連続解呪も裏方
「お~いアーマル~♪ 俺達も忍者しようぜ♪」
〈もう、すっかり元気なのだな?〉
「おう♪ 元気ハツラツだ♪
アーマルは まだなのか?」
〈そうだな。まだ起き上がれそうにない〉
「そんじゃあ俺だけで行くかぁ」〈トシ!〉
「んあ? ヨシちゃん ど~したぁ?」
〈忍者するじゃなくてアーマル様に治癒でしょっ!
トシを庇って禍矢をうけたんでしょっ!〉
「そんじゃあ治癒するぞ♪
アーマル、安心して受けてくれ♪
後で一緒に忍者しようなっ♪」
テトラクス達を神世に送った帰りに神力射の禍矢を受けてしまったアーマルは、背の鱗を貫かれた為に未だ回復中だった。
「神マーズに加わらねばな」
ウンディは忍者したいだけなのだろうと、笑いを堪えて治癒を受けた。
「おう♪ 神なんだからな♪」
「トシ、本気なの?」
「俺は尾に2本だけだから元気だ♪」
「受けていたの!?」
「つい、叩き落とそうとしちまったんだ♪」
「もうっ、気をつけてね」「おうよ♪」
ん? 尾に? 【意思塊、無事か?】
〖なんとかな。まだ消滅してねぇよ♪〗
【無事ならいいが、本体が無茶の塊だから気を付けてくれ】
〖おうよ♪〗
ひとまず安心したアーマルだった。
―・―*―・―
「「――放玕呪縛!!」」
神魂と禍と呪が噴き出した。
それらをアミュラの娘と弟子達が手にした封珠、保護珠に込めていく。
禍はザブダクルが消していく。が、間に合っておらず、そこそこ逃げているので、彩桜が弱く闇呼吸着して引き寄せていた。
【アミュラ様、オーロも出てるよ】
小さな黒いオーロ魂片が床に落ちた。
「ん? これは――」【確かにオーロだねぇ】
アミュラが封珠を隠し持った手を伸ばすと、弟子達が神魂片を込めている保護珠からの浄破邪撃が針となって集まった。
あまりの多さにオーロ魂片は弾け散った。
その、放っておいても消えるだろう粉々魂片にも浄破邪撃の針がトドメを刺した。
「そうかい。どうしても怨みを晴らしたかったんだねぇ」
【次は落ちる前に闇呼吸着する~】【頼んだよ】
「それじゃあ次は宙ぶらりんの絆を断つよ。
術は引き続きドラグーナとラピスリだ。
エーデリリィ、ユーチャリス。左右だよ」
各々に術を飛ばした。
術が始まるとアミュラは弟子達を集め、保護珠と封珠に分けて籠に入れた。
「呪はアンタ達に任せるから解いておくれ。
アタシは神達と話すからね」
保護珠の籠を持って離れた。
弟子達は各々に小さな魔法円を描き、中央に水晶玉を置いて詠唱を始めた。
アミュラは保護珠を周りに浮かせて話し始めた。
経緯を話し、協力を求める。
オーロザウラは残滓しか残っていないのだからと。
こういう術や状況に慣れていないユーレイ達への指示も飛ばしつつ。
術が進み、浮かんでいるルサンティーナからゾロリと腐鎖のようなものが床へと生えた。
続いて身体中を雁字搦めに縛っている鎖が浮き出、下に垂れた鎖と繋がっているのが見えるようになった。
【コレ……たぶん支配核に繋がってるよ。
オーロって、いつもそぉだから】
【だろうねぇ。神力不足で魂核には届かないんだろうよ。
支配核を出すのが大変だろうねぇ】
【何度も込めてるからマディア様みたく大っきなってるよねぇ?
上から闇呼吸着してもいい?】
【そうしてくれるかい?
それも強い闇持ちの人神でないと無理だからねぇ。
けど魔法円の効力圏外で頼むよ】
【うん】上昇。ルサンティーナの真上へ。
【魔法円内に入れる異物はユーレイだけ。
神が入ると呪が飛んじまうからねぇ。
ルサンティーナを支えるのは術が初めてなユーレイ達に任せるしかないんだ。
今チェリー、頼りにしてるよ】【ん♪】
光を敵とする呪が解け、ルサンティーナの姿が変わる。
「「「「解放破縛!!」」」」
四方からの術光に包まれた。
そして呪鎖が弾け散った。散りつつ消える。
ルサンティーナからも光が湧き、人らしい輪郭になった。
空かさず響がドレスを具現化する。
次の連術は真四獣神が四方を囲み、朱雀が唱える。
アミュラとも親しいのか、アミュラが術を一方的に決めるのではなく朱雀と相談して決めていた。
シャルダクルを分離する連術が始まった。
彩桜はアミュラと宰相達との話を聞きつつ、後でザブダクルに話す内容を決めていた。
『後で』が、いつになるんだろうと思いつつ。
悩みながら弱く闇呼吸着していると、色とりどりな龍神達が大勢わらっと現れた。
封珠から解放されたドラグーナの子供達だった。
「父様っ♪」大勢。
ドラグーナ偽装の青生の後ろに飛んで寄った。
「後で ゆっくり話そうね。
皆も囲んで神力を注いでね」
「はい♪」一斉♪
「じゃあ僕達も囲も~ねっ♪」
鳳凰イーリスタを先頭にオフォクスと弟達やら子供達やらの狐神達、マリュースと猫神達も笑いながら囲みに行った。
【青生、頑張ってね~♪】【イーリスタ様っ】
まだまだ他の種の獣神が続いている。
青生が神眼視線を巡らせる。
後ろに居るドラグーナの子供達の中には、共鳴はしているが父ではないようだと頭の上に『?』が乗っていそうな顔をしている龍神が複数居る。
【笑っていないで助けてくださいよ】兄弟に。
【性格は兄貴らしいが、声も話し方も雰囲気も青生がソックリなんだから頑張ってくれ♪】
【白久兄さん、笑いながら言わないでください】
【いやぁ、なかなか見られねぇ光景だからな♪】
【だよなっ♪ ガンバレ青生♪】
【黒瑯まで……】
【白久兄 黒瑯兄、後が怖ぁいよ~】
【【ゲ……】】静かになった。
【すまないが青生にしか出来ぬ事だ。【頼む】】
【そうですよ。青生兄様、頑張ってくださいね】
【最後までドラグーナ様に徹しますよ】溜め息。
などと話しているうちに真四獣神が唱える3連の長い術が終わり、ルサンティーナを包む穏やかな光が収束すると――
「ふにゃあ、ほぎゃあ! あぁあっ!」
元気な泣き声が響いた。
――が、声を上げているシャルダクルの肌は深緑に茶色を混ぜたような色で、その姿は かろうじて人の形をした ぶよぶよの塊だった。
シャルダクルを抱いているルサンティーナは人姿ではあったが肌は赤紫で、骨格に皮膚が張り付いているだけのように細く、節々が歪にゴツゴツとしていた。
「ルサンティーナ、顔を上げても大丈夫だよ。人神達にゃあ見えやしないからね。
周りで壁になってくれてるのは獣神だ。
何色だろうが気にしちゃいないよ」
「ですが……」
俯いて髪で隠したままの顔を小さく横に振っている。
「ま、分からなくもないがね。
さぁて、それじゃあ最後の仕上げだね。
ルサンティーナとシャルダクルに込められているオーロザウラの欠片を消したら元通りになるよ。
そのオーロザウラの欠片には嫉妬から生じた憎しみの禍なのかねぇ、ロクでもないモンが込められてるんだよ。
これはアタシが唱えるよ。
水晶に入ってる神達も手伝ってくれる。
ザブダクル。
アンタは欠片が浮いたら滅しな。
禍も一緒にね」
アミュラはザブダクルをひと睨みすると半龍半狐の姿になった。
【今チェリー、ここからが正念場だよ。
大勝負になるのは間違いないからねぇ】
【うん、ザブさんに乗り越えてもらわないとね】
【よく解ってるじゃないか。流石だねぇ】
「何度見ても綺麗よね~♪」
「ありがとよ響ちゃん♪
ラピスリも頼むよ」術を投じた。
「ぅ……はい」
兄弟姉妹の注目を浴びて困り顔のラピスリが今は仕方ないと半龍半狐姿になった。
姉、妹達と狐の女神達が綺麗だと歓声を上げる。
他獣の女神達も毛並みの美しさに羨望の眼差しを煌めかせている。
アミュラが『若さ』を纏った。
「では、始めます」
美しい女神達の二重唱が見目に負けぬ美しさで響いた。
先にシャルダクルの胸から黒々とした支配核が出てルサンティーナの頭上に浮かんだ。
あっ! ザブさんがっ!
〈ザブダクル、まだだよっ〉
彩桜が得意の声真似でアミュラが言ったとして、動こうとしたザブダクルを止めた。
黒禍色の支配核からは、細い紐にも見える呪鎖が尾を引くようにシャルダクルの胸に繋がっていた。
ズズッ、ズズッと呪鎖が支配核に巻き取られるように引き上がり、それに絡まる禍化した支配塊がボコボコと引きずり出されていった。
禍に隠れているが、細かな呪塊も出ている。
【小判鮫みたい~。弱々闇呼吸着~】
禍塊と呪塊が飛んで離れないようにだけ引き寄せた。
禍塊と呪塊が出る毎にシャルダクルの姿は少しずつ愛らしい赤子へと変わっていった。
そしてようやく出る塊が途切れ、呪鎖がスッと抜けきった。
〈今だよっ〉また彩桜が声真似。
頷いたザブダクルは挙げた掌から禍を放ち、支配核と、それに繋がり絡まる禍塊と呪塊を滅した。
〈よくやったね。次はルサンティーナだよ〉
アミュラは唱え続けているので、これも彩桜。
上を向いていた視線がルサンティーナに集まる。
ルサンティーナは苦し気にシャルダクルに覆い被さるように前屈みになっており、ユーレイ達の支えがなければ立てていられないだろう事は明らかだった。
その背から支配核の先端、黒禍色が見えた。
すぐに抜けるかとザブダクルとユーレイ達が身構えたが、氷山のように下は どんどん大きくなっていった。
【青生兄、浄治癒も!】【強めるよ!】
ルサンティーナから堪えきれない呻き声が漏れた。
〈あと少しだ、ルサンティーナ。
私が苦しみを終わらせてやる!〉
〈あ、なた……〉
〈ルサンティーナっ〉
「あああっ!」
径が最大の部分が抜け出ると、残りはズルッと一気に抜けた。
浮かんだのは、ルサンティーナの胴体と同じくらいの大きな支配核だった。
マディアの状態を知る者は皆、(神の)父子は やはり同じ事をするものなのかと思い知った。
支配核の全体的なシルエットは菱形。
円錐が上下に合わさったような形だが、小さな突起が多く在り、易々と抜けないように食い込ませていたと見て取れた。
その支配核からも、シャルダクルの時と同じように呪鎖が繋がっていた。
皆、続けて禍が出るぞと、背に沈んでいる部分を見ていたが――
〈うなじと左肩!〉
――響の声で皆の視線が動く。
別の支配核の先端が見えていた。
父子だから同じ事をしたのか、それともオーロザウラが誘導したのかは分かりませんが、神の親子は同一と言っても過言ではないというのを証明した形になってしまったザブダクル。
ザブダクル自身は その事に気づいているのでしょうか?




