生きていたピュアリラ
以降は復興に専念しようと――
【欧州でも演奏してくださらないかしら?
南北米も待っているのだけれど?】
――していたが、そうはいかなかった。
【音神でなくば神楽器の真の力は引き出せぬ。
マーズ揃って行ってもらいたい】
金錦と一緒に居たツクヨミが苦笑しつつ言った。
【そうですわね。
大勢の不穏は人のものでも侮れないのです。
私達大神であろうとも神力が削がれてしまいますので、早急にお願いいたしますね】
アマテラスも微笑む。
その言葉は他の大神達にも伝わっており、マーズは復興よりも音楽をと送り出されてしまった。
先ずはフリューゲル城。
「メーア、世界中からリクエストだ。
ミニライブして回るぞ」
「俺達はいいがソーカイは?」
「実は、響チャンとソラが神世なんだよ」
「カナデは?」
「頼んでみるか」「俺が行きます」青マーズ瞬移。
「コーラスは彩桜が分身と、でいいだろ」「ん♪」
「その楽器、耳に届く音は近くだけだとは思うが、心に響くのは広いんだろ?」
「だよ。神様の楽器だからな。
もしかして聞こえたかぁ?」
「だから行ったんだよ。
また新しい忍法を覚えやがったなと思ってな♪」
「あの演奏で寝てても心に響いて不穏が減ると思ったんだがなぁ」
「ま、ガンガン回ろうぜ♪」「戻りました」
「カナデ、急に悪かったな。
そんじゃあ世界ツアーに出発だ♪」
大きな放送局に行っては広く放送してもらい、東邦テレビでの映像データも渡して次へを繰り返して、邦和に戻ったのは夜中だった。
「奏チャン、引っ張り回して悪かったなぁ。
明日は ゆっくり休んでくれ」
銀の言葉に合わせて青と桜からの治癒が奏を包んだ。
「いいえ。悪くなんてありません。
充実したツアーでした。
次もまた呼んでください」
笑顔キラキラでペコリとして家に入った。
紗桜家も当然ながら無事なので帰宅していたのだった。
【帰ろ~♪】〖ドラグーナ来てっ!!〗
【あれれ? イーリスタ様?】
高くなりつつある下弦に向かう月を見た。
〖また寝てるのっ!? 早く来て来てっ!!〗
【ん♪ 兄貴達~♪ お稲荷様トコ集合~♪】
白久と青生を連れて瞬移した。
――キツネの社。月への道の前。
【お稲荷様も月 行こ~♪ 兄貴達も行っくよ~♪】
次々と道に入った。
【術移する。乗れ】
乗ると即、月側の扉前だった。彩桜が開ける。
【イーリスタ様~♪ 俺達 来た~♪
えええええっ!?】
【ど~したぁ? うわ……】
【白久兄さん? あっ……】
【白久兄 青生、後ろが詰まってるんだから――】
【黒瑯兄様まで止まらないでくださいよ】
黒瑯の背を押した藤慈の後ろでは、神眼を向けたらしい金錦と紅火が固まっていた。
更に後ろのオフォクスも言葉を失う程に驚いている。
「青生と彩桜? だよね?
ドラグーナ様に渡した闇障と補助の光明を持っているのは」
瑠璃鱗、煌めく純白の大翼、穏やかな慈愛の光を放つ光輪を持つ龍神が微笑んだ。
「はい……」「は~い♪ 俺、闇障♪」
「手伝ってもらいたいんだ。いいかな?」
「「はい!」」
「他の皆も、ドラグーナ様の力が必要だから一緒にお願いしていいかな?」
「「「「「はい!」」」」」
「地星は生き残った。それが鍵だったんだ。
やっと出してあげられるから来てもらえる?」
一瞬で、宙に浮かぶ白い神殿の前で手招き。
【オフォクス~♪】【乗れ】
兄弟と兎イーリスタが乗ると術移。
――神殿前。
神殿から真四獣神が出て来ると、神世に居た筈のアミュラも現れた。
【アミュラ様、瑠璃姉は?】
【ああ、連れて来てやったら良かったねぇ。
気を感じて慌てちまってねぇ】
【うんうん、慌てるよねぇ。
俺もラン連れて来るの忘れてたぁ】
「もういいかな?」「あっ、はいっ」
「俺も早く出してあげたかったんだ。
でも誤解していて頑なだった。
だから『鍵』が必要になってしまったんだ。
闇禍が絡む大きな事だったからね。
その鍵は、さっきも言ったけど闇禍が起こす災厄に耐えて無事に乗り越える事。
当事者な君達としては無事とは言えない状況だろうけど、前2回を考えれば分かるよね?
それに復興の為にも早く出てもらうべきなんだ。
ピュアリラ様は大きな力をお持ちだからね」
「やっぱりピュアリラ様、生きてたんだ~♪」
「そうだよ。
ピュアリラ様は闇禍に憑かれたラファイナ様を封じた珠を抱いているんだ。
俺に見つかればラファイナ様を滅されてしまうと思い込んでね。
だから崩壊を止めに来た俺から逃げて、此処に閉じ籠ってしまったんだ。
開け方は闇障大器と同じだけど、より大きな力が必要だからお願いね。
俺は離れているからね」
ただ姿を消したのではないらしく、全く感じられなくなった。
「始めよう」「ん♪」
「金錦兄さん、白久兄さん、黒瑯。支えをお願いします。
紅火。闇禍が逃げないように、それと攻撃や飛び火が起こらないようにお願いね。
藤慈。闇禍の動きを封じる浄化をお願い。
神様にはピュアリラ様からの攻撃に対処をお願いします。
では始めます」
【オフォクス、我等は結界の外だ。
気付いておるのだろう?】
朱雀が先導し、青龍が続いた。
【はい】【そうだね。今は静かに離れないとね】
【ドラグーナ……目覚めておったのか?】
【さっき微かな不穏を感じてね。
ブルー様が離れた時に、潜んでいたモノが入ったよね?】
【その気配も察知なされて、青身神様は遠くに離れられたのじゃろうよ】
玄武も朱雀と青龍を追った。
【行こうぜ】
白虎にも促され、オフォクスは頷いて輝竜兄弟から離れた。
―・―*―・―
【ラピスリ叔母様っ、月の道の扉が開かないの!】
【ふむ】ランマーヤを連れて瞬移。
――神王殿の月の道の入口。
【此方も開かぬな。
しかし、そのうち戻るだろう。
待つしかないのだから諦めろ】
【もうっ】
【今日は ずっと演奏していたようだが?】
【不穏だらけだからってミニライブで世界ツアーしていたわ】
【それも必要な事だ。そう怒るな。
ところでユーロンは?】
【神楽器の音色で復活したわ。
怨霊化しかけたからモグラさんの縛りが発動して眠らされてしまったのですって】
【縛り?】
【怨霊化を止める縛り。呪ではないの】
【ふむ。モグラ殿は優しいからな】
【そうよね。
縛りは、落ち着けば眠りから覚めるものだったみたい。
だから音色で落ち着いて、目覚めたの。
そのサクラが奏でている間に、神楽器の音色に驚いたお兄様達が集まったの。
それで東邦テレビで電波ジャックして、その後、世界ツアー】
【電波ジャックか】ははは♪
【叔母様は青生お兄様と会えなくても平気なの?】
【絆で繋がっている。丸一日程度ならばな】
【丸一日、経ったと思うけど?】
【確かにな】外に出て月を見上げた。
ランマーヤも並んで見上げる。
【明日は捕まえなきゃ!】
―・―*―・―
月の神殿が更に上がり、軽い地響きがして蓋が浮かび上がるように現れた。
【開けよう】【うん】
闇障大器を開ける時と同じ術を唱えると、蓋は すんなり浮き上がった。
〖誰です? その蓋を開けてはなりません〗
【母様! 落ち着いてお聞きください!】
〖アミュラだったのですか。
話は手短に。すぐに閉めなさい〗
【ブルー様は伯母様を滅するつもりはないそうです。
母様と伯母様、どちらも助けると仰っておられます。
どうか出ていらしてください】
〖ですが……〗
【本当ですから!】
【アミュラ様、俺が話します。
ピュアリラ様、落ち着いていらっしゃいますよね?
闇禍は摘出可能です。
ですから先ずは取り出してラファイナ様を元に戻しますので、出ていらしてください】
〖そのお声……ブルー様……〗
青生が否定するべきかと迷っていると、ピュアリラが姿を見せた。
「ブルー、様……?」
仕方がないので翼を広げて光輪を具現化した。
「摘出しますので封珠を……持ったままでも構いませんよ。
チェリー、助手をお願いね」「ん♪」
彩桜も同様に翼を広げて光輪を具現化。
「では……このまま、お願いいたします」
両手で包むように持った封珠を差し出した。
「「はい」」
【融合していても動くから闇呼吸着で動きを封じてね】
【絶妙強度で固めちゃう~♪】
紅火が成した結界の内を、藤慈の聖水の霧が満たす。
70億年を経た融合を解きながらの摘出が始まった。
―◦―
結界の外では姿を消したドラグーナがオフォクスの背に闇呼玉を当てていた。
【あの摘出が終わってラファイナ様がご無事だとピュアリラ様が安心なさったら、ブルー様が戻ってくださるからね。
強い闇持ちの娘が青生を追い掛けて来ないように、月に繋がる道は全て閉じているし、此奴には逃げられないように吸着しているから安心して待っていてね。
飛ばないようにオフォクスの背を借りているけどね】
【不安なんぞ無い。
何度も何度も来おって、腹立たしい限りだ。
しかも儂を狙いおって】
【その点は、闇持ちの強い神だと認めてもらえたとでも思ったら?】
【ドラグーナ……】
【うん。楽しく考えようよ。
陽の気が地星の神の正義になったのは、きっと防護の為だよ。
地星は何度も何度も狙われてきたんだからね】
【ふむ。納得だな】
オフォクス様に闇禍が入ってしまったようです。
でも問題なさそうですよね。
とうとうハッキリ姿を見せたブルー様と月に隠れていたピュアリラ様の方が大事件だと誰しもが思っているので静かに待つオフォクス様とドラグーナ様なのでした。




