地震は収まったのに
龍の里長に姉エーデリリィの言葉を伝え、助言を貰ったサーブルは禍の滝に向かった。
森を抜けると兄弟達は無数の禍と戦っていた。
【サーブルも手伝って!】
エメルドが必死の形相で振り返った。
【発生源を止めたいんだ!
滅禍浄破邪!!】
【あ、そっか♪ 滅禍浄破邪!!
禁忌なんか知ったこっちゃナイねっ♪】
【滅禍浄破邪!! 兄様達も!!】
振り返った兄姉達が笑みを浮かべた。
そして破邪光が拡がっていく。
【行こう!】【ありがと!】
【ユーリィも!】【うん!】
森の外でサーブルはエメルドとユーリィにエーデリリィの言葉を伝えた。
【それじゃあ手分けしてエーデラーク様の配下しよっ♪】
【マディアを悪者なんかにしたくないよね。
あの黒いのは敵神が術で成したニセモノってコトにしちゃお♪】
エメルドとユーリィの言葉にサーブルが頷く。
【行こう!】【【うんっ!】】
龍の兄弟は各々が廃墟と化した街や村へと瞬移した。
――とある街。
サーブルは地面に手を当てて地下を確かめた。
〈地下の皆様、突然で驚いたでしょうが、これは皆様をお護りするために已むを得ずした事ですので、どうかお許しください。
僕はエーデラーク様の使いの者です。
今、エーデラーク様は悪神に因って封じられており、そっくりな黒い龍を術で成して乗っている悪神が神世を滅ぼそうとしているのです。
その企みは阻止します。
悪神を成敗したら皆様をお出ししますので今暫く地下に隠れていてください。
ご不便をお掛けしますが、必ずお出ししますので辛抱なさってください〉
〈儂は、この街の長じゃ。
よ~く解った。
心話の出来ぬ者にも暫しの我慢じゃと伝える。
して、エーデラーク様とは死司最高司の補佐をしておる龍であろ?〉
〈はい! 僕も龍です!〉
〈そうかそうか。ならば安心じゃ。
これもピュアリラ様の御加護じゃろうて。
悪神とやらはエーデラーク様に全ての罪を擦り付けようとしておるのじゃな?〉
〈はい! 術で成した黒い龍の背に身を隠し、全ては禍の化身が如く黒化した龍、エーデラーク様の仕業としようとしているのです!〉
〈許し難き事じゃな。
儂ら信徒は龍狐神様と共にある。
味方じゃからの〉
〈ありがとうございます!〉
―◦―
ユーチャリスとダグラナタンの所に戻ったエーデリリィはマディアの魂を受け取り、そっと抱きしめた。
「サーブルという弟が私の声を拾ってくれたわ」
「サーブルが……懐かしい。
良かった。
サーブルはマディアのすぐ上なの。
マディアと仲良しだったから信頼できるわ」
「そう」〈サーブル……ありがと……〉「あら♪」
「聞こえているのかしら?」
手を伸ばしてマディアを撫でた。
〈僕は大丈夫……だから……サーブルは、龍の里を……お願い、ね……〉
「伝わるといいわね、マディア……」
包み込むように抱いて頬を寄せる。
ユーチャリスも、こんな形ではあるが、やっと会えた夫に愛しさを込めて頬擦りした。
「グレイ、お話ししたいことが沢山よ。
早く目覚めてね」
実はマディアは随分前の記憶を夢として見ていたのだった。
ザブダクルには兄弟とは数百年も会っていないように話していたが、すぐ上で仲の良い兄サーブルとは何度か会っており、龍の里の護りを頼んでいたのだった。
―・―*―・―
大勢の神忍マーズ達が人世中を駆け巡り、キツネの社とノワールドラコに保管していた食料入り保護珠を配りつつ揺れは収まったと伝えたので、人世は一先ず落ち着いた。
それをを確かめたドラグーナとオフォクスは、ザブダクルの破壊神力をたっぷりと吸収した身体を隠し社で横たえた。
マディアの力は主に浄破邪だったので、破壊力を大きく吸収し、打ち消して回復する為に利用したのだった。
「俺には無茶をするなと言っていたよね?」
くすくす笑いながら鱗色を綺桜に変え、強い浄破邪光でオフォクスを包んだ。
「フン。浄破邪ならば負けぬわ」
お返しとばかりに碧炎光でドラグーナを包む。
「ちゃんと休んでよ」あははっ♪
「ドラグーナこそだ」フン。
「それじゃあザブダクルの悪神力を互いに浄滅しながら休もうね」
「ふむ。互いに止めぬであろうからな。
して、儂が育てた兄弟は?」
「俺の中で眠っているよ」
「眠らせた、の間違いでは?」
「うん。疲れただろうからね。
とても頑張って支えてくれたからね」
「然うか」
穏やかな笑みを浮かべたオフォクスに微笑み返したドラグーナは感謝を込めて浄破邪を強めた。
「して、其の身体は十分なのか?」
「どうにも不十分だね。
十分なら器達をこんなにも疲れさせなかっただろうけどね」
「休むのならば出るべきでは?」
「やっぱり? 身体を水槽に戻すよ」
苦笑して隣の部屋に行き、魂のみになって戻るとオフォクスと並んで横たわった。
「じゃあ浄化し合おうね♪」浄破邪♪
「何を楽し気に……」フ。
お返しだと浄破邪を当てた。
「楽しいよね♪
親友と一緒に居られるんだから♪
まだ全てを解決できていないけど、とりあえず地星を護れて良かったね」
「然うだな」
―◦―
アウトレットパーク避難所で夕食を配っていた祐斗達は、隅に集まっている高校生達を見付けた。
「牧場兄さん達だよな?」「萱末バスケ部ね」
話しつつ近寄る。
「お♪ 祐斗じゃねぇか♪」
「うん、晩ご飯なんですけど……何してるんですか?」
「俺達は清掃班なんだがな、コレ見てくれよ♪」
「ロボット掃除機にマーズの馬ぬいみたいなプラ人形?」
「ほらマーズのだよ♪ 花押あるし♪」
「だよ♪ さっき神忍マーズってのが持ってきてくれたんだ♪」
「勝手に掃除してくれるから掃除班はゴミ集めが仕事だなっ♪」
「で、ネコみたいなロボット掃除機もいるんだよ♪ ほらな♪」
どう見ても生きている猫が近付いて来ていた。
「なんか……彩桜猫?」「動きが彩桜だなっ♪」
「カワイイね♪」「つまり掃除機で癒し効果?」
愛らしい動きをしながら『猫』が通り過ぎる。
「今は必要だよね」
「凌央が人らしいこと言ったぞ♪」
「あのね」
「アレ、世界中に配ったのかな?」
「そうだろうね。マーズなんだから」
「やっぱスゲーな♪」
「確かにね」
「あ、お兄さん達、避難誘導の時、櫻咲の制服 着てませんでしたか?」
「借りたんだよ♪」「上着だけな♪」
「グレ服じゃ聞いてくれねぇだろ?」
「逃げられちまうのがオチだからね」
と自嘲気味に笑ってから
「けど掃除班はグレ服でやるぞ」
「変えたいからな」「だよな♪」
シッカリ笑った。
「変えられますよ♪」「だよなっ♪」
「あっ、晩ご飯です!」玉を渡した。
「占いの玉?」
「じゃなくて忍者飯が入ってるんです♪」
「忍玉に指を入れて摘まんで引き出すと」
実践。抜ける毎に大きくなって弁当箱に。
「お茶も入ってます。お箸は蓋の裏です」
「カラ箱と玉の返却場は各階にあります」
「明日からはお味噌汁も作りますので♪」
高校生達も自分達も遊んでいる場合ではないので各々の仕事に戻る。
配り続けていると、コミュニティ広場(フードコートだった場所)のテレビ画面に釘付けになってしまった。
ちょうど一緒になった祐斗 堅太 凌央 恭弥が画面に寄る。
『マーズが食料や掃除機を配布しているようですね』
『食料は忍者飯が入った忍玉!』
『占い師の前に置いているイメージしかない玉ですよねぇ』
『これがですね~』『ええっ!?』
ズボッと人差し指と親指を突っ込むと、弁当箱を引っ張り出した。
『だから忍法、忍玉なんですよ♪
しかも味も最高なんです♪』
『へぇ~♪ 掃除機の方は?』
『ロボット掃除機で、タキ電機で量産試作していたのをマーズが全て買い上げて配布したそうなんですよ!
ですからCMも撮り終えてましてね、大急ぎで編集、完成させたそうなんです。
ではご覧ください。どうぞ!』
「曲もマーズだね♪」「カッコイイね♪」
「欲しいな……」「「「凌央が!?」」」
「何? ロボット掃除機なら勉強の時間を削らなくても部屋が綺麗になるだろ」
「そういう意味かぁ」「凌央らしいよね」
『他の商品のCMも仕上げたそうですよ。
気分を上げてもらえそうですので、物の配布はありませんが流しますね♪』
「「「「えええっ!?」」」」
『天使のお・し・り~♪ にゃはっ♪』
頭を寄せ合い、
「彩桜って……」「ま、邦和を明るく、だろ♪」
「顔を隠してるからOKって出演したのかな?」
「バレバレなのに?」「笑い声が聞こえてるね」
「だったら彩桜的に大成功だろ♪」「だよね♪」
ヒソコソ。
次のCM映像では、洗濯乾燥機の中をチビッ子マーズ2人と手を繋いで飛んでいる褌天使な桜マーズが、沢山の笑顔を咲かせている。
まだ笑顔になれる。
大変な事が起こってしまったが、生きていて良かったと実感した祐斗達だった。
―・―*―・―
「それじゃ限界まで行ってみるねっ♪
お嫁ちゃん達、待っててね~♪」
月のイーリスタは突貫で作った道へと消えた。
思っていたよりも遠いと感じた。
そこそこ長く進み、そして何やら見えない壁に阻まれて止まる。
何処か開いている場所はないものかとペタペタと右に進む。
が、すぐに道の端に達した。
左を確かめても、上やら下やらをペタペタしまくっても同じだった。
「やっぱり壁だぁ~」見えないけど撫で撫で。
「僕の道も此処までだねぇ~」
『聞こえますか?』
「あ♪ は~い聞こえま~す♪」手を振る~♪
最初に見えていたのと同じらしい瑠璃鱗で白い鳥翼に光輪のある龍神が居て、壁に手を当てていた。
「そっか~♪」ペタッと掌を当てた。
「こ~すれば話し易くなるんだねっ♪
聞こえますか~?♪」
人世の地震は収まったのに、神世では破壊が続いています。
そして月では――イーリスタが出会ったのは宇宙人?




