『反乱軍』発見
神王殿での演奏会の最後に、王代理としてのサティアタクスが今回の件は死司最高司で第1伯爵であったナターダグラルが起こした反乱だと発表した。
最初に気付き、戦ったエーデラークは禁忌の術で捕らえられ、破壊が行われていた当時は封じられており、ナターダグラルが乗っていた禍龍は術で成したものであったと。
神王殿を己が城にしようと企て、神王ティングレイスの魂を抜き、封じた為に神王は意識を失い、臥せったのだと。
そうしておいて悪行を全てエーデラークに擦り付け、新たな国の王と成る企てであったと。
そして過去の玉座簒奪についても、ナターダグラルがティングレイスの姿で起こし、神王の姿をした操り人形を玉座に座らせていたのだとも付け加えた。
簒奪の後、サティアタクスは話せなくされた状態で、ティングレイスは神力を極限まで抜かれた状態で貴神殿の地下深くに監禁されていたが、意識を取り戻したティングレイスが神力を回復させた後、どうにか脱出して玉座の人形と入れ換わったのだと。
入れ換わりに気付いたナターダグラルは、腑抜け人形王を廃し、皆に推薦されて王と成る計画が破綻した為に反乱を起こし、最終的には神王ティングレイスとエーデラークに誅滅されたと筋書を作っていた。
―・―*―・―
この発表は神世の地下にも下空にも、人世の仮職域にも職神の連絡板にも流れていた。
死司神達は誰が呼び掛けたでもなく仮の死司域の社に集まり、話し合いを始めていた。
下空の職域で執務が出来るようにと片付けに行っていたルロザムールが死神爺様に連れられて死司社に行くと、上位死司神達に囲まれた。
「死司最高司を決めなければなりません!」
「ルロザムール様、エーデラーク様は?」
「エーデラーク様の他に誰が居るのです?」
「今は どちらにいらっしゃるのです?」
そんなこんな似たり寄ったりが口々だ。
「皆様お待ちください。
まずは最高司代理ルロザムール様のご意見からではありませんか?」
エィムがルロザムールを救出した。
それはそうだと上位死司神達も座った。
「私もエーデラーク様の他にはいらっしゃらないと思います。
今は戦いの疲れを癒しているのでしょう。
他にご意見が無ければ神王殿に確かめに行って参ります」
『ルロザムール様は?』という声も聞こえる。
エィムがルロザムールを見ると困り顔だったが良い案を思い付いたという顔になった。
「私はエーデラーク様の補佐をしたいので辞退させて頂きます。
では確かめて参りますので」
微笑み、エィムを連れて外に出た。
【術移しましょうか?】【お願いします】
――神王殿。しかも王妃とエーデリリィの前。
【姉様、エーデラークして頂けますか?】単直の極み。
【それは、どういう?】
【エーデラーク様が死司最高司に決まりました。
マディア兄様は今は無理ですが、前王様の発表では、エーデラーク様は封印を解いて復活なさっておられます。
死司神達の前に立てるのはエーデリリィ姉様の他には居ませんので】
【それは分かるのだけれど……そもそも どうして?
エーデラークは龍だと知られているのでしょう?】
【人神と獣神は同等なのです。
エーデラーク様は死司最高司補としての実績もあります。
それに今は神世のヒーローですので】
【ルロザムール様がなさっては?】
【私は辞退させて頂きました。
エーデラーク様をという声の方が圧倒的に多く御座いましたので。
それに……叶いますならば再生域に戻りたいのです】
【それは困るわ。
今のルロザムール様でしたら最高司に相応しいと思うのに……】
【では間を取って、エーデラーク最高司様とルロザムール最高司補長様で如何です?】
エィムにこにこ。
【【どこが間なのです!?】】
【最高司補の中のトップを作るという点です♪
以前のエーデラーク様の位置。それを明確にした役職です♪
皆様の意見の1位と2位なのですから♪】
【私は再生神に戻りたいのですが……】
【それはハーリィ様と相棒したいという意味ですよね?
ハーリィ様に死司域にとお願いしてみます♪】
ルロザムールを置き去りにして消えた。
【エーデお姉様、きっとマディアが立派な死司最高司をしますよ。
今は代理としてエーデラークなさっては?】
ユーチャリスにこにこ♪
【確かに……そうよね。
マディアが元に戻る迄の身代わり……それでしたら受け入れます】
【そうですか!】
【ルロザムール様、最高司補長をお願いしますね】
【あ……エィム様に――】【僕は最高司次補です】
戻っていた。
【ハーリィ様には会えませんでした。
ですがルロザムール様は死司最高司補長です♪
これまで通り僕の上長です♪】
【もう、それで決まりよ。
死司域に行かなければならないのよね?】
立ち上がってエーデラークに偽装した。
【ユーチャ、マディアをお願いね】【はい♪】
―・―*―・―
エィムでも見つけられなかったハーリィはリグーリと一緒に月に来ていた。
【お~いディルム~♪】【ん?】
リグーリが呼ぶと、遥か彼方で此処だと高く跳んだ。
【行こう】ハーリィを連れて術移。
つまりハーリィは移動の為に狐神を連れて来たのだった。
――白虎の目の前。
「久し振りだなっ♪」兄ディルム。
「この大変な時に何故 戻らない?」弟ハーリィ。
「コッチが楽しいから?♪」
「何故 疑問形なのだ?」
「俺のが兄なんだがなぁ」
「それは知っている」「話が進まない兄弟だな」
「リグーリは何しに?」
「ディルムが月の何処に居るのか分からなかったからだよ!
術移しか出来ない場所だろーが!」
「そっか♪ で?」
「神世も人世もグチャグチャだ。
戻って働けよな」
「白虎様と話してくるよ。待っててくれ」
と走り始めたところに白虎サンタイラー。
「行けよ。俺もチョイチョイ行くからな」
「はいっ! では行って参ります!」
「「ありがとうございます。では失礼致します」」
両手に大型猫でリグーリは術移した。
――月の道を通ってキツネの社。から山の社。
【兄様の社だ。
まずは現状やらを話さないと知らないだろ?】
【確かにな。フェネギは?♪】
【忙しくしてるんだ! 先ずは聞けよな。
ったくナンでそんなにご陽気なんだよ】
また厄介な奴に話さなければならなくなったと溜め息が零れ落ちてしまうリグーリだった。
ふとカケルはどうしているのだろうとも思いつつ。
【ん? エーデラーク死司最高司!?
おいハーリィ、ルロザムール死司最高司補長だとよ。
こりゃあ再生には戻れそうにないぞ】
【私も死司に移れるだろうか……】
【じゃあディルムと交換?】【おい】
【ラピスリに再生最高司補長を頼みたい】
【そっか。それが最善だな。
ディルムだと荷物を押し付けるだけになるからな】
【おい。さっきから俺を物みたく言いやがって!】
【【こんな時に馬鹿能天気だからだ】っ!】
【だからその『こんな時』を説明しやがれ!】
【【まさか知らなかったのか?】!】
【月に居たんだからなっ!】
【イーリスタ様も真四獣神様方も】
【伯父叔父様方も、ドラグーナ様の御子兄姉様方もいらしてたぞ】
【双子少年執事殿も月からだろう?】【だな】
リグーリとハーリィ、暫し考える。
【【ディルムは除け者か?】】
【おお~い。除け者ってナンだよっ!】
【それならば【役立たずか?】】
【眠り修行してただけだっ!】
【起こしてもらえなかったんだろ?】
【ふむ。忘れられていた可能性も有るな】
【う……とにかく話してくれよなぁ】
―・―*―・―
青生と彩桜は永遠の樹に繋げてもらった雲間から大勢の魂頭部をマヌルの里に運び、キメラ魂をラファイナとピュアリラに頼んで、雲地を調べていた。
【他の兄貴達は復興?】
【それと神様の貴族の件で動いているよ。
ナターダグラルが監禁していた貴族の皆様が動けるようになったからね】
【そゆヒト達も居たねぇ】
【金錦兄さんと白久兄さんが狐儀殿と一緒に動いているんだ。
今は、浄化最高司で第1伯爵だったチャコーリスト様と、死司最高司で第4伯爵だったアークハーマル様を連れて神王殿に行っているよ】
【死司最高司、マディア様なったよ?】
【チャコーリスト様もアークハーマル様もご老神様だから最高司に戻るつもりはなくて隠居したいんだって。
でも一族の為に爵位だけは戻してほしいって。
第1伯爵は空いたからいいけど、第4以下は繰り上がっているからね】
【そっか~。あ……】上を向いた。【隠れ家?】
【そうだね。これもあって『反乱』になったんだよ】
【あ~~、ワル第9伯爵の手下さん達だ~】
【うん。オーノマイトナール様は悪くないんだけどね】
【うんうん。だから悪オーノさんて呼ぼ~♪
取り憑きオーロも計画してたんだねぇ】
【今回の『反乱』もザブダクルの中に居たオーロザウラが起こしたんだからね。
魔女と同様にバラバラに見せて連携していたんだよ。
オーロザウラは全てを破壊するつもりだった。
でも配下には事が起これば避難して、新たな国の中枢に入るよう指示していたんだよ】
【オーロ欠片 抜いても指示は生きてたんだぁ】
【そうみたいだね】
【オーロ無関係に欲?】
【たぶんね。だから反乱軍だよね】
【中級貴族さんも整理?】
【そうなるね。紅火、見つけたから来て】
【む】現れた。【逃げられぬよう囲む】堅固。
【紅火、かなり広いから黒瑯と藤慈も呼んでね。
見張りをお願いね】【む】
【彩桜、神王様の軍に連絡しよう】【ん】術移。
―・―*―・―
「では第1位の上に特級位を新設し、第2位、第3位を繰り上げては如何ですか?」
「それなら第4以下は まんまで済むよな♪
結果的に皆、繰り上がったんだろ?
めでたしめでたしじゃねーか♪」
金錦と白久の言葉にサティアタクスは大きく頷いた。
「それでいきましょう。
ナターダグラルがした事とは言え、上げたものを理由も無く下げる訳には参りませんのでね。
チャコーリスト様が特級位伯爵、アークハーマル様は第3位伯爵で如何でしょう?
呼び名は特位公爵と同様に特位伯爵で」
「上げて頂けますのに何の異議が御座いましょうぞ」
「はい、有り難き事で御座います」
「ではシャーナルカイト様とダミスナタン様にもお知らせせねばなりませんね」
王代理、執事を手招き。紙を渡した。
「これにて一件落着、発表は王からでよろしいでしょうか」
と、上級貴族の件は落ち着いた。
「ん? 特位公爵ってあるのか?
第1位がサティアタクス様トコですよね?」
「かつてのアノーディア王族の末裔方々ですよ。
10億年程前の当時でも伝説的となっていた新カリューの黒き女王の再来と言われた女王が神世を崩壊寸前にしたそうで、王族で残ったのは分家のみ。しかも かなり遠くて女王の知らない親族のみとなった為に、神王は世襲制でなくなったのです」
「ここにも魔女が出てくるのかよ……」
「しかし魔女は浄滅された。
これからは善き世となる」
「はい。私も弟を支えてまいりますので」
オーロ憑きの第9伯爵オーノマイトナール(もしも次回 話題に出たなら彩桜式に『悪オーノさん』と呼びます)が仕込んでいた事が明るみに出ました。
各屋敷の地下に居ないのでバレたようです。
出ていいと言ってもらえるのを待っていたのでしょうが、誰も居ない瓦礫と荒野の地に出てどうするつもりだったんでしょうね?




