魂材様なってる思う~。

 これから探さなきゃね。

 後始末まだまだ続くみたい~】


【そうですか。

 大神様を包んでいるでしょうから、きっと見つかりますよ】


【うん! まだまだ頑張るも~ん!

 俺、戦う忍者だも~ん!】


【そうですね】


己を鼓舞する彩桜を狐儀は励ましを両手に込めて抱き締めた。







時々マトモで活躍するウンディ利幸です。


封珠の中での事を知ったマディア。

噛みつき玉に残っていた魔女の考えを知った彩桜。

どちらも、そこから『これから』を考えています。



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