飛ばされたのは地星
月のイーリスタは突貫で作った道を通り、見えない壁に阻まれて止まった。
壁を調べたが先には進めそうにないと諦めた時、瑠璃鱗 鳥翼で光輪を戴いた龍神が壁の向こうに見え、話し掛けてきた。
龍神を真似て手を壁に当て、話してみた。
「こ~すれば話し易くなるんだねっ♪
聞こえますか~?♪」
『はい、聞こえました。
俺はアオ。三界域の天竜です』
「僕イーリスタ♪ 地星の神だよ~♪
あれれ? ソックリさん増えた~♪」
『妻のルリです。
この壁を調べてもらっていたんです』
『壁は、そちらの域を包んでいる球体です。
空間それ自体が異なるが故の境界だと思います。
此方に来た原因は把握しておられますか?』
「ソレね~調査中なんだ~。
僕は月に居るんだけど、人世の仲間と話したくて道作ってたんだよね~。
そしたらガツンって揺れて~、こう。
あっ、サンカイイキって?
地星はあの青い星だよ♪
空に神世♪ まるっと包んでるんだ~♪
中に人世があるんだよ♪」
『三界域は、あの陽の向こうに在ります。
ルリ、壁に映せる?』
『これは空間の違いに依る境界だ。
実際には何も無い。
千里眼では?』
『ああそうか。ありがとうルリ♪
イーリスタ様、ご覧ください』
手首の『千里眼』から宙に投影した。
『これが陽を挟んで、その地星の反対側に在ります。
球体が地上界、上の平域が天界と翔竜域、突き刺さっている平域が地下界と精霊域です』
字も光を宿した指で書いたのを投影している。
「この衛星は?」つんつん♪
『月です。今は誰も住んでいませんけど』
「同じなんだ~♪ なんか嬉し~♪」
『そちらの月でない飛んでいる物は?』
「ん? アレ? 人工衛星♪
人が作って飛ばしてるの~♪」
『人が!? あ、人も居るんですね?』
「居るよ~♪ たっくさん♪ だから人世♪
あ♪ また増えた~♪ 今度は赤いねっ♪」
『呼んだんです。弟のアカです。
ほら見て、人工衛星だそうだよ』『む!?』
よく見ようと近寄ろうとして壁に阻まれた。
『行けないから見るだけだよ』『ふむ……』
「紅火ソックリ~♪
アオも青生だし♪ ルリも瑠璃~♪」
『む?』『え?』『は?』
「ドラグーナに会わせた~い♪」
『俺達、シャルディドラグーナ家の者なんですけど……』
「もしかしてパラレルワールド?♪
キンとハクとクロとフジとサクラも居る?♪」
『居ます……七人兄弟ですので……』
「呼んで呼んで~♪」ぴょんぴょんぴょん♪
『あ、はい……呼びました』
『アオ兄なぁに~♪
兄貴達 連れて来たよ~♪』
「すぐ来た~♪
ドラグーナ フルコンプ~♪」ぴょんぴょん♪
『可愛い兎さんだ~♪』 一緒にぴょんぴょん♪
『アオ、此方は?』
『異世界の地星域の神様でイーリスタ様です。
原因不明ですが、唐突に域が現れたんです。
あっ、見えませんけど、境界が壁のようになっていますので気をつけてください。
イーリスタ様、兄の――』「キンでしょ♪」
『マジで神様なのかぁ?』壁つんつん。
「ハクだねっ♪」『アオが話したのかぁ?』
「クロとフジ♪」『お、おう』『はい……』
「で、サクラ♪」『うんっ♪』ぴょんクルン♪
「ドラグーナ連れて来たいから~♪
月と人世を本気で繋ぐからねっ♪
大急ぎで繋ぐけど~、3日待って?
必ずまた来るから~♪」
『では、それまでに此方も全力で調べます。
元の空間に戻さないといけませんよね?』
「ゆっくりでいいよ~♪
帰るのは~、もっと楽しんでからねっ♪
それじゃ3日後……って同じ?」
『確かに。
では、常にこの辺りで誰かが調べていますので、また此処から呼んでください』
「うんっ♪ じゃあまた会おうねっ♪」
ぴょんぴょんクルンと鳳凰になって、大急ぎで月へと飛んで行った。
―◦―
「あの鳳凰神様……」ボソッ。
「カッコいい~♪ 鳥さんなった~♪」
「アオ、ちゃんと説明しろよなっ」
「うん。本当に唐突に現れたんだよ」
地星を指す。
「それで調べていたら、あの月からイーリスタ様がいらしたんだ。
話していたら兄弟の名を全て当てられてしまって……」
「アオが言った通りだ。
俺は先に呼ばれて人工衛星とやらを見せてもらっていた。
すると『紅火ソックリ』だと言われた」
「パラレルワールドじゃないかって大喜びだったよね」
ルリも頷いた。
「つまり地星域にも、もう一組の我々が存在するのだな?」
「そのようです」
「ふむ。『3日後』が楽しみだな」フッ。
―・―*―・―
すっかり夜になった地星の人世では、そんな暢気な事を言っている場合ではなくなっていた。
「あのっ! どなたかお確かめください!
どなたか! お願い致します!」
キツネの社に慌てふためいている観測衣の少年神が飛び込んで来た。
「何を、なのです? 落ち着いてください」
「フェネギ様、星の位置がおかしいのです!
星座がメチャクチャで!
惑星が見当たらないのです!」
「すっかり曇っておりますね。
観測用の人工衛星は止めたのですね?」
「はいっ! 地が大きく揺れた影響だと人は捉えています!」
「そうですか。
では人に知られぬ内に手を打たねばなりませんね。
今夜の内に稲荷山に仮の職域を作りましょう。
そして人には異変を知られないように、仮設天空を保てるようにしてしまいましょう。
皆の神力で天空を具現化偽装するのです。
テイム、職神を集めてください。
早速 始めましょう」
「はい!」
フェネギは奥の部屋に行った。
其処ではバステト、バステート、ラピスリが3職域の最高司達を誘導し、支配を解こうとしていたのだった。
「今、鎖を滅したところですよ」
バステトが微笑みを向けた。
「此方も終わりました。目覚めて頂きます」
龍狐なラピスリも安堵を笑みに変えた。
「ええ此方も。お目覚めください」
バステートもニッコリ。
研究、観測、魂生の最高司達が半身を起こし、
「「「ありがとうございました」」」
掌を合わせた。
最高司補達とラピスリが協力して今回の災厄よりも前に解いていた浄化、保魂、再生の最高司達が喜びも露に寄って来た。
「此処は人世。
四獣神オフォクス様のお社です」
浄化最高司が魂生最高司を支える。
「古の悪神が神世を滅ぼそうと動いた為、職神は全て獣神様のお導きにて避難したのです」
保魂最高司も同様に観測最高司を支えた。
「「「職域は!?」」」
「無事です。ドラグーナ様の御子様方が成した結界が破邪で輝く程に強くなりましたので、悪神は入りようがありません」
再生最高司も研究最高司を支えた。
「ただし我々も神世には戻れません。
神力射が凶悪化されたそうなのです」
「ですので臨時の職域を此方に成さねばなりません。
どうか御力をお願い致します」
「「勿論!」」「急ぎましょう!」
『フェネギ様! 職神を集めました!』
「外に大勢 集まっております」
ラピスリは回復光を放って最高司達を包んだ。
「では此方に」
社の外に出ると、集められて騒めく職神達を四獣神の子達が整理していた。
「支配が解けていない職神は封じております。
順次、解いて頂きますので」
ロークスが代表して言い、最高司達に深々と礼をした。
「ロークス様、そのように下げずとも」
「いえ……これ迄ずっと獣神である事を隠しておりましたので」
最高司だけでなく職神の人神達全てが驚きを露に絶句した。
「では我々も」
ラナクスが動いたのを合図としたかのように潜入していた四獣神の子達がロークスに並び、同様に頭を下げた。
「こんなにも……いや、責めているのではない。
優秀な職神は全て獣神だったのかと驚いただけだ」
「その通りだ。だから顔を上げてもらいたい」
「獣神が優れているのではありません。
皆様に支配を込めた悪神が、優れた人神様の神力を抜いてしまったのです。
王も、そうなのです」
と、ロークスが話している間に、ルロザムールが奥ノ山で修行している死司神だった人神達を連れて来た。
「神力を抜かれ、記憶も封じられていた皆様です。
此方で修行し、神力を取り戻しましたのでお確かめください」
「確かに……」「これは凄い……」
「皆、死司なのだろう?
死司の最高司様は?」
「最高司補様もどちらに?」
「それが……」「僕から説明します!」
ロークスの隣に灰鱗の龍が現れて叫んだ。
「サーブル、如何にして此処に?」
「マヌルヌヌ様に特別な道を通してもらったんです!
マディアを助けたいから!」
「マディアは?」
「マディアとエーデリリィ姉様、グレイさんとユーチャ姉様とダグラナタンが悪神に封じられてるんだ。
でも詳しい話は後で。
エーデラーク様からのを先に!」
職神達が騒めいた。
【エーデラークはマディアなのでは?】
【だから後でっ! お願い!】【ふむ】
「エーデラーク様は悪神に封じられているんです。
最初に気づいて戦ってて、僕達が着いた時に、悪神が卑怯な禁忌をつかったんです!
だから次は避難だって吼えたんです!
悪神は術で成したエーデラーク様ソックリな黒い龍に乗って、人神の街や村を破壊してるんです!
悪神はエーデラーク様だって事にしようとしてるんです!
だから僕達、エーデラーク様の仲間の龍がエーデラーク様の指示で、街とかの人神さん達を地下に避難させているんです。
その最高司様もエーデラーク様と一緒に封じられているのかもしれません!
悪神なのかもですけど。
僕は戦いに戻らないといけません。
道が閉じてしまう前に!
だから獣神の方のを話したいからロークスちょっと借ります!」
一気に話した灰龍サーブルは、強引にロークスを背に乗せて飛んで行った。
「そうとなれば!」「こうしては居られん!」
「我々が成すべきは!」「職の全うと修行!」
「では急ぎ仮の職域を!」
「手分けして成そうぞ!」
「死司はルロザムール様を最高司代理に!」
「ええっ!?」
ルロザムールの驚きを掻き消すように鬨の声が上がり、各々が職域を成すべく意気揚々と神力を高め始めた。
ま、宇宙は繋がってますから~♪
既にブルー様だとかチェリー様だとか登場していましたので『やっぱりね』でしょうけど、時空の彼方に飛んでしまったのは地星でした。
その飛ばされている間が地震だったので人世の世界中が揺れたんです。
着いたのは三界とは陽を挟んで反対位置。
イーリスタ様は天竜王子達と会ってしまいました。
そんなですから星座がメチャクチャなのは当然で、この夜は職神達が頑張る夜になってしまいました。




