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マヌルの里に達した禍龍



《――ええ。間も無く里に。

 ですので外壁(かこみ)を増やします。

 偽装具現化物ですので大した障害とはならないでしょうが、少しだけ時間稼ぎが出来れば間に合うと思いますので》


「ふむ。この里の囲みは強い。

 しかしマディアも強いからの。

 何やら進めておる全てに期待した上で、頼めるかの?」

マヌルヌヌの大きな顔の口角が上がった。


《イーリスタ様と一緒ですのでね。

 お任せください》

ティングレイスの魂に込められている子供達の欠片を経由して、ティングレイスの身体から話していたドラグーナも己を鼓舞するように薄く笑った。



―◦―



 神王殿下の街並みを全て破壊させたザブダクルは本殿に入り、宰相を捕まえた。


「ナターダグラル様……な、何を――」


「たった今から此処を儂の城とする。

 城内全てに伝えよ。

 儂に逆らう者は全て滅すると」

胸ぐらを掴んでいた手を離して踵を返した。


「あ、あのっ、どちらに――」


「儂に構うな。行くぞエーデラーク」乗る。


黒い龍は首を傾げた。


「外に瞬移せよ」


〈エーデラークさんに いってるんでしょ〉

伏せた。


「獣神の里に」〈瞬移せよ!〉〈ヤダ〉

〈儂の命を聞け! 行けマディア!!〉


マディアの魂は抗い、騒いでいるが、身体は瞬移した。



――が、何処かの荒野に出た。


「獣神の里では分からぬのか?

 最大の里に行け!」


〈いかないもん〉


「儂が行けと言ったら行くのだ!!」


〈ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤなのっ!!

 ナンでっ!? オジサンだれなのっ!!

 オジサンだいっキライ!! おりて!!

 ボクきかないもんねっ!! ヤダッ!!

 ボクのチカラだもんっ!! しない!!

 ヤダッたらヤダーーッ!! キライ!!

 サトにオジサンいかせないのっ!!

 サトもコワシちゃうんでしょっ!!

 おしえないもんっ!! イヤっ!!

 キライキライ! だいっキライ!!〉


「煩い!! 若化仙華昇!!」


マディアの魂は静かになり、支配と禍が動かす身体はマヌルの里へと瞬移した。



―◦―



〈なんてことを!!〉〈姉様、命の欠片を!!〉


《エーデちゃん落ち着いて!!》

《俺達がマディアを保つからね》


 マディアの魂は、話し方こそ記憶が無いので1歳未満のままだが、父達が退行に抗い20歳程に戻していた。

それでも、100歳も若化する術をまともに受ければ一溜りもない。


父達の保つと言う言葉を疑う気は微塵も無いのだが、消滅寸前の夫を目の当たりにしたエーデリリィの怒りは頂点に達していた。



―◦―



 結界に拒絶され、マディアの身体から離れざるを得なくなったザブダクルは、ほんの少しだけ離れて禍龍の動きを追っているつもりだった。


しかしザブダクルには結界の向こうは何も見えず、岩壁近くの草が点在するだけの地に禍龍の咆哮と破壊音だけが響いていた。


その方向を見ているザブダクルの眼差しは次第に虚ろとなり、感情や意志を感じられるものではなくなっていた。


〈マディアよ……全てを破壊せよ……人神の次は獣神(ケモノ)だ……根絶やしにせよ……〉


その呟きはザブダクルが込めた支配や禍に伝わり、命に直結する鱗を再び失った為に消滅寸前となっているマディアの身体を動かし続けていた。



―◦―



 ザブダクルが虚ろなまま命じ続けている原因は、魂内でのオーロザウラとカーリザウラの戦いが激化し、オーロザウラがザブダクルの魂を取り込んでは神力に変えていた為であった。


《カーリである部分なんぞ我が神力としてくれよう!

 ザブダクルは儂の子なのだからな!

 壊せ! 全てを破壊するのだ!

 獣神(ケモノ)なんぞ根絶やしにしてしまえ!

 儂の(メイ)小童(こわっぱ)に伝え続けよザブダクル!

 小童が命尽きるまで暴れさせるのだ!》


《見つけたぞオーロ!

 呪鎖はオーロの周りに残るもののみ!

 他は全て浄滅した! 覚悟せよ!》


カーリザウラが連射していた浄破邪が、逃げるオーロザウラを掠めた。

《儂を今更っ、滅したとて! ザブダクルは止められぬ!

 暴走は! 止められぬのだ!

 儂の勝ちだ! ザブダクルは儂の子だっ!》

逃げて避けて魂核に入ろうと向かう。

《儂には当たらぬではないか!

 儂は滅されぬぞ!

 この魂を乗っ取ってやる!》

魂核に近付き、嘲笑を溢した時、オーロザウラが鎧の如くに纏っていた僅かな呪鎖だけを残して、他は崩れ落ちつつ消えていった。

《なっ、何故!?》

笑うどころではなくなって、ひた逃げる!


《先に呪鎖を浄滅しただけ!

 覚悟しろオーロ! 引導を渡す!》


《待てカーリ! 双子の兄弟ではないかっ》


《己しかないくせにっ!》浄破邪雷!


《ザブダクルは操禍持ちの闇神なのだぞ!》


《闇であろうが殆ど僕だ!

 滅されるのはオーロだけだ!》連撃!


雷化した浄破邪が拡がりオーロザウラを捕らえた。

《カーリ! 儂は兄なのだぞ! 儂は――》



―◦―



〈マディア! 消えないでマディア!!〉

〖エーデちゃん落ち着いて!!〗

〖マディアは生きているからね〗

〈許せない……魔は滅すべきよ……私はマディアを取り戻します!〉

エーデリリィが輝き始めた。


〈私も! グレイも……ですから許しません!〉

ユーチャリスも輝き始める。


夫への命の欠片は絶やす事なく、爆発的に神力を高めていった。



―・―*―・―



【ドラグーナ様! 神世に行こうよ!

 人世に戻ろ! 瑠璃姉も! お稲荷様も!】


【彩桜……そうだね!

 オフォクス ラピスリ、マディアの近くに!】


頷いたオフォクスが連れて術移。

人世への道に入った。


【ドラグーナ! 繋いだままでねっ!】【勿論!】



―・―*―・―



 掘り出してもらえたアミュラはカリーナ火山を囲む結界に込めた意思塊から記憶の写しを貰い、カーリザウラ(カーリカリュー)カイダクル(カイカリュー)の話を聞いて、救世主達(ユーレイ探偵団)の所に戻った。


【アミュラ様、いかがでしょうか?】

ソラが水晶玉を差し出した。


【戻ってたのかっ!?】【悪いのかい?】

【いえいいぃぃえっ!】


賑やかな救世主(ユーレイ)達と話しつつ保護しているルサンティーナを確かめ、神世の反対側の状況を確かめて、月にも神眼を向けたアミュラは保護珠とユーレイ達を纏めて月へと大術移した。



―・―*―・―



【えっ!?】【ん?】似たり寄ったり一斉。


月と人世の中程でドラグーナ達は止まって振り返った。


【とんでもない大神様!【戻ろ!】】


ドラグーナがオフォクスとラピスリを連れて豪神速で飛んだ。


【ね、青生兄。拾知マトモなってない?】

【なったみたいだね。雑音が消えたよ】

【うんうん♪ スッキリした~♪】

【いらしたのはアミュラ様だね】

【と~っても強い女神様も♪】

【ユーレイ探偵団もだね】

【うんうんっ♪】


月に戻ると、遠くに見えている集まりへとオフォクスが術移。



――【やっぱりアミュラ様だ~♪】【来たかい】

【うんっ♪ 俺また来た~♪

 でも俺コト知らないアミュラ様?】【いいや】

【結界アミュラ様は!?】【消しゃあしないよ】

【そっか~♪】【記憶の写しを貰っただけさね】


「いいトコに戻って来たね~♪

 これからスッゴイ術するよ♪」

兎に戻っているイーリスタが両手に嫁でぴょんぴょんしている。


「強い神力を感じたんだよ」「はい……」

「真四獣神様に術とは……?」


「まぁ見てて~♪」

「見ているのなら囲み、力を貸しなさい。

 神だけでなく救世主達も」


美女神アミュラはラピスリにも微笑み、対面に立てと視線で指示をして詠唱を始めた。



―・―*―・―



 ザブダクルの魂内に張り巡らされていたオーロザウラの呪鎖が全て消えても呪の暴走は止まらなかった。


 何故……? まだ残っているの?

 だとしたら魂核!


カーリザウラは魂核へ、更に真核へと、背後で強くなっている浄化光に後押しされているかのように突き進んだ。



―◦―



【マヌルヌヌ様! カウベルル様っ!

 囲みが全て破壊されました!】


【慌てるでない。

 押し戻し、新たな壁を成すまでじゃ】

【では、お姉様。神力(ちから)を合わせましょう。

 マディアも護りましょう】


マヌルヌヌとカウベルルから強い光が拡がった。

それはドラグーナが成した自己再生する結界に神力を注ぎ、人神の神力では破壊不可能な防壁を成した。



―◦―



【兄貴!】

シルバスノーがゴルシャインに涙目を向けた。


ゴルシャインは目を伏せた。

【私達は全神力(ぜんりょく)でマディアと王の身体を保つのみ。

 今は……呼ばれる迄は動いてはならない】


【誰が呼んでくれるんだよ!?】


【……父様であろう】


【来て……くれるんだよな?】


【……父様は来る! 必ず!】


歯を食い縛り、目の前のティングレイスの身体と、すぐ外のマディアの身体へと命の欠片を放ち、詠唱を続けるドラグーナの子供達だった。



―◦―



《これがザブダクルの真核……?》


魂内の呪鎖を全て浄滅したと思っていたのに、魂核内にも細い細い呪鎖が張り巡らされていた。


 魂核内は不可侵な筈だよね?


普通なら有り得ない状況に愕然としつつも、呪鎖を浄滅しつつ進んだカーリザウラに呪の塊としか思えない真核が見えた。


《こんな……酷い……》《絶望したかカーリよ!》

《オーロ!?》《儂は滅されぬ! 浄滅無効だ!》







ザブダクルの真核はオーロザウラの呪に包まれていました。

それでもカーリザウラは諦めません。

誰にも知られない戦いは続きます。


誰も諦めていないんです。

だからこそ次へと進めたんです。



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