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猶予の無さを痛感



「マディア?」


〈なぁに?♪〉


「眠っていないのならいいわ」


〈さっきも出たよ。でも封印♪

 グレイさんの待ってるの。

 僕が貰って封印できるかな~って♪〉


「魂を……重ねているの?」


〈うん♪ 少しだけね♪〉


ティングレイスは恥ずかし気に頷いた。らしい。


「早く此処から出て、解いていただかなければならないわね」


〈コレって呪なの? 禍の呪?〉


「だと思うの。でも知らない呪なのよ」


〈そっか。じゃあ浄破邪も強めないとね。

 呪を弱らせるくらいは出来るよね?〉


「そうね。それなら私にもさせて?」


〈うんっ♪〉


エーデリリィもマディアが少し小さくなったような気がしていた。


 眠らなくても、黒い塊が現れただけで

 少し噛られてしまうのかしら?


浄破邪を当てつつ、命の欠片を込めた。



「マディア……記憶――」

欠片を込めていて尾に触れてしまった。


〈うん。黒い塊が食べちゃうんでしょ?

 食べるのに静かにさせたくて、僕達を眠らせようとするんでしょ?


 僕の知らない僕がシッポに記憶の写し置いてるの見つけたんだ。

 触ろうとしたら『身体に戻ってから!』って伝わったよ。

 だから僕、今の記憶もずっとシッポに写しを残してるんだ。


 エーデって……僕の奥さんなんだよね?

 僕、ホントは成神(せいじん)なんだよね?〉


エーデリリィが躊躇(ためら)った後、頷いた。


「その通りよ。でも落ち込まないでね?」


〈うん。大丈夫〉淡く姿を成した。


「マディア……」

嬉しい反面、猶予の無さを痛感した。


涙が頬を伝う。


互いの涙を見て、どちらも慌てて笑顔を作った。


〈噛られた分も後で元通りに出来るから、僕は大丈夫だよ。

 エーデも悲しまないで。ね?〉


「マディア……」


〈僕は滅されたりなんかしないよ。

 グレイさんも助けるからね〉


〈ありがとうマディア。

 僕もよく分かったから頑張るよ。

 ユーチャを護れるくらいになってみせる。

 記憶なんて無くても、今の僕もユーチャが大好きだから〉

静かに聞いていたティングレイスも淡く姿を成して微笑んだ。


「グレイ……もしかして記憶……」


〈まだ赴任された後だからマディアもユーチャも知ってるよ。

 記憶の中の可愛いユーチャが美神に成長してるのが眩しくて、とっても嬉しいよ。

 次に喰われてしまったら知ってるのはエーデリリィ姉様だけかもだけど、残してもらってるのを解いてね?〉


「ええ。それも気づいてたのね?」


〈マディアの話を聞いていて確かめてみたんだ。

 ユーチャ、エーデリリィ姉様。

 ありがとうございます。

 僕も眠らされないように頑張ります!〉



―・―*―・―



 響が隠し社に戻った。瞬移も極めたらしい。

【ソラと私の代わりは狐儀様と奥様がしてくれるわ♪ ドラムも先生の姿で♪】


【狐松先生で!?】


【狐儀様って凄いのね♪】


【音神様だし。(みど)マーズだし。

 それに輝竜兄弟を育てたのは狐儀様だからね】


【キツネ様じゃないの?】


【実際に育てたのは狐儀様らしいよ。

 父がキツネ様、母が狐儀様って感じじゃないかな?】


【へぇ~♪】【サイオンジ♪】尻尾フリフリ♪


【やぁ~っと終わっただぁよ】

トクと手を繋いでいる。


【ナンジョウさんも?】

呼ばれて来て即、抜かれている。


【トクと同じだぁよ。

 抜けたからよぉ、連れて行くつもりだぁ】

【なんだかお邪魔みたいでナンですけどねぇ】

欠片なので、もう抜き終わった。


【他の皆さんは?】


【キンギョにはコッチを任せる。

 だからトウゴウジが補佐だぁ。

 そんならホウジョウも残さねぇとなぁ】


【ヨシさんは?】


【堕神なんだとよぉ。夫婦揃ってなぁ】


【へ?】【タカシと同じ?】


【だぁよ】「そろそろ説明してもよいか?」

少し離れた所からキツネが睨んでおり、黒い狐(ガイアルフ)爽青の龍(フィアラグーナ)が笑っていた。


「はい!」揃ってピシッと姿勢を正した。



「先ずは神世までの道だ。

 案内を兼ねて途中までは神を同行させる。


 神世と人世との境、現世(うつしよ)の門の手前に神力射という大型武器が設置されておる。

 神の力に向けて追尾し続ける矢を放つものだ。

 皆も神そのものは内に居らぬが神力を持っておる故な、放たれるは確定だ。

 その矢を案内の神が囮と成り、引き付けておる内に通り抜けよ。

 現世の門は見えておる。

 真っ直ぐ全力で向かうのだ。

 以降は力丸とショウならば神世の地まで行けるのであろう?」


「はい。巡視経路でしたので」

「僕も思い出した~♪」


「ふむ。では次に、神世の地では――」

「ちょい話していいか?

 まだまだ頭に『?』が乗っかってやがるからな♪」

フィアラグーナが遮った。


「ふむ。敵神について、ですか?」


「だな♪ ある程度は聞いてそうだがな。

 だが戦うには情報は多けりゃ多い方がいいってのは常識中の常識だ。

 俺はドラグーナの父でフィアラグーナ。

 コッチの黒いのはオフォクスの父でガイアルフだ。


 敵は古の神ザブダクル。

 俺達には、この敵の知り合いな友が居る。

 その友から聞いた話をする。


 ザブダクルはカリューという大国の王だった。

 ルサンティーナという美神の妃が居た。

 だが、父オーロザウラに国を追われ、妃を奪われて、命を狙われ続けた。

 ザックリだが、それで性格がヒン曲がって全ての神に復讐し、神世を滅ぼすと決めたみたいなんだな。


 ソイツが今になって現れやがって、俺の孫マディアをムリヤリ従えてるんだ。

 マディアは魂を抜かれて封じられてる。

 だから従えてるのは身体だけだ。

 マディアの魂を封じた珠は奴の腹の中だ。

 だからって奴を滅するなよ?

 滅したらコロンと封珠が出てくるなんざ甘い考えだ。

 奴ほどの卑怯さなら封珠は道連れになるように縛ってる筈だ」


「それは確定なんですか?

 卑怯さもご存知なんですね?」


「いい質問だ♪

 俺は奴と戦ったからな。


 俺は堕神とされる前の状態で保魂されていた。

 4分割、ぶつ切りにされてな。

 マディアが逃げろと吼えたのを聞いて目覚めたんだ。

 助けに行かねばと、近くにあった他の欠片を集めて身体を成そうとしていたら、嫌がるマディアを連れて奴が来やがったんだ。


 中途だが俺は出て行った。

 で、マディアの魂と身体を繋ぐ糸みたいなのを見つけて辿ったら奴の腹だった。

 だから滅さずに手を突っ込んだんだ。

 そうしたら見抜かれたと思ったんだろうな。

 術攻撃を乱射しやがったんだ。


 俺は復活途上だったし、マディアはそんなだから万全じゃあない。

 マディアを庇った俺は時空の彼方に飛ばされちまったんだ。

 けどマディアは随分と引き戻してくれた。

 だから落ちたのは生まれたばかりのサイの中で済んだんだ。


 マディアは細い細い糸でしか繋がっていなくても、奴の目論見には従わず、全力で拒絶していた。

 だから奴は大量の『支配』を闇球にしてマディアの身体に込めてたんだ。

 全く効いてなかったがな。

 効きもしねぇソレはマディアの鱗を黒く染めていたんだ。

 オフォクスが纏ってる光みたいな綺麗な青緑だったのに、汚泥を被って煙の中で煤まで被って燻されたみたいに斑で汚ならしい色にな。

 龍の鱗は命そのものなのによぉ……」


「そうですか……。

 そもそも龍神様を捕まえた時点で卑怯な方法を使ったんでしょうね。

 敵であっても倒せないのも解りました」


「ったく何して捕まっちまったんだろうなぁ」


「妻エーデリリィを封じられてしまった為に従わざるを得なくなったのです」

オフォクスの怒りは纏う光を炎に変えた。


(オノレ)が妃を奪われて嘆き悲しんだのにか?」


「だからこそ、なのでしょう。

 ティングレイス王も妃を封じられ、従っておりましたので」


「父様に妃!?」「兄様ソレ後だよぉ」

飛び出した力丸の尾をショウが咥えて引き戻した。


「妻は大切だと知ってて遣りやがったのか。

 ったく卑怯な奴だな!

 けどマディアは反抗してたぞ?」


それは私が、とラナクスが手を挙げた。

「そうなる前に、職神皆を連れて逃げろと咆哮で伝えてきたのは、余程の事が起こると思っての事でしょう。

 魂を抜かれただけでなく、他に何か、例えば記憶を抜かれたとか、されたのではないでしょうか。

 それまでマディアは最高司補エーデラークとして、死司最高司ナターダグラルをしていたザブダクルに尽くしていたのに、何が起こったのかは分かりませんが」


「王とお喋りしてたのバレちゃったかな~?

 ザブダクル、マディア大好きだったから~、嫉妬したのかも~」

皆の驚きの視線をイーリスタが集めた。


ラナクスが納得したと頷いた。

「驚きましたが辻褄は合いました。

 ザブダクルは大好きなマディアの為に獣神狩りを終わらせ、浄魂方法を元に戻し、理不尽な禁忌も一部撤廃したのですね」


「マディアはザブダクルと友達になろ~としてたんだよね~。

 そ~すれば神世を滅ぼすとかしなくなるんじゃないかってね~。

 エーデちゃんも返してもらえるかな~って。

 そしたらザブダクルが勘違い?

 ず~っと孤独だったから~、沼にドップリくらいに大好きになっちゃったんだよね~」


「マディアとグレイの過去も知らず、話しておっただけで嫉妬に狂い、地星を飛ばしてしまうに至った、か……」


「えっ?」「地星が?」「飛んだって!?」


「今、地星は宇宙の何処に在るのかすら分からぬ状態だ」

「そ~なんだよね~。

 地星も時空を越えちゃったみたいなんだよね~。

 だからソレも解決しなきゃなんだ~。

 ソッチは僕達がするけどね~」


「「もしかして大地震は!」」響とソラ。


「そ~だよ~。飛ばされた時の衝撃~」







オーロザウラが呪を掛けて操ったとか、闇禍が来ていたとかを知らなければ、こうなりますよね。

表面上は全くこの通りですから。



この隠し社でのお話は、本編にとっても外伝にとっても重要なので、丸被りしています。

外伝の方が追っかけですのでサラッと流してくださいませ~。

m(_ _)m



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