成長させる術
唐突に尾を強く引っ張られたウンディは思わず目を閉じ、恐る恐る開けると――
「ととととと父様!?」
――ドラグーナが苦笑していた。
ドラグーナは気絶したままのアーマルを抱えており、背では兎なイーリスタとミルキィ・チェリーが爆笑していた。
【全く! 何処までも馬鹿なのだな!!】
の声と共に後ろから殴られた。
「ってぇなぁ、瑠璃ぃ~」
【あんな危険な場所で兄様を気絶させるとは馬鹿以外に何だと言うのだ!】
「ちゃんと抜けられただろーがよぉ」
【父様が空に居なければ、あの勢いで地に激突していたのだぞ!】
【ラピスリ、その辺りにしてあげてね】くすっ♪
ドラグーナが瑠璃鱗に変わり、子供達を治癒光で包むと『下に戻ろう』と手で示した。
―・―*―・―
「本当に成長を促進する術なのだな?」
いくら命の欠片を込めてもマディアがジワリジワリと退行していくので、とうとうゴルシャインはザブダクルの縄を解くと決めた。
「この身体の持ち主の記憶では確かに成長させる術だと……何度も使ったと……」
「その身体も奪ったものなのか。
マディアを従える為か?」
「いえ……ですが、そうなるのかも……」
「マディアを救いたいと思っているのは伝わった。故に解く」
【シルバスノー、王を此方に】【おう】
ティングレイスを囲む龍達が現れた。
「先に王に。退行が速いのでな」
ザブダクルが頷いたので神力封じの縄を解いた。
「捕縛鎖は残すが、術に支障は無いだろう?」
「はい」唱え始めた。
―◦―
「ダグラル! 本当なの!?」
「は、はいっ!
あの術は王子達に使ったもの。
幼児にしか効きませんが、再誕した者が一気に身体を成長させる為の術です!」
「それなら……安心ですね……」
「それで王子達はイキナリ青年だったのね。
何も学ばせず……此処から出たら、それもしなければね!」
「はい……申し訳ございません……」
「謝ってないでダグラルも唱えて!」
「はいっ!!」
―◦―
「――ティングレイスに昇齢煌拡卽!!」
光に包まれたティングレイスが大きくなった。
龍達から歓声が上がる。
「ん? けど……退行は止まってねぇぞ!」
「術を重ねろ!」
「マディアは――」「「後だっ!!」」
ザブダクルは再び唱え始めた。
―◦―
「――昇齢煌拡卽!!」
「何も起こりませんね……」
「神力不足かしら?」
「そのような――もしや!
対象は身体のみなのでは!?
王子達の中身は幼児のままでした。
魂には効かないのでは……」
妻達の涙を見て尻すぼみに。
「ですが、ザブダクルの時は魂が少し大きくなりました」
「そうなると身体側からなら魂にも少しは効果があるのね……だったら! この糸を掴んで唱えて! 早く!」
「はいっ!!」
―・―*―・―
ドラグーナ達がキツネの隠し社に戻ると、オフォクス・トリノクスと四獣神の狐と龍の子供達は先に戻っていた。
【トリノクスは?】
【部屋で休んでいます】
【良かった。まだ無理をしないように言ってあげてね】
【それは父様も同じです】
【皆もだよ】
【はい。では】【ありがとうございます】
ドラグーナ達の無事を確かめたので、子供達は部屋や仮職域に行った。
「ウンディ、アーマルを頼んだよ」
「へ? 父様は?」
「俺達は地星を元の位置に戻しに行くからね。
オフォクス、ラピスリ。一緒にお願いね」
「当然だ」「はい」
「ただ見とくだけかぁ?」
「当然、治癒だっ!」バシッ!
オフォクス呆れ顔、ドラグーナ苦笑。
「ってぇなぁ。で、チユ?」
治癒は神として当然ではなかったのか?
「もういい!」【オニキス】
【ラピスリど~したぁ?
オレ、炊き出しに戻ったから暫く離れられねぇんだが?】
【ふむ……ウィスタリア兄様は?】
【人神達の指導してると思うぞ?
虹香と静香なら食ってばっかだが?】
【キツネの社に頼む】【おう♪】
直ぐに
【ラピスリ殿♪】【見つけたぞ♪】
隠し社に直接来た。
【申し訳ございません。
治癒をお願い致します】
【およ? 何があったのじゃ!?】
【もしや敵神と戦ぅたのかっ!?】
「いや~、俺が蹴っちまったんだよな~♪」
【【何故っ!?】】
「いやぁ~」あははは。
【ごゆるりと問い詰めてください。
仕置きもご存分に】
【【確と心得たぞ】】
【私共は月に行って参りますので】
【【うむ。達者でのぅ】】
「思い出したぞ! 治癒だなっ♪」
「「馬鹿なのかの?」」アーマルに当てながら。
「よく言われるぞ♪
けどさっきのは瑠璃に殴られ過ぎただけだ♪」
「「然様か……」」溜め息×2。
―・―*―・―
「――昇齢煌拡卽!!」
ティングレイスの魂が少し大きくなって光を帯びた。
「成功ですねっ」
「これを続ければ消滅は免れられるわ。
ダグラルさん、頑張れる?」
「はい! 全神力で!」
「もう一度グレイにお願いね。
マディアは……外の弟が時を止めてるみたい」
「そんなことができるのです?」
「そうとしか思えないのよ。
全く動かないの……」
―◦―
ザブダクルが重ねに重ねて唱え終えると、ティングレイスは青年に戻った。
しかし退行は止まらない。
「そろそろマディアに……」
「ふむ。少し猶予が得られただろう。
マディアの『時』は固定していたが、そろそろ その限りが来る。
頼めるか? 試しに唱えたが、術者は人神でなければならぬようだ」
「唱えさせてください!」
「では頼む。
エメルド。マヌルの里に行き、同種の術を聞いて来てもらえるか?」
「はい!」大瞬移!
マディアが縮み始めた。
「限りが来たらしい。急いで頼む」
頷いたザブダクルは祈る思いで唱え始めた。
―・―*―・―
「イーリスタ様、月に着きましたよ?」
「すっかり眠っておるな……」
「ミルキィ、チェリー。起きろ」ゆさゆさ。
「ん……」「え……「ラピスリ♪」」
「イーリスタ様を起こしてくれ。
入口が分からぬ」
「「イーさま♡」」ちゅ♡×2。
「まだ寝させてぇ~~」「起きろ」ポコッ。
「んも~、オフォクス乱暴~」もそもそ起きた。
「次の道を――」【父様!】【兄様!】
わらっと現れた。
「父様、復活なされたのですね!」
「兄様お帰りなさい!」
「うん。もう大丈夫だからね」にこにこ♪
「無茶ばかりして言う言葉か」フン。
「オフォクス様、父をお願いしますね」
「当然だ」フン。
「兄様、嬉しいのですね♪」フフッ♪
「煩い」フンッ。飛んで行く。
「それじゃあ、地星を元の位置に戻しに行くから、揺れたら地を支えてね」
「はい!」一斉♪
「ちょっと行くだけだからね」
〈オフォクス~、ソッチじゃないよ~♪〉
「其れを早く言ってください!」術移で戻った。
「コッチだよ~ん♪」ぴょんぴょんぴょん♪
―・―*―・―
「――マディアに昇齢煌拡卽!!」
「おい、何も起こらねぇぞ?」「いや待て」
マディアの身体がビクン、ビクンと跳ねる。
膨らむかと思いきや、逆に萎んでしまった。
「おいっ!!」
「もう一度!! 機をお願い致します!!」
「シルバスノー、悪意は無い。
様子を見よう」
「ったく! 今度こそだぞっ!」
成長させる術はティングレイスには効きましたがマディアには効きませんでした。
しかも効いても退行は止まりません。
小さく小さくなっているマディアは助かるのでしょうか?
並行して動いている地星を元の位置に戻す班は月に着いたばかり。
ユーレイ探偵団は神世の地に着いたばかりでしょう。
まだまだ全てが進行中ですが、全てを元通りに――いいえ、元より良くしなければ災厄は終わったとは言えないとドラグーナ達もユーレイ達も考えています。




