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削られていく命



 封珠の中では殻を破るべく順調に修行が進んでいたが――


「えっ? マディア!?」「グレイ!?」


――唐突にポテッと落ちて転がった。


「どうして?」

エーデリリィがマディアを拾い上げて抱き締め、状態を確かめ始めた。


「眠らないと言っていたのに……」

ユーチャリスもティングレイスを抱き締めた。


「眠ったのではないわ。気絶しているのよ」

探り続けている。

「これは……何の術なのかは分からないけれど、術の影響なのは確かね」


「また……目覚めたら記憶が消えているのでしょうか……?」


「そうなりそうね。そういう術なのかも。

 マディアは記憶の写しを尾に込めているわ。

 こうなるのを予想していたのではないかしら」


「グレイには尾は無いのに……あっ、ですが、これは幻尾です!

 この幻尾……まだ使い熟せていないのかしら……?

 あっ、少しだけ記憶の写しを込めています!」


「だったら私達の魂尾(たまのお)から成した欠片を込めて、残っているグレイの記憶を写しておきましょう!」


「はい!」


 大急ぎで命の欠片を成し、ティングレイスの魂に込めて幻尾を強化し、記憶の写しを収める。


姉妹がそれに集中していると――


「マディア様っ!?」


――ダグラナタンが慌てて寄り、神力を込める為に浄破邪を当て始めた。


「どうしたの?」


「縮んだのです! マディア様がっ!」


ティングレイスの魂もスッと少しだけ小さくなった。


「もしかして……削られているのは記憶ではなく、命そのもの……?

 その影響で記憶も消えているの……?

 こうしてはいられないわ!

 ふたりに命の欠片を込め続けないと!」



―◦―



「マディア? 何故……今、幼くなったのだ?」


 そもそも(見た目が)子供なマディアが更に一回り小さくなったのに驚き、その身体を心配も露にザブダクルは撫でていた。


声を掛けても、触れても目覚めない事にも不安を膨らませつつ――



―◦―



 神王殿のティングレイスの身体は、ダグラナタンが偽装固定しているので姿こそ変わらないが、唐突に気絶したので騒然としていた。


「陛下! 陛下!? お気を確かに!!」

「医師を!! 大至急、医師を!!」


ティングレイスは既に半獣神。

ザブダクルが掛けた若返りの術は禁忌としての作用の方を強く発現させていた。



―・―*―・―



「「マディア! グレイ! 目覚めて!!」」


〈ん? 姉様だぁれ?〉〈ええっと~〉

抱き締めている者に対して言い、声がした隣を見ようと――

〈ユーチャリス姉様♪〉〈エーデリリィ姉様♪〉


「また振り出しね……」「そうですね……」


〈グレイさん♪〉〈マディア♪〉


「まだ認識できているのね」「そうですね」

「でも生きていて良かった」「そうですよね」


〈でもトリノクス様は?〉〈僕達だけだね……〉


「グレイ、さっきまで何をしていたの?」

エーデリリィが記憶の『今』を確かめようと尋ねた。


〈昨日からマディアも加わって、今日は禍を3つも滅したんですよ♪〉


〈グレイさぁん、昨日じゃないよぉ。

 僕もう半年以上 一緒じゃないですか~。

 父様達待ちでトリノクス様と禍退治してるんですよ♪〉


〈え? ドラグーナ様、何処に?〉


〈人世に行ったじゃないですか~〉


「あ~、待ってマディア。グレイも。

 ふたりは禍に触れてしまったのよ。

 だから記憶を確かめようとしたの。

 ごめんなさいね。

 少しだけ欠けたか、混乱しているかなのね。

 それじゃあ修行して落ち着けましょうね♪」


〈〈はい♪〉〉瞑想し始めた。らしい。



 ユーチャリスがエーデリリィに肩を寄せた。

(ふたりの記憶の差は、いったい……?)


(同じようには進まないのかもしれないわ。

 マディアは次々代の基礎修行が始まる頃に父様に呼ばれて滝に加わったそうよ。

 その半年後、トリノクス様を残して父様達は人世に行ったそうなの。

 たった半年なら誤差ではないかしら?)


(そうですか……)


(落ち込んではいられないわよ。

 しっかりなさいな)


(そうですね……)

〈ダグラナタン!?〉「「「えっ!?」」」

〈また僕の鱗を剥ぐのっ!?〉


「待ってマディア! この人神は――」


〈僕に乗るなっ!!〉


「あら、外なのね。

 ダグラルさんも泣かないで。

 マディア、落ち着いて聞いて?」


〈は~い♡〉


もう何度目だろうと思いつつ、また説明するエーデリリィだった。



―◦―



 マディアの背に乗って撫でていると唐突に起きて浮き上がったので落ちそうになって伏せたザブダクルだったが、動きが止まったので恐る恐る顔を上げてみた。


「マディア?」


ぎゅる?


「また飛んでくれるか?」


浮き上がった。


「破壊しておらぬ街へ。瞬移で」


瞬移した。



――街の人神達は上空に現れた黒い龍を見て、慌てて屋内に逃げ込んだ。


「構わぬ。跡形も無きまでに破壊せよ」


カクン。急降下! 「うっ――」


スイッと翻って身軽に着地し、ぴょんぴょんと跳ねながら踏んで壊していった。


「術を使えばよいものを……」


ぎゅ?


「いや、好きにせよ」


ぎゅ~るるる♪



 全ては時間稼ぎ。

確実に人神達を地下に逃がす為であり、次の街に行くのを遅らせる為だった。


――などとは気付けないザブダクルだった。



―・―*―・―



 キツネの隠し社では、エィムとロークスの話に続いての、イーリスタからの話の最中だった。

「だからね~、今、地星が何処に居るのかサッパリなんだよね~♪」


「星座が滅茶苦茶なのは、そういう事だったのですね……」


「エィム? 真面目に落ち込んでる?

 珍しい状況なんだから~、メーイッパイ楽しまなきゃソンソンだよ~♪

 マディアも楽しそうにしてるから~♪

 あんまり負に傾いちゃダメだよ~ん♪」


「どうしてマディア兄様が楽しいだなんて?」


「僕もマディアの父だから~♪

 楽しいってのは伝わってるんだ~♪

 マディアが封じられててもねっ♪」


父だと聞いたエィムはドラグーナを見た。


「うん。1/3くらいはイーリスタ様だよ。

 だから本来のマディアは明るいんだよね。

 何度も大変な目に遭ってしまって、(すさ)んでいた時期もあったけどね」


「今も大変だと思うのですが……」


「そうだね。でも封じられた場所にエーデリリィが居るのが大きいだろうね。

 エィムもチャムと一緒なら閉じ込められても大丈夫なんじゃないかな?」


「今は僕の事は!」「大好き溢れてるね~♪」

「イーリスタ様までっ!」


「僕もお嫁ちゃん達と一緒で幸せだよ~ん♪」

「「イーさま♡」」ぴと♡×2。

「うん♪ 大好き♡」いいこいいこ♪


「これで各々の話は終わりかな?

 それじゃあロークスとエィムは戻ってね。

 忙しいのに すまなかったね。

 ありがとう」


「父様? また消えてしまうとかありませんよね?」


「消えたりなんかしないよ。

 でも輝竜君達も外に出してあげないとね」


「それならいいですけど……」

「ね、空の どんより、消しに行かない?

 人の気持ちも どんよりしちゃうでしょ」


「ああそうですね。

 オフォクスは? 留守番かな?」


「儂が行かねば無茶と暴走が野放しになるではないか」


「無茶はドラグーナだねっ♪ 暴走って?」


「イーリスタ様に決まっているじゃないですか」くすくす♪


「そっか~♪ あ♪ エィムが笑ってる~♪」


「笑ってなんか――」「行こっ♪」



――雲の上。


「どうして雲の上――って僕も!?」


「消すのは後ねっ♪

 一緒に『マディア頑張れ~!』って送らない? けっこう近いよ♪」


「はい!」



―・―*―・―



〈あ♪〉


「マディア?」


〈父様の声♪ 聞こえた~♪ 他にも♪〉


「何と言ったの?」


〈頑張れ~♪ って♪ だから修行する♪〉


「そうね♪」


〈それと~、頑張って、み~んな護るの♪〉


「マディア♪」


〈エーデなぁに?〉


「大好きよ♪」


〈僕もエーデ大好き♡〉


「幸せよ♪」ぎゅっ♡


〈僕も~♡〉ぴとっ♡



―◦―



「マディア」


ぎゅ~す。


「そうか……魂と繋がねば話せぬのだな。

 マディアであってマディアではないのか……」

ようやく気付いて寂し気に呟いた。


きゅる?


「次の街に」


また高い。


「わざと、なのか?」恐る恐る。


ぎょ~るす。 此処でも急降下!


「待ってくれ!」


ぎゅる? また頭を真下に向けたまま止まった。


「儂で遊んでおるのか?」また恐る恐る。


ぎゅぎゅ~る? 下を指す。


「まさか、楽しんでおるのか?

 マディアらしくも――マディアではない、か。

 行け。破壊せよ」


ぎゅ♪ 急降下再開! 「うっ――」







ザブダクルが繰り返し使っている術は人神にとっては軽い若返りですが、獣神の魂を削り消してしまうものでした。

ですから獣神に使うのは禁忌なんです。



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