輝竜兄弟は音楽メイン
キツネの社に戻ると夜明けが近かった。
輝竜兄弟は午後に神世で演奏会をしようと決め、一旦は持ち場にと解散した。
【お稲荷様、ラファイナ様とピュアリラ様のお部屋を隠し社の奥にお願いします】
残っていた青生が呼び止めた。
【隠し社に? 何故?】
【人神様が落ち着かなくなるからですよ。
信奉者だらけなんですからね】
青生がチラリと視線を向けた先では、魂材神だった古い神達がピュアリラを囲んで跪拝していた。
大神は瞑想してから活動するので早起きだ。
次々と目覚めて集まり、何事かと寄るので、どんどん信奉者達の囲みが分厚くなっている。
【バレないようにと誤魔化していたのに、お稲荷様が通路でバラしたからですよ】
【……すまぬ。拡張する】
一緒に隠し社へ。
【それに、キメラ魂の分離は混沌神様の方が得意だと思うんですよね】
【ふむ。神力の差だけでも然うであろうな。
青生は今日は?】
【ラファイナ様とピュアリラ様に説明したら雲地に行きます。
まだまだ不安定でしょうから。
それに職域も早く全て戻せるようにしないといけませんからね】
職域は今もメインが稲荷山な状態だ。
神世も人世も復興に忙しく、職域は後回しにせざるを得ず、神王殿との遣り取りの為だけに、ごく一部を下空に移しただけで止まっている。
【ラピスリは?】
【神世の地です。今は……我が儘は言えません。
ドラグーナ様と一緒に動きますよ】
【ドラグーナは回復したのか?】
【はい。
ブルー様に繋ぎ直してもらって、無理をしていた部分が解消したみたいです】
【然うか。ならば任せる】
―・―*―・―
彩桜は事が起こった死司最高司の執務室で拾知し、神王殿の倉庫に行った。
ザブダクルは神王に書類を突き付けた後、その場に捨てていたので、書類は倉庫に片付けられていたのだった。
それを探し出してザブダクルへと瞬移した。
――ザブダクルはマヌルの里に部屋を貰っていて、ベッドで掛布をすっぽり被って泣いていた。
「今日はお休み? 復興は?」
「手伝っていたのだが……今チェリー!?」
「うん。俺、様子見に来たの。
手伝うってねぇ、壊したのザブさんなんだから直すのザブさん主役でしょ。
み~んなで手伝ってるの。理解した?」
「確かに……そうだ――ですね……」
「俺、慰めないよ。怒ってるから。
俺達の忠告ぜ~んぜん無視だし。
マディア様のコト信じなかったから。
この書類、覚えてる?」
「これは……王と話していた……」
「もっかい読んでみて。
マディア様と王様の手紙」
唱えては首を傾げ、別の術を唱え、また首を傾げと繰り返したザブダクルがギブアップらしく彩桜の方を向いた。
「封じたのか? 消したのか?」
「俺、な~んにもしてないよ。
執事さんが拾って倉庫に片付けてただけ。
ソレね、ケモノ神力じゃないと開封できないの」
「だが……」
「聞こえたんでしょ? 自分で導き出してよ。
でもムリぽいからヒントね。
ザブさんの中にはオーロ居たの。
ダグさんの身体、ドロボーさんしたトキ入ったの。
ダグさんとオーロ、癒着してたのにダグさん魂だけ指定して封印したでしょ。
だからオーロ離れて身体に残ってたの。
で、ザブさんにお引っ越し。
だから何度も声 聞こえたの。
オーロ、修行しなかったて言ったよね?
他人神神力ドロボーさんしてエラソーしてたの。
オーロはヒト神力だけ選んだつもりだったの。
でもね、俺 知ってる人神の大神様み~んな獣神の里で修行してるの。
獣神の心話できないと不便だから欠片も貰ってるの。
だからね、オーロはケモノ神力も無自覚に持ってたの」
そこで止めて暫く待った。
「まだ分からない?
ザブさんには開封ムリなの。
無自覚ケモノ神力持ちオーロは開封できたの。
確かにマディア様と王様はお話ししてたけど、慰め合って、励まし合ってただけなの。
ソレをオーロが改竄したの。
呪を暴走させたくて煽ったの。
ザブさん乗り越えてなかったし、マディア様を信じてなかった。
マディア様はザブさん信じて従ってたのに。
ザブさんしたコト、オーロに置き換えてみて。
マディア様と王様、ザブさんとシャルダクル様に置き換えて想像してみて。
シャルダクル様、赤ちゃんじゃなくて弟様ね。
奥様いて仲良しさんだと仮定してね。
それぞれ奥様を封じられて、別々トコで首輪されて見張られて脅されてるの想像して。
今日は、それだけ。ちゃんと考えてみて」
書類を回収して瞬移した。
――今日ザブダクルが居た痕跡がある場所。
「サイオンジさ~ん♪」
見付けたので飛んで寄った。
「ど~したぁよ? もう演奏会かぁよ?」
「ううん、午後。
サイオンジさん、ザブさんの班?」
「いいや、ナンジョウの班だぁよ」
ナンジョウは すぐ近くに居て、呼ばれたので向いた。そして来た。
「俺に用か?」
「ナンジョウさんスカウト魔なのにザブさんクビした?」
「あ~アイツかぁ。
一から十まで指示しないと動かないし、術がど~とかナンだとかユーレイに聞かれてもなぁ。
オマケに すぐ泣くし。
だから疲れてるんなら休めと言ったんだよ。
んで俺は潜って、その辺で休憩してるかと思って蓋上げしたら帰っちまってたんだ」
「あらら~。
まだ呪に縛られてるつもりなのかにゃ?
思い込みで自分の首 絞めてるみたいだねぇ」
「へ?」
「あの神様は呪われて暴走したんだとよぉ。
解呪が終わってるってぇ事に気づいてねぇんだぁな?」
「そぉみたい~。ちょっと考える~」
―・―*―・―
青生はラファイナとピュアリラに最近1年の弱禍から始まった騒動と、判明した事についての記憶を流し、補足説明をしていた。
「全ては闇禍に踊らされた魔の仕業なのですね」
ラファイナが魂頭部の保護珠が並ぶ室内を見渡した。
そして悲しそうに目を伏せた。
「その魔はブルー様が滅したのですか?」
「魔女はブルー様が、悪神は俺達が滅しました」
「姉様のように摘出しなかったのですか?」
「ブルー様も救えるものなら救いたかっただろうと思います。
魔女は闇禍を利用しようと呼び寄せたんです。
喜んで取り込んだんです。
息子である悪神も同じくです。
この場合は闇禍と同じく滅するしか方法が無くなるんです」
「そうですか……それで……」
「はい。ピュアリラ様は誤解なさったのではありませんか?
ピュアリラ様の当時も闇禍を呼び寄せ、利用しようと取り込んだ神様がブルー様に滅されてしまったのでしょう?
怖くなって、護りたくて月に逃げて籠ったのでしょう?」
「その通りです。私はブルー様に……」
「ブルー様は全て理解なさっておられますよ。
とても優しい方ですから」
「そうですね。とても、とてもお優しい……」
「ですから、また地星にいらっしゃいますよ」
「私も、そう信じます」
ピュアリラは ようやく少しだけ笑みを浮かべた。
―・―*―・―
彩桜が考え事をしながら、ザブダクルの代わりに建物を術で復元していると、アミュラが来た。
「おやまぁ、ザブは?」
「お部屋でヒキコモリ~」
「ま~ったく困ったコだねぇ」
「アミュラ様、どしたの?」
「神王殿から回収した封珠を大まかに仕分けたからダグラナタンを連れて行こうかと思ってねぇ」
「人世にも欠片さん、い~っぱい居るよ。
運んだらいい?」
「そうしてもらえるかい?」
「ん♪ ザブさんの代わりの神様、連れて来ないとね~」
「それなら ほら、アタシの弟子達が来たから入ってもらうよ。
地下から出した人神達は使いものにならないんだねぇ」
「そぉなの。だから紅火兄が城壁の外に救護所と避難所 作ったの~」
「しかも宥めないと動きもしないのかい」
アミュラの視線を追うと、今ピュアリラとしてラピスリが拝まれていた。
「瑠璃姉も大変だねぇ。
ランも今カミュラしてるんだぁ」【ラン♪】
【あっ、サクラ♪ でも離れられないの~】
【だよねぇ】
【私よりも! 叔母様、爆発寸前!】
【ほえ?】
【青生お兄様と一緒に居るの誰っ!?】
【あ~~、ピュアリラ様~】
【ええっ!?】
【ホントなのぉ。月に居たのぉ。
あ~、ドラグーナ様オモテなって乗ってっちゃったねぇ】
【青生お兄様に伝えて! 神世に来てって!】
【午後、神王殿で演奏会だから来てね~】
【離れられると思ってるの!?】
【う~~~困ったにゃ~ん。
人世 行ってみるぅ~】術移。
「こりゃあ、会えそうにないねぇ……。
けど今は仕方がないかねぇ」
アミュラはダグラナタンを連れに行った。
―・―*―・―
「人世も神世も、このような惨状なのですね?」
「はい。地星が異界に飛ばされても粉微塵にならなかったのは、大勢の大神様方が核を支えてくださったからです」
『核だけでなく揺れや津波の力も大神様方が吸収してくださいました。
ドラグーナ様もです』
「俺のは話さなくていいからね」
『話しますからね♪』
「ドラグーナ様と今ブルー様は共存を楽しんでいらっしゃるのですね」
「『はい♪』いろいろありましたが悪い事ばかりではありませんでしたので♪」
「そう思える陽の気が地星を救うのでしょうね」
「『そうなる事を願っています』」【青生兄~♪】
【彩桜どうかした?】
【欠片さん、お社からマヌルの里に運ぶの手伝って~♪】
【確かに それも必要だよね。
神王殿からのと合わせるんだよね?】
【そぉなの~♪】ドラグーナの背に現れた。
「ラファイナ様、ピュアリラ様こんにちは♪
次、神世ねっ♪」一緒に術移♪
輝竜兄弟は音楽メインでと人世の復興からは外されてしまったので自由に動いています。
彩桜はチャンスだとザブダクルの所に行きましたが……考えるとか理解するとかをどこかに置き忘れてしまったのでしょうか?
それとも、やっぱりオーロに噛られた?
そういえばルサンティーナ様は?




