ユーチャリスを知らないマディア
異界のパラレルワールド・三界星との境界では楽しく交流会が続いていた。
『へぇ~、常務か♪
コッチにも会社くらいあるってぇ』
『だよなっ♪』
「んでソッチは何してるんだぁ?」
『『王太子だ♪』』「王太子だと!?」
『そんでもって俺達兄弟はアイドルだ♪』
「いや、王子なんだろ?
それに兄貴は? 王太子じゃねぇのかよ?
まさか王!?」
『いっぱい言ったなっ♪』
『俺達の国は二王制なんだ』
『だから兄貴も王太子だ♪』
『モチ、兄弟皆王子だよ♪』
『俺達側だけ輝竜ってアイドルもしてるんだ♪』
『いや俺達も輝竜してるし』
『ソッチは真面目な王子様楽団だろーがよ♪』
『子供生まれてからだったからなぁ』
「子供だと!?」
『『居るぞ♪』』
「じゃあ俺と みかんにも――」
『『ソッチもミカン!?』』
「そっか♪ ソレも同じなんだなっ♪」
―◦―
「「黒瑯、ワラワ達も紹介せよ」」
『『うわっ! 姫が双子!?』』
「じゃなくて、ただの姉妹だ。
コッチがオレの妻で静香。
んで、オニキスの妻な虹香だ」
『オニキスとは懐かしぃのぅ』「「およ♪」」
『来てたのかよ』『当然じゃろ』『お、おう』
「で、ナンで懐かしいんだ?」
『かつて三界の人々が竜は架空じゃと信じておった頃、クロは竜を連れて来た竜使いで、クロの竜をオニキスと呼んでおったのじゃ。
いずれもクロなのじゃがのぅ。
して、其方のオニキスは何処じゃ?』
「地星で炊き出ししてるんだよなぁ。
ブッ飛んだ時に大地震があってな」
『じゃあまた』『揺らしちまうな』
「けど戻さねぇとな。
だから料理の話に戻したいんだが?」
『『おう♪』』
―◦―
『へぇ~、悪い神様と戦ってるんだ~』
『俺達も闇の神と戦ったんだよ』
「戦い、終わったの?」
『『闇の神、可愛い神様なった~♪』』
「じゃあコッチも……そうなるよねっ♪」
『『なるなる~♪』』
「俺達も頑張る♪」
『『うんうん♪』』
「サクラ達も中学生?」
『個人授業で~♪』『とっくに卒業~♪』
「今は?」
『『ナイショ~』』もじもじ×2。
『コイツら竜宝学博士で』
『天竜王子で魔竜王だ♪』
『『ハク兄てば!!』』
言うだけ言うとWハクは笑って離れた。
『『んもぉ~』』『『牛か♪』』
『『クロ兄!』』Wクロも笑って離れる。
『『クロ兄だってお殿様じゃないのっ!』』
「スゴいねっ♪」
『『王の子に生まれただけだよぉ~』』
―◦―
『獣医師なんだね♪
俺も竜の医師だから獣医師なのかもね♪』
『俺は人界では獣医師だよ。
ハク兄さんが人の医師をしているんだ』
「白久兄さんは医学科を出たけど、今は建築会社の常務で支社長なんだ。
そっちの道で人助けしたいって」
「言うな青生! 恥ずいだろっ!」
「最近は医師としても呼ばれているけどね。
あとは演奏家として兄弟揃って二足の草鞋を履いたところなんだ」
『俺達も各々兄弟で音楽活動をしているよ』
『その時は『輝竜』というグループ名でね』
「本当にパラレルワールドなんだね……」
『『感慨深いよね……』』
―◦―
「何時でも、如何なる戦いでも闘いでも共に居られる様に、か……。
力が湧く良い話が聞けた。有難う」
『戦いも闘いも易々とは終わらぬ』
『しかしその時とは、アオと共に居られる幸せな時でもある』
「確かに」大きく頷く。
『『共に努め続けよう』』
「これからは見えずとも共に」
Wルリも大きく頷いた。
―◦―
『助けてくださる方々がいらしたので』
『お話しはそこまでにしてください』
「ええっ!?」「増えた!?」
『俺達が押し戻すのを後押しし』
『俺達を引き戻して頂くんです』
「ちっちゃカワイイのもいっぱいいる~♪」
『小さくても超越者様方なんです』
『とても頼りになる方々なんですよ』
『『では皆は位置に!』』『はい!』兄弟一斉。
天竜達は陽の側に横一列に並んで境界に両手を突いた。
『地星の皆様は神力を高め、地星が元の位置に戻ろうとする力を後押ししてください』
『高まったと感じたら直ぐに始めますので』
「それじゃみんな~、めーいっぱいねっ♪」
『『では、行きます!!』』
―・―*―・―
封珠の中では、マディアが目覚めないまま、ティングレイスまでもが気を失っていた。
妻達は詠唱を続けながら命の欠片を込め続け、心話で互いを励まし続けていた。
〈また『黒いの』が出てしまったのですね……〉
〈きっとそうね。
これからも起こるのだから私達が頑張らなければね〉
〈そうですよね! 早く出なければ。
出られるようにならなければ――〉〈ん……〉
〈〈マディア!!〉〉
〈えっと……あ♪ コレ解けばいいんだね♪〉
〈誰と話しているの?〉
〈黒いの……見~つけた♪ こうね♪ うん♪〉
〈ねぇマディア?〉
〈えっとね~、僕かなっ♪
僕の声で指示が聞こえるの♪
エーデ、この話し方でいい?〉
〈いいわよ♪〉
〈コッチがエーデなんだねっ♪
うん♪ 大好き♪〉
〈もしかしてユーチャが分からなかった?〉
〈ごめんなさ~いユーチャ姉様ぁ〉
〈謝らないでね、マディア〉〈ありがと♪〉
〈マディア、起きていられる?〉
〈ん~~、わかんない。
とっても消耗してる?
なんかそんな感じなの。眠いの〉
〈そうなのね……〉
〈グレイさん?
重なってるのグレイさんだよね?〉
〈そうよ。マディアを支えてくれていたのよ〉
〈そっか。黒いのが眠らせたんだね?
グレイさん起こさなきゃ寝ちゃダメだよね〉
〈マディア、無理はしないで……〉
〈ユーチャ姉様ど~して?〉
〈それは……疲れているのでしょう?
グレイもきっと同じなのでしょうね〉
〈そっか~♪ じゃあ おやすみなさ~い♪〉
(ユーチャ?)
(私は幼い頃、二度も禍に触れてしまって、二度ともマヌルの里に預けられました。
二度目に滝に戻った時、初対面だったマディアは……7歳でした)
(そう……ユーチャを知らないマディアは……もう猶予は無いのね……)
―・―*―・―
イーリスタ達は ずっと全力で押し続けてくれている天竜達を心配しつつも、神力を高めて維持するのに必死になっていた。
アオ兄とルリ姉の翼、おっきくて
真っ白キラキラで、と~ってもキレイ♪
サクラの翼は桜吹雪? 舞ってるよね♪
じゃあフジ兄のは藤の花吹雪?♪
それとも紫の火の粉かなっ?♪
アカ兄の翼は真っ赤な炎♪
キン兄のは金ピカキラキラ雷ビシバシ♪
ハク兄とクロ兄の翼、ちっちゃくて可愛い♪
ちゃんと翼も白と黒なんだ~♪
み~んな鳥さんの翼なんだねっ♪
彩桜はドラグーナの内で気を高めつつ、天竜達を見ていた。
もっと話したかったな~。
ちっちゃ可愛い竜、触りたかったな~。
三界星に行きたかったな~。
サクラ達……俺、友達なってって言えてない!
気付いた彩桜が思わず前のめりになった その時、天竜達の手がズブッと壁を突き破ったように見えた。
どうやら見えない壁になっていた境界が消えたらしかった。
アオが何かを投げた。
また壁が出来たらしく、皆が両手を突いた。
飛んで来たのは壺だった。
『今、出来た境界は俺達を包むものです。
今度は俺達が異物ですから。
その壺は集縮。
中に色々と入っています。
説明書きも手紙も。
俺の声を届けているのは千里眼。
壺の括れに結び付けている腕輪です。
あまり長くは話せないと思いますが。
もう地星は元の位置近くに居ます。
あとは地星自身が戻ろうとする筈です。
もう少しだけ地星を後押ししてください。
では、俺達は引き戻してもらいます。
本当に……会えて良かった』
天竜達が手を離した。
「じゃあアレ、陽なんだ~♪」
『そうです。皆様の陽です』
『『彩桜~♪ もぉ俺達、友達だよねっ♪』』
「うん! うんっ!!」
『『良かった~♪ また会お~ねっ♪』』
「うんっ!!」
『それじゃ兄貴達♪『せ~のっ♪』』
『今は~遠く~離~れてるけど~♪』天竜合唱♪
輝竜兄弟が笑顔を交わし合う。
『「僕達は~この宇宙で~♪
繋が~って~る~ん~だ~♪」』皆で合唱♪
大きく手を振る天竜達はどんどん小さくなって、見えなくなった。
「みんな! まだ地星は動いてるよ!
あと少し、頑張ろ~ねっ♪」
「はい!」一斉!
可能な限り揺れないように、でも速く。
地星は元の位置に戻ろうとしています。
短い交流でしたが、どちらも皆、会えて良かったと思っています。
そちらは良いのですが、マディアの猶予が……もう無いと言っていい程しかありません。




