奔走する彩桜
ラピスリがルサンティーナとアミュラを連れて神王殿の響へと術移すると、ドラグーナも居た。
合ってしまった目を逸らしたラピスリはルサンティーナとアミュラを座らせると、気まずさから姿を消して部屋から出ようとした。
【待ちな。アタシも居なくていい筈だ】
そう言うとアミュラも姿を消し、ラピスリを捕まえて部屋の隅に陣取った。
ラピスリもアミュラも ただ姿を消したのではなかったので、ドラグーナを除いて他の者には居場所すらも掴めなくなってしまった。
【それじゃあ見届けようかねぇ。
で、父娘喧嘩かい?】
【そうでは……ただ、父が見届けるのならば私は不要と判断したまでです】
【獣神王だったかねぇ。
そんなつもりは全く無さそうだけどねぇ。
で、今は夫の姿どころか気配すらも見せてくれないとでも怒っているのかい?】
【随分と離れられるのは知っております。
青生でしたら下空とマヌルの里を往復して――あ……】
【終わったようだね。
何やら持って人世に降りたね】
【そうですね。急ぎなのでしょう】
【その大急ぎで直行した先が女神の所。
誰なのか気になっているんだろ?】
【依頼主、それだけです!】
【それだけ、ねぇ。
おや、マディアがザブを連れて来たよ。
まだまだ溝がありそうだけどねぇ。
それでも友達になったようだねぇ】
ハッとして観察し、
【マディア、無理をしていないか?】
声を掛けた。
【あ♪ ラピスリ姉様も入ってよ♪
無理ね……このくらいは仕方ないでしょ。
次の災厄を防ぐ為だよ♪
今度はエーデも居るから頑張れるよ♪】
【そうか】
【ほらほら、トントン拍子にザブが向こうの王になっちまったよ。いいのかい?】
【んっ……】【ダメなの?】【それは後で】【うん】
【それじゃあ部屋に戻るかねぇ】
「アタシは反対なんかしないよぉ。
古神達を出してもらえるんなら万々歳さね。
アタシも協力すると約束するよ。
婆ァは早く寝たいんだよ。
もう行っていいんだろ?」
アミュラは姿を見せた。
「では、お送り致します」
形ばかりの微笑みを浮かべたラピスリは、気持ちを落ち着けようと外へと瞬移した。
――王都上空。
「アミュラ様は結界の記憶をお持ちなのですね?」
「ああ。出してもらってすぐに受け取ったよ」
「では結界に」術移。
――カリーナ火山を囲むアミュラの結界。
その火山側でカイダクルとカーリザウラが瞑想していた。
【マヌルの里に保護すべきでは?】
【そうさねぇ……連れて行ってくれるかい?
共鳴でザブが気づくかもしれないからねぇ】
【それに近いうちに此方側も復興を始めるのでしょう?】
【それなら結界のアタシも保護しとくよ】
【お願い致します】
アミュラを残して、ラピスリは火山側へ。
〈カイ、カーリ。災厄は終わった。
復興の手伝いを頼む〉
〈〈はい!〉〉飛んで来た。
〈此方側も元に戻すが、先に向こう側を頼む〉
〈〈はい、イマピュアリラ様〉〉
〈結界のアミュラ様は、真アミュラ様がお持ちの保護珠の中だ。
引き続きご指導くださる〉
〈〈はい♪〉〉
―・―*―・―
人世では、社でピュアリラと話した青生と彩桜が帰宅し、夕食を食べ始めたところに紅火が来た。
〈青生、彩桜。また神世に行くのか?〉
〈下空のは朝からだよ?〉もぐもぐ♪
〈他に用がありそうだね〉
〈都や街にも避難所をと頼まれた〉
〈なら行こうね〉〈うんうん♪〉
〈術移の練習に付き合ってくれるだけでいい〉
〈理俱殿から貰った?〉〈俺、蛇さん貰った~♪〉
〈貰って馴染ませた。使いたい〉
〈うん、行こうね〉〈うんうん♪〉
―・―*―・―
マヌルの里に戻ったラピスリは、カイダクルとカーリザウラに部屋を貰い、神王殿での話を伝えた。
「でしたら復興が終わったら僕から継ぎます。
国もカリューではなくなるのですよね?」
「全土一国。新たな国名は公募となるようだ」
「カリュー最後の王として、新たな国の未来を子に託します」
「カーリ♪」後ろに現れてハグ♪
と同時にラピスリは消えていた。
「イマチェリー♪」
「あのね、俺、考えてるからね♪
ザブさんが気づくの待ちだけど、ちゃ~んと考えてるから待っててね♪
でねっ、カイさんは光を強化して宰相ねっ♪」
「よろしいのですか?」
「だ~ってシャルダクル様、赤ちゃんなんだもん。
だから三男が先なるんだも~ん♪
でも王様がいい?」
「いえいえっ! 荷が重すぎます!
立派と言われる補佐になりたいと思います」
「ソレ、ブルー様と同じ♪
ブルー様も三男なの。
それに性格的に王ダメで補佐したくてスーパー大臣なったの♪
カッコイイの~♪」
「スーパー大臣……私も目指します!」
「じゃあねぇ、ザブさん待ちだから先に強化ねっ♪
どっちも強化♪ 人神の光ねっ♪」
「「ありがとうございます!」」
―◦―
【青生、彩桜だけで行ったのだが?】
【そうだね。急ぎだったからね】
【青生も行くべきだ】
【でも多いよ?】
【俺だけで十分だ】
【手伝うよ。
……なんだか瑠璃に避けられているんだよね】
【尚更、行くべきなのでは?】
【復興が終わるまでは来るなって感じなんだよね。
だから神世に居るとだけは伝えているんだけどね】
【困ったものだな】
【だよね】
【青生が、だ】
【そうかもね】自嘲的苦笑。
―◦―
マディアとエーデリリィは本当に久々に帰宅した。
「やっぱり家がイチバンだね♪」
「帰って……いなかったのね?」
「今は幸せだから、もういいんだよ♪
エーデもお帰り♪」
「マディア!」
抱き締めると涙が溢れてしまったので顔を隠そうとマディアの胸に額を押し付けた。
「だから今は幸せだってば♪
僕は大丈夫だから泣かないで?
それにザブさんとも、ちゃんと友達になれてたでしょ?」
頷く。が、顔は上げられなかった。
「償うべき事は増えたけど、全部ザブさんと一緒に頑張るからね。
僕が前を向いてるんだから泣かないでよ。
あ♪ ザブさんの部屋に行く前に同代のオニキスに会ったんだ♪
チーズとチーズケーキのレシピを貰ったから焼いてあげる♪
ちょっと待ってて♪」
エーデリリィを座らせて台所に飛んで行った。
【来ちゃった♪】【今チェリー様!?】
【チーズケーキお手伝いする~んるん♪】
【チーズを見たのも初めてなので、お願いします】
【お・と・も・だ・ち♪】にっこにこ~♪
【だよね♪】
【だから彩桜って呼んでね♪】
【サクランボのサクラね♪】
【うんっ♪
あのね、俺達、真ブルー様に会ったの♪
いいコト教えてもらったの♪
だから次の災厄なんて怖くないの~♪
魂と記憶、落ち着いたら教えてあげる♪】
作る方は説明もせずにシャカシャカ混ぜ混ぜ♪
【僕の状態って……どうなってるの?】
【魂も身体も殆ど新品なの。
マイナス歳なって、ちっちゃ魂片しか残ってなかったし、身体も消える寸前なってたのぉ。
だからシッポも魂尾ってより幻尾みたくなってたのぉ】
【それで写しの記憶も不安定なんだね……】
【でも~、ちゃ~んとマディア様♪
ドラグーナ様とイーリスタ様の子♪
兄弟み~んなの欠片で生きたの♪
龍もいっぱい♪ 兎もいっぱい♪
だから兎なれるよ♪】
型に流し込んでトントン♪
【え?】
【なってみてみて~♪】オーブンへ♪
【えっと……こう?】淡い碧色の兎に。
【うんうん♪ 鳳凰も♪】道具を一気に浄化♪
【ええっと……なれたかなぁ?】
【うんうん♪ ちゃんと鳳凰だよ♪
キレイな青緑♪ 宝石みたい~♪】
【なんかまだ恥ずかしいから】人姿に。
【あれれ? キレイなのにぃ】
【恥ずかしいのもだけど不安定なんだよね】
【じゃあ明日はムリ? 兎さん】
【明日?】
【鳳凰vs兎の試合するの~♪】
【それで僕にも兎? でも……まだまだかなぁ】
【じゃあね~、マヌルの里で神眼中継、いい?】
【神眼なら得意だから大丈夫♪】
【ん♪ じゃあ里に早朝、迎えに来るからねっ♪】
【マヌルの里なら直接 行けるよ♪
それで、どんどん進めて、その箱は?】
【オーブン♪ プレゼントねっ♪
ちゃんと神世物質で作ってもらったの~♪
焼くの早いけど丁寧なの♪
温度調節も細かくて、自動でもイイ感じなるの~♪】
チーン♪
【焼けた音~♪ でっきた~♪】
アツアツなので掌握で運んで皿の上で型を消す。
【焼き立てプルプルも美味し~の~♪
エーデリリィ様と楽しんでねっ♪】
【さっき消した丸いのは?】
【型だけ瞬移させて外したの♪
浄化済み♪ また使ってね♪
ごゆっくり♪ じゃ~ね~♪】瞬移♪
【あっ、ありがと!】
【また明日ねっ♪】
【うん♪ また明日♪】「ねぇマディア」
「ん? 焼けたから紅茶も淹れるね♪」
「誰かと話していなかった?」
「うん♪ 友達が手伝ってくれたんだ♪
エーデと ごゆっくりって帰っちゃった。
次に現れたら紹介するよ♪」
「安心したわ。同代にも会えて、友達も居るなんて……良かった」
「うん。だから悪いばかりじゃなかったんだ♪
食べよう♪」
「そうね♪」
青生は青生で避けられているからと会いにも行けていません。
あんなに仲良しさんだったのに どうして?
代わりに彩桜が奔走しています。
本当に近づきたいのは瑠璃姉なんですけどね。




