最後の仕上げ
ルサンティーナの項と左肩から新たに生え現れた支配核は握り拳2つ分程。
最初の大きな支配核よりは すんなりと抜け出た。
核は すんなりだったが、呪を繋ぎ止める錨だったらしく呪鎖と禍に絡む細かな呪塊が大量に噴き出していた。
【みんなには見えてない?
あ~また人神オンリーかな?
だったら昇華闇障暗黒、激天特大闇呼吸着!】
錨支配核2つが抜けるまでの間にも、大支配核に繋がる呪鎖は出きっておらず、絡まる禍塊と呪塊も次々と引き出されていた。
禍塊はザブダクルが頑張っているが、どうにも間に合っていない。
【もしかしてザブさん、まだビビってる?
それに呪塊の粉、見えてない?
だったらガンガン吸着しゃうもんね~】
「あっ!」
思わず誰かが声を上げた。
浮かんでいた禍と2錨支配核が大支配核に吸い込まれたのだった。
『ルサンティーナ……』
オーロザウラの低い声が聞こえた。
何かに反響しているらしく、耳障りな余韻が木霊のように残る。
皆の視線が更に大きくなった支配核に集まる。
「ぁうっ……ああっ!」
ルサンティーナの背から禍塊や見える大きさの呪塊が次々と出て、大支配核へと飛び込んでいった。
【闇呼吸着マシマシ!】方向転換!
小さな支配核もボコボコ出ている。
そこからも呪鎖が出ているので、小支配核の群れを吸収した大支配核は不気味な水母のようになっていった。
『何故だルサンティーナ……何故お前はザブダクルなんぞを想い涙するのだ……』
〈嫌っ! 助けてザブダクル様!
来ないでっ! 触らないでっ!〉
〈ルサンティーナ!!〉
『ザブダクルなんぞ滅してやる……儂は……欲しいものは全て手に入れるのだ!』
〈私の心だけは手に入れられない!
私はザブダクル様の妻なのです!
王妃とされても貴方の妻ではありません!〉
『儂に逆らうと言うのか……ならば!』
大支配核が勢いよく降下しルサンティーナに入ろうと迫る。
「させぬ!!」
ザブダクルが禍で止めた。
「ルサンティーナは私の妻だ!!」
『小癪なっ!!』
支配核も禍を集めて対抗する。
互いの禍が相手を呑み込もうとしている。
開き、閉じ、被さり、内から弾き、鬩ぎ合い続ける。
んもぉ、まだビビってるってアリなの!?
でも……利用する? 勝たないとだもんね!
〈まだだよっ! 出きるまで待ちな!〉
『ルサンティーナ!
儂に逆らえぬようにしてやる!
ザブダクルに会えぬ姿としてやるぞ!』
「させぬ! 二度とさせない!!」
しかしジリジリと下がっている。
『お前の神力は儂が奪った残り滓だ。
儂に勝てよう筈が無い!!』
「禍操の神力は敵わずともっ!!
私にはルサンティーナの愛がある!!
故にっ、お前なんぞには負けぬっ!!」
『ルサンティーナは儂のものだ。
醜い操り人形だ。儂の一部だ。手足だ。
ルサンティーナは儂の元でしか生きられぬ。
愛おしい操り人形なのだ!』
「どんな姿であろうが私の愛は変わらぬ!!
ルサンティーナは私の妻だ!!
ルサンティーナの愛は私だけのものだ!!
お前なんぞに向いてはおらぬ!!」
今度はソッチに暴走? 呪もナイのに?
だったら性格?
あ~あ~押し下がげられてるしぃ。
んもぉ~。
〈ザブ! 上昇しなっ!
魔法円の領域に入っちまうよ!〉
『「ルサンティーナーーーーッ!!!!」』
父子の叫びが遠ざかる。
ザブダクルが一気に押し上げ、何本もの呪鎖も勢いよく引かれて抜けきった。
〈今だよ!!〉
「残り滓はお前だ!!
ルサンティーナは私の妻だーーーっ!!」
ぶつかり合う禍で暗くなっていたが、一転して閃光に包まれた。
オーロザウラの絶叫が響き渡る。
〈とうとう極めちまったねぇ……〉あっ!
声に出てシマッタ! と慌てている。
〈どういうことです?〉
アミュラしたままの彩桜の呟きを響が拾った。
〈禍を反転させたんだよ♪〉徹するもん♪
〈それじゃあ……福?〉
〈そりゃあいいねっ♪
響ちゃんは面白いねぇ♪〉あっははは♪
〈だって『災い転じて福となす』でしょ?
『災い』じゃなくて『禍』だけど~。
眩しいけど、優しい光ですよね♪〉
〈確かにねぇ……〉福、いいねっ♪
耳障りな絶叫が掠れて消え、眩しさも収束して穏やかな灯りに照らされた広間に戻ると、ルサンティーナの姿も戻っていた。
囲んでいる獣神達から美女神へと浄化・治癒・回復の光が降り注ぐ。
神力が回復するに連れ煌めきを取り戻したルサンティーナが顔を上げると髪が流れるように動いた。
周囲に感謝を込めて礼をするとシャルダクルに微笑みを向けた。
ふらりとザブダクルが下り立ち、アミュラに向かって深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。
ルサンティーナをお願い致します」
「んん?」もう老婆に戻っている。
「私は父を殺しました。
如何なる処分でも――」
「な~に言ってるかねぇ。
オーロザウラの残滓は封じられてた神達がトドメを刺したじゃないか。
あれでオーロザウラは死んだんだよ。
さっきのはオーロザウラの記憶を持ってただけの支配核だよ。
核にしちゃあ大きかったけどねぇ。
オーロザウラじゃないモンを滅して何が悪いのかねぇ?
それよりもアンタには、これから た~んと働いてもらわなきゃならないんだ。
処分ってなら、身を粉にして働くソレだろうねぇ」
「アミュラ様っ」
シャルダクルを抱いたルサンティーナが飛んで寄り、ザブダクルと同じように頭を下げる。
「私もザブダクルと同じく、今の神世で生き、力の限り尽くさせていただきます。
ありがとうございました」
「ルサンティーナ。
アンタはザブダクルを夫と認めるかい?」
「はいっ」顔を上げた。
「私の夫はザブダクルですっ」キラキラッ☆
「ザブダクル。
アンタはルサンティーナを――」
「愛しています!
ルサンティーナは私の妻です!
誰にも渡しません!!」
「あ~、分かった分かった。
続きは頼んだよイーリスタ」
「「は?」」「僕でいいのっ?♪」
「結ぶの、好きなんだろ?」「うんっ♪」
「アタシは休ませてもらうよ。
婆ァは体力なんてないからねぇ」
腰をトントンしながら離れた。
「ああそうだ。
シャルダクルから命の欠片を抜いたからねぇ。
支配核の芯にされてたんだよ。
その分はザブダクルから取って込めとくれ。
早くしないと弱っちまうよ」
ザブダクルとルサンティーナの結婚の絆をイーリスタが結び終えると、ドラグーナ偽装の青生とラピスリが囲まれてしまった。
やれやれとオフォクスが、逃げはしないから休ませてやってくれと救出し、兄弟の所に連れて行った。
そこに王子達が来てドラグーナの子供達を囲み、『お願いします』と頭を下げた。
【俺達四獣神とマディアの親友で初代の弟子ティングレイスの子供達だよ。
獣神狩りは支配を受けての事だから許してあげてね。
修行も勉強もさせてもらえずに術で身体だけ成長させられている幼神達だから、指導をお願いね】
【はい!】一斉。苦笑しつつ。
そっと退散しようと頷き合っていると、ザブダクルとダグラナタンが響に捕まっていた。
【人世に行きたいみたいだよ~♪
神力射を撤去するって~♪】
【イーリスタ様、お願い出来ませんか?】
【オフォクスは? 帰らなくていいの?】
【ふむ……】兄弟をチラリ。【帰るか?】
輝竜兄弟は揃って大きく頷いた。
【ならばラピスリ、兄弟を頼む】【はい】
【でもマヌルの里からも応援 連れて来ないとダメみたい~】
上から見ていた彩桜が兄達の真ん中に着地。
【そうだね……確かめてみるよ】
「それじゃあユーレイさん達を連れて来たらいいのかな?」
「はい。お兄と一緒に蓋上げしてもらいたいんです。
私とソラは人世から応援を連れて来ます。
それと降臨神様も」
「そう。ありがとう。
誰か往復頼めるかな?」
「儂が行こう。社も気になるのでな」
「キツネ様が!?」
「何を驚いておる?」
「サイオンジと一緒に行動なさるのかと~」
「里で話したのでな。また後でよい。
ラピスリ、ドラグーナを頼む。
此奴は直ぐに無理をするからな」
「はい、父様」「ええっ!?」
「ラピスリは俺とオフォクスの娘なんだよ」
「父と父と娘……神様って……」
目の当たりにすると、どうにも納得できなかった。
「ん?」「何だ?」娘はクスクス笑っている。
「とっ、とにかく急がないと!
ソラ! ショウ! 一緒に!」
そんなこんなでオフォクスと響達は人世へ。
ラピスリはマヌルの里からユーレイ達を運んでから、輝竜兄弟を連れて人世に向かう事にした。
―◦―
マヌルの里に着くと、ようやく偽装を解いてよくなった青生は瑠璃と一緒にサイオンジ達の部屋に向かった。
【青生、翼は消せているが尾が……】
【うん。消せないんだよ】疲れ過ぎなのかな?
そんな姿なのでサイオンジもドラグーナだと思ったようだ。
延長戦するしかないと覚悟して受け答えしていると、ドラグーナが目覚めた。
【青生?
もしかして、ずっと俺をしてくれていたの?】
【はい、成り行きで。
でも気にしないでくださいね】
【ありがとう。十分 休めたよ】
〈ドラグーナ♪ ドラグーナ♪
父様と母様いた~♪〉
〈良かったですね〉
〈うんっ♪ お嫁ちゃん達 見せてるの~♪
義父様も来て~♪〉
〈『義父』は……おやめくださいね〉
〈だって~、その通りでしょ♪
ソッチはラピスリに任せて来て~♪〉
「行ってください。
皆様は私がお連れしますので」苦笑。
【父様が行ってくださいね】
【じゃあ今度は青生が休んでね】
【ありがとうございます】
どうにも不安定でオーロザウラにビビっているザブダクルですが、結婚できたので安定するでしょうか?




