とうとう都に
また夜が明けた。
「マディア、今日からは都だ。行くぞ」
グ~ス。乗れと身を低くする。
神世の都は王都を中心としてすぐ東に副都、同じくらいの近さで南西に大都、その3都を囲んで東西南北に小都が在る。
もうマディアではなくなった禍龍が最初に瞬移した先は南小都だった。
ザブダクルは気付いていないが、禍龍は降下しつつ瞬間的に都を丸ごと複製具現化して地下に人神ごと沈めて結界で蓋をしていた。
ただしそれは手順だと覚えているからで、助けよう等と考えての事ではなかった。
そもそも身体のみ。考えるという事は出来ない。
都が迫り、激突寸前で瓦礫が重なるだけの荒廃した地になった。
反転して浮いて吼える。
「跳ねて壊すのは、もうせぬのだな?」
ぎゅす。瞬移。
――瞬移して出ると、禍龍を操る魔の正面に黄金と白銀と灰色の龍達が現れた。
「マディアにンな事させんなっ!!」
「邪魔立てしようと言うのか?
マディア、攻撃せよ!!」
禍龍が天に向かって吼えると、雷撃が激しい雨の如く無数に降り、都にも落ちようとしていた。
「輝天包囲!!」「風嵐龍牙!!」
ゴルシャインが都を護り、シルバスノーが術風で雷撃の向きを変えて都の外に散らした。
次撃に備えて身構えた。が、何も来ない。
「マディアもうヤメて!!」
サーブルが禍龍を抱き締めていた。
きゅ~るる……。
禍龍が鼻先にあるサーブルの頭を撫で、鼻をすり寄せて瞬きすると、瞳が青に戻った。
「マディア、聞こえてるんだよね。
一緒に帰ろうよ。滝でも里でもいいから」
きゅる、きゅるるる。
「うん。僕もマディアが大好きだよ」
きゅる――「許さぬ……許さぬぞ!」「え?」
「マディアは儂だけのものだ!!」
怒りに突き動かされたザブダクルがマディアの背に強い支配を込めた。
咆哮を轟かせるマディアが暴れ、サーブルは弾き飛ばされてしまった。
体勢を崩したサーブルが禍に包まれる。
即座に兄達が放った浄破邪が達したが、サーブルは落下した。
【私が追う! 奴を!】【任せろ!】
降下して追ったゴルシャインがサーブルを抱き止めて浄破邪で包んだ。
【このまま運ぶ! 深追いはするな!】瞬移。
「黒い身体……赤い目……マディアをマディアじゃなくしやがって!!」
悔しさで視界が歪み、滲む。
「俺達兄弟全て!!
お前を絶対っ!! 許さねぇからなっ!!
破邪雷輝連撃!!」
禍龍とザブダクルは消え、シルバスノーは禍に包まれた。
《兄様ありがと……ごめんなさい……》
そんな声が聞こえた気がした――
―・―*―・―
「や~っと道が直った~♪」ぴょんぴょん♪
「「イーさま嬉しそ~♪」」ぴょんぴょん♪
「オフォクス ドラグーナ♪ お待たせ~♪
シッカリ休めたかな~?♪」
「手伝わせたではありませんか!」
「まぁまぁオフォクス」あははは。
「だって~突貫だったし~、揺れたでしょ?
だから壊れたんだと思うんだよね~。
でも崩れるの、入る前で良かったね~♪」
「儂は入っておったのですがっ」
「そ~だったね~♪」あはははっ♪
「「ラピスリど~したの?」」ちょん。×2。
「いや……何も……」
「道の向こ~から何か感じてるとか?♪」
「何やら……いえ、確かめたいですね」
「それじゃ行ってみよ~♪」ぴょんぴょん♪
【【待てコラ兎野郎!!】】「あれれ?」
シルバーンとコバルディを先頭に、子供達も続いて飛んで来た。
「兄様、何かあったんですか?」
「「俺達も連れて行け!」」「いいよ~♪」
「ワラワ達も」「行きたいのじゃ」
「うんうんいいよ~♪」
「アーマル様はすっかり回復しました。
僕はそれをお伝えしに来ただけ――」
「「ジョーヌも行くのじゃ♪」」
両側から姉達に確保された。
「ジョーヌも来ればよい。出勤扱いとする」
ラピスリも笑っている。
「それじゃホントに出発しよ~♪」
今度こそ道に入って行った。
―・―*―・―
シルバスノーが目を開けると、心配そうなゴルシャインの顔があった。
「兄貴……すまねぇ」
「いや。単独にして すまなかった。
暫くは安静にな」
「また行くのか?」
「そのつもりだが、サーブルの意識が戻るのを待ってからだ」
「サーブル、悪いのか?」
「無理を押して出て行こうとするので眠らせた。
それだけなのだが、次に目覚めたならば説得せねばならぬのでな」
「マディア――いや、魔は?」
「小都は全て破壊された。
しかしマディアは人神達を地下に保護し続けている。
支配されようとも、意識が無かろうとも、やはりマディアはマディアだ」
「そっか……」
瞼を閉じたが涙が流れてしまった。
―・―*―・―
「もうほら♪ すぐそこだよ~♪」
「近いんですね」「ふむ」
「境界が地星を中心にしてるから~、月から地星の反対側に道 伸ばしたんだ~♪
あ♪ ここが終点だよ~♪」
掌ぺったん♪
「アオ~♪ 来たよ~♪」
遠くで振り向いた瑠璃鱗鳥翼の天竜が飛んで来た。
『ご無事で何よりです。
今回は大勢なんですね。
お会い出来て嬉しいです。
俺は三界域の天竜、アオです。
皆を呼びましたので少々お待ちください』
「は~い♪
ドラグーナ♪ バラバラでヨロシク~♪」
「え? 輝竜兄弟に、という事ですか?」
「そ~そ~♪ 僕の背にねっ♪
で、頭の上に色とりどりドラグーナねっ♪」
と、話している間に、わらわらと色とりどりの天竜達が集まって来ていた。
「俺の神力鱗と同じ色……?」
「だから早く~♪
えっと~、アオ? み~んな双子?」
『そちらの言葉も収集しましたので類義語に訳しますが、三界星に関しての詳細を異界のパラレルワールドな地星の方々には話してはならないそうなんです。
どうにも、もどかしいのですが、最も近いパラレルワールドの俺達なんです』
「ソッチもパラレルワールドなんだ~♪
面白~い♪ どっちもアオなの?♪」
『はい。違いが少しはあるんですけど、同一人物が居るんです。
その空間を押し返すのには、とても大きな力が必要ですので、来てもらったんですよ』
「じゃあ輝竜兄弟とご対面~♪」
鳳凰イーリスタが背を向け、輝竜兄弟が振り返った。
各々の頭上にドラグーナが浮かぶ。
『俺達だ~♪』早速Wサクラが人姿に♪
「俺が2人もいる~♪」彩桜も大喜び♪
「はいは~い♪
み~んな道から出て散らばってね~♪」
見えない壁から道の口を少し離した。
『皆、話は手短にね』
三界側に指示しているのが聞こえた。
「え? 急がなきゃダメ?」
『はい。調査した結果、そちらの空間が位置情報の記憶を保っている間に戻さないといけないと判明したんです』
「そっか~。ザンネン!」
『イーリスタ様、此方を向いてください』
「ん?♪」
『風竜星、鳳凰王国のイーリス王とミルキーチェリー王妃、マディアン王子です。
王妃は光闇星の光竜なんです』
「僕のお嫁ちゃん、ミルキィとチェリー♪」
「「はじめまして♪」」
「来てないけどマディアって子も居るんだ♪」
『やっぱり。そう思いましたので、お呼びしたんです』
『おいアオ、あれ……』『え?』
「うわ~♪ シルコバも居る~♪」ぴょん♪
姿は鳳凰、動きは兎。
『「「変な略し方するなっ!」」』
「揃った~♪」ぴょんぴょん♪
『始祖様もパラレルワールドの龍神様とお話しなさってくださいね』
さっきまで騒いでいたイーリスタは、もうイーリス王と話していた。
サクラが消え、黄竜と白狐を連れて戻った。
『ジョーヌと孤狐おじちゃま♪ でしょ?♪』
『僕……鏡みたい……』『押すなサクラ』
「え……鏡ですね……」「儂は若いのか?」
『孤狐おじちゃま再誕したの~♪』「ふむ」
Wキンと金錦は地星の歴史について、Wアカと紅火は人工衛星について、Wフジと藤慈は薬草と植生について静かに、しかし心底 楽し気に話していた。
―・―*―・―
ザブダクルは大都に向かわせようとしていたが、マディアが失速して落下したので岩壁の上に戻って休ませていた。
「マディア? どうしたと言うのだ?」
細く開いた瞳がザブダクルを捉え、頭を上げようとしていたがポスンと落ちた。
「今日はもう休んでよい」
口が少しだけ動いたが鳴きも出来なかった。
ザブダクルは動かなくなったマディアを撫で始めた。
―◦―
オーロザウラはザブダクルの魂内で隠れていたが、闇禍は去ったらしいと ようやく確信して出、呪鎖を確かめ始めた。
また止まってしまっただと!?
何度 発動しても止まるとは
この呪……不完全なのだな?
早急に完成させ、強化せねばならぬな。
《させないよ。何度でも止めるからね》
《その声……何故 話せる!?》
《もう僕の神力は使わせない。
オーロの言いなりにはならないよ。
僕の神力で生まれたザブダクルは僕の子なんだからね》
《ザブダクルは儂の子だ! 愚かな傀儡だ!
お前も同じだカーリ!
ただの神力塊だ! 儂の神力だ!》
《修行を疎かにしたオーロには負けないよ。
僕は光。浄滅してあげるからね!》
ザブダクルの魂内で静かな戦いが始まった。
マディアの身体はマディアの魂と繋がっている時は『マディア』と、そうでない時は『禍龍』と表記します。
m(_ _)m
月からの道を通ったドラグーナ達は天竜達と会えました。
オーロザウラは闇禍から隠れていたようです。
その間に神力源としていたカーリザウラの魂片が目覚めて、とうとう反撃を始めました。
カーリが勝てばザブダクルも正気に戻るのでしょうか?




