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支配で動く暴走禍龍



 オパールとエメルドがマヌルの里に戻ると、意識を取り戻したティングレイスがマディアを助けに行くと騒いでいた。


「何があったのか話してくれ!

 俺達も行くからっ!」


「マディアが! マディアの身体がアイツの術を受けて、魂が気絶してるんです!

 身体の方はパンパンに膨らんでた支配と禍を吸収して暴走してるんです!

 吸収しないように頑張ってたのに!」


「だから細くなったんだ……」

ゴルシャインとサーブルが戻っていた。


「グレイさんは万全じゃないんだから、みんなから命の欠片を貰って保ってて!

 マディアのトコには僕達が行くから!」

エメルドが泣いているサーブルを支えて叫んだ。


「でも!」


「僕達はドラグーナの子!

 マディアの兄弟だから!」

ユーリィもエメルドに並ぶ。


「手分けをする!

 エメルドとユーリィは滝へ!

 滝は放置し、兄弟全てを此方に!」


「「はい!」」


「オパールは此方の指揮を!

 術と命の欠片を絶やさぬよう!」


「はい!」


「シルバスノー、行くぞ!!」「おう!!」



―◦―



「マディア?」


返事か否かは不明だが低く唸った。


「もう苦しくないのか?」


大きく息を吐いた。


「先程は話しておったであろ?」


返事は無い。


「マディア、話してくれぬのか?」


降下を始めた。


ザブダクルが下を覗き見ると街が在った。


勢いを増して降下した禍龍は一瞬で街を消して反転。上昇した。


「マディア……」らしくない……。



―◦―



 ゴルシャイン達がその街跡に着いた時、禍龍は空遠くに小さくなっていた。

付いて来たサーブルが地に掌を当てる。


【サーブル何を?】


【皆さん居ます! やっぱりマディアは地下に皆さんを逃がしてから破壊してる。

 支配されてもマディアなんですよ!】


【ならば何としても助けねばな】


【はい!】【モチロンだ!】



―◦―



 最初の街と同様に次々と破壊した禍龍は苦し気に口を開けて肩で息をしていた。


「まだ苦しいのか?」


答えてくれるとは期待していなかったが、そう尋ねて背を撫でていると、黒々とした鱗の隙間から黒煙のような瘴気が立ち昇った。


それは禍そのもので、神力の強いマディアの身体なので禍隷臭(かれいしゅう)も伴っていたが、操禍(そうか)を持つザブダクルには その臭気は感じられなかった。


「マディア戻れ。今日はもうよい」


低く鳴くと瞬移した。



―◦―



 マディアを追っているゴルシャイン達は、乱暴に地下に閉じ込められてしまった人神達と話して禍を生まないように頼むのを優先せざるを得なくなっていた。


【マディアを助けたいのはヤマヤマだが、コレはコレで放っとくと大変な事になるよなぁ】


【禍が増え、皆が滝から離れられなくなってしまう。

 そうなれば王もマディアも助けられない】


【解ってるよ。解っちゃいるんだがなぁ……。

 ったく人神てぇのは、たかがこんだけの事でオタオタしやがって!

 禍がどんどん滝に飛んでくじゃねぇかよ!

 話が違うとか、っせーんだよ!!】


普通心話で地下の人神達と話しつつ、ゴルシャインとシルバスノーは獣神秘話法で話していた。



―◦―



 岩壁の上に戻った禍龍は、白い塗料が着いた瓦礫を暫く見詰めていた。

が、おもむろにクルンと丸まって眠ってしまった。


「マディア、治癒を――」


顔を上げも、目を開けもせずに自身を治癒で包んだ。


「そうではなく儂に――」


もそもそスルスルと頭の位置を高くしているように動き、とぐろを巻いている状態になると、ようやく目を開けた。


感情の感じ取れない暗赤の瞳が見下ろす。


手が上がり、指差すように止めると、治癒光が迫ってザブダクルを包んだ。


 ああ……やはりマディアの治癒だ……

 優しい治癒だ……ん?

 治癒を重ねてくれたのか? しかし何故?


理由を考えていると、心地よさに目を閉じていたのに気付いた。

開けると次の治癒光が迫っていた。


また心地よさに目を閉じる。


そうして浸っていると、また飛んで来た。


今度は待ってみる。やはり飛んで来た。


 これは? 一定間隔で? 何故?


また飛んで来た。



 目を開けると赤い瞳が揺れたような気がした。

黒いマディアの姿に、遥か過去に最後に見たルサンティーナの姿が重なる。


真っ黒なローブで その身をすっかり包み、目の位置の小さな穴から暗赤の瞳だけを覗かせていたルサンティーナの姿が揺れて霞んだ。


涙が頬を伝う感触がして慌てて顔を(そむ)けた。


「もう、よい……」


ズグッと重めの音がしたので思わず目を向けると、マディアが崩れて眠っていた。


「無理をさせてしまったか?」


返事は無い。


「何か言ってくれぬか?」


小さく鳴いた。


「話してはくれぬのか?」


重そうに頭をもたげて傾げる。


「エーデラーク」


更に傾げ、自分への指示ではないらしいと眠りに戻った。


「エーデラーク……」

また涙が頬を伝っていた。



―◦―



 ゴルシャインの指示で禍の滝に戻ったエメルドとユーリィは、ドラグーナとオフォクスからの手紙を運んで来たユーレイ犬ショウと出会った。


ルビーナも加わって話し、禍の滝に残っていた龍神兄弟は、ショウを乗せたエメルドを先頭にマヌルの里へと出発した。



―◦―



 禍龍の治癒で随分と元気になったザブダクルは、すっかり暗くなって暫く経っても眠れず、目を閉じればマディアとルサンティーナの笑顔ばかりが過ってしまい、どうにも居たたまれなくなっていた。


 あれはマディアの抜け殻だ。

 儂がエーデラークと呼べば

『はい、ナターダグラル様』と

 飛んで来てくれるのがマディアだ。


 マディアに会いたい……

 ルサンティーナの瞳の如き碧鱗を

 煌めかせて飛ぶマディアに……。


 そうか! マディアは此処だ!


封珠を取り出して覗き込んだ。


 マディアの魂ならば答えてくれる筈!

 マディアは何処だ?


 白い龍が向かい合って魂を抱いておる?


 魂が1つだと!?



―◦―



「ねぇグレイ。マディアと重なったりして大丈夫なの?」


〈はい♪ エーデリリィ姉様♪

 重なれて僕、とても嬉しいです♪

 マディアは身体とは切れているんですよね?

 だったら僕の身体に込めて頂いてる命の欠片を分けないとマディアが消えてしまいます。

 だから僕がマディアを支えます♪

 支えたいんです♪〉


「ありがとうグレイ。

 マディアの身体から支配と禍が伝って来ていたから私が切ってしまったのよ。

 ごめんなさいね」


〈いいえ♪ 僕、嬉しいから大丈夫です♪

 欠片だけじゃなく、いろんな声で術も頂いてるんですよ♪〉


「え? 術を?」


〈はい♪

 ダグラルさんのとは少し違う術です♪

 あっ、ダグラルさんも ありがとうございます!〉


「もしかして……獣神用の術!?」


「でしたら私が外殻に行って覚えて参ります!」

ユーチャリスが飛んだ。

「エーデ姉様! 一緒に唱えましょう!」


「ありがとうユーチャ!

 そうね。獣神用の術ならマディアにも効くかもしれないわよね……」


〈効きますよ!〉

〈ん……グレイさん? エーデ……?〉


「〈マディア!〉」


〈僕……眠……黒いの、じゃ、なく……眠ぃ……〉


〈寝てもいいけど頑張ってね?

 ずっと一緒だよ、マディア〉


〈ん。グレイ、さん……〉



「眠ってしまったわね。

 マディアの記憶は今どの辺りなのかしら?」


〈ええっと……自分で込めて解いてを繰り返しているみたいです。

 マディアって器用だから〉


「グレイと出会った時って?」


〈僕が滝に派遣された時、マディアは18歳だったと聞きました。

 アーマル様は30歳で、他の御子達は上が23、下が19歳だったとか〉


「よく覚えているのね」


〈ユーチャに解いてもらった記憶からです。

 でも僕の記憶ですよね♪〉



―◦―



 残っておる魂はマディアか? 王か?


 マディアが消えてしまったのか?

 だから話してくれぬのか?


 この抜け殻……従順ではある。

 ならばこのまま破壊神として――







もうマディアではなくなった禍龍は暴走魔ザブダクルの支配に込められていた指示で動いています。


ザブダクルを呪で縛っているオーロザウラは?

静かになっているのには理由があるんですけど、もう少し後になります。



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