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ならば時空の彼方に!



 マディアとその祖父(フィアラグーナ)に破邪が弱点だと気付かれて追われる身となったザブダクルは必死で逃げつつ、回りきらない頭(それも呪なのだが)で考えを巡らせていた。


 此奴は何者だ!?

 まさか此奴がウンディかっ!

 マディアはウンディの孫であったのか!

 確かに大いに邪魔な奴であるな!


今ピュアリラことラピスリがウンディもマディアも弟だと言っていたのはブッ飛んでしまったらしい。

人神が獣神から逃げきるのは並大抵の事ではないので、それも致し方の無い事なのだろう(強忘却も呪ではある)。

しかも追っ手は2龍神。

まず逃げきれるなんぞ有り得ない状況だ。


ザブダクルは必死で逃げつつ、鮮明に甦った遥か過去の命を狙われ続けた記憶に、吐き気にも似た気分の悪さを感じていた。


〈おぉえぇぇえぇぇぇえ~〉【マディア!?】

〈ぎぼぢばづぅいぃいぃ~〉【浄破邪輝雷!】

闇球を吐き出し始めたマディアをフィアラグーナが浄破邪で包んだ。



 追っ手が留まり離れたと感じたザブダクルは隙ありとばかりに詠唱し、放つ刹那、フィアラグーナの眼前に瞬移した。

「闇禍捕縛!!」


「なんの♪ このヘナチョコめが!

 ん? 糸? マディアと繋がって……そうか! 変だと思っていたがマディアの魂は其処なのだな!!」

捕縛を軽く躱し、続く禍を避けながら、浄破邪を放つのを緩めずに喋っている。


「クッ来るなっ!!」


「孫を返せ!!」

ローブを掴んで引き寄せたザブダクルの腹にグッと手を突っ込んだ。


「させぬ!」

仰け反って逃げようとしつつ禍を衝撃波で押し飛ばした。


「滅!!」〈お祖父様、僕も♪〉滅禍輝雷!


支配闇球を吐き出して元気を取り戻したマディアが、フィアラグーナが攻撃の為に伸ばしている腕にぶら下がり、ザブダクルの至近距離で得意の浄破邪を放った。


「ならば時空の彼方に飛ばされてしまえ!

 暴嵐時空破乱!!」

フィアラグーナの浄破邪が掠めた右半身を揺らめかせながらも渾身の力で放った。


龍神達の周りが歪み、続け様に放たれた禍からマディアを庇った為に避けきれなかった1禍に包まれたフィアラグーナが、宙に現れた亀裂に吸い込まれて消えた。

〈お祖父様に何するのっ!!〉


「マディアは此方に!!」


〈ヤッダよ~。

 オジサン嫌いだから させないよ~♪〉

近寄ろうとしたザブダクルに向かって浄破邪やらの強い浄化攻撃を連射して弾き飛ばした後、閉じようとした亀裂を開いて頭を突っ込んだ。

【お祖父様~、見~つけた♪

 消術解還!! 滅禍輝雷!!

 引き戻しちゃうもんね~♪】


 ザブダクルは浄化・破邪光塊に追い回されていたが、マディアが縄を引いているような動作をしているのに気付き、亀裂へと瞬移して

「暴嵐時空破乱!! ぐわっ!!」

再びフィアラグーナを飛ばしたが浄破邪光塊に包まれてしまった。


〈させないって言ったでしょっ!!

 全力全開昇華浄破邪雷と消術解還っ!!〉


「マディアっ、ごぉわあぁあっ!!」


まさに七転八倒なザブダクルは悶絶寸前の死力を尽くしてフィアラグーナを飛ばそうとし、本気の怒りに火が着いたマディアの全神力(ぜんりょく)との激突は下空も神世の地も、人世の地をも揺らし始めていた。


〈お祖父様 飛ばすなんて許さないもんっ!!

 オジサン大っっっキライ!!〉


 マディアが片手を亀裂に突っ込み、その向こうのフィアラグーナに繋がる何かを掴んでいるとザブダクルにも分かってはいたが、その手を掴み出す事は出来なかった。


マディアのもう一方の手からは浄破邪光塊が神眼でも捉えられない速さで連射されていたからだ。


〈嫌いキライ嫌い大っキライっ!!

 コッチ来ないでっ!! キライなのっ!!

 イヤーーーーーーーーーーーーーーッ!!〉


【「()めろマディア!!!!」】



マディアの神力が暴発した。



【昇華消術解還っ!!!!】


【お祖父様!?】


【無事なら、それで、いい……】


【でもっ――】


【俺の事は……心配、する、な……】


【ダメッ! 僕の手に掴まって!!】


【俺は、マディア、の、祖父なの、だぞ。

 ナメんな、よ……】


【だから掴んでっ!!】


【必ず……戻――】


【お祖父様ーーーーーーーっ!!!!】


次第に遠ざかっていたフィアラグーナの声はとうとう聞こえなくなってしまった。



〈許さない……オマエだけは許さない……〉


高く立ち昇る碧炎の如き怒りを滾らせたマディアが振り返り、涙たっぷりの視線だけでザブダクルを射貫き、その動きを固めた。


〈滅神激浄――〉〈若化仙華昇!!!!〉

刹那の差でザブダクルが早かった。

マディアは気絶して脱力し、動かなくなった。



―◦―



《あの玉も外に出おったな。

 だが此奴の力は枯渇寸前か。

 儂が足しても この程度か。

 ならば、この強き者の力を利用し、この域を滅するのみ》


《闇禍様、滅するとは?

 何をなさるおつもりなのです?》


《黙っておれ!》〈使わせないからね……〉



―◦―



 マディアが視線で成した呪縛をザブダクルが必死で解こうと思考をフル回転させていると、意識の無いマディアの身体が大きく跳ね、溜まっていた神力が闇球と共に噴出した。


ザブダクルは その神力塊に自身の神力も感じ、反撃の為に取り込み、溜め込んでいたのかとマディアの器の大きさに恐怖を覚えた。


全てが大きく揺れていたが、ザブダクルはそちらに気を回すどころではなく、思考を巡らせなければと焦るばかりだった。


 マディアとは離れたくない。

 しかし従えられなければ儂が滅される。

 これまでのように笑顔を向け、

 優しく治癒を当ててもらいたい。


この状況を作ったのは己だとも至れず、そんな願望と恐怖との板挟みになっていた。



―◦―



《力がっ! 全て逃げてしまう!

 ならば我が力を乗じて時空の彼方へ!!

 ()すれば自ずと滅亡へと進むであろうよ!

 生きとし生けるもの全ての恐怖が儂の糧だ!

 怯えよ! 泣き叫べ! 滅びゆけ!!》


《滅んでしまっては我が王国が――》

《知った事か!! 先に滅してや――!?》

闇禍が言い切る前にグンッと加速したらしい大きな横揺れが起こった。



 咄嗟にザブダクルに食い込んで難を逃れたオーロザウラが大きな揺れだけは収まったので辺りを見回すと、闇禍の気配は消えていた。

《闇禍様? どちらにいらっしゃいます?》


返事は無いが問い掛けを繰り返した。



―◦―



 恐怖に囚われて息を呑んで固まっている余裕は無い。

そう感じたザブダクルは再び詠唱し始めた。

選んだのは先程と同じく、古の人神が普段使いしていた若返りの術だった。

一時的に意識を失い、その間に若化するものなので、そう長い時間ではないがマディアを止められるならばと放ち、今一度、猶予を延長しようと唱えているのだった。


 ただ、ザブダクルは知らなかった。

その術は獣神に対して使うのは禁忌とされている事を――。



―・―*―・―



 神世は下空の雲地がクッションになったのか微震動程度で然程も揺れていなかったが、人世は世界中で大揺れが続いていた。

しかも唐突に暗くなり、見上げると分厚い雲に覆われていた。


〖キャンプ~行っくよ!〗〖何処へ!?〗

〖人世の核♪〗〖神火の内ではないか!〗

〖核は神力♪ 一発で入れば大丈夫~♪〗


〖ったく! 一発なのだな! 私に任せよ!〗


〖絆 使って一気にねっ♪〗〖私だけで十分だ!〗

〖無茶 言わないの~♪♡〗


〖無茶ではない! 十分だと言っただけだ!

 ガネーシャの神力(ちから)なんぞ不要だ!

 まだ頭と尾と腹の一部だけなのだから大人しくしておれ!〗


〖あ♪ 父様達~♪〗〖無視かっ!〗

〖一緒に行こ~♪〗〖ガネーシャ!〗

〖キャンプ~が呼んでくれた~♪♡〗


〖皆を集めたぞ、ガネーシャ〗ビシュヌ、ニヤリ。

〖欠片足らずであろうが我等は大神!〗

〖人世を支えてみせましょう〗

シヴァとビシュヌが融合してハリハラになり、ブラフマーと両掌を合わせると、隙間から閃光が迸った。


〖拡げて、み~んなで行こ~♪〗〖おいっ!?〗

何を言われようがキャンプーの神力を絆から引き出して合わせ、閃光に注いで拡げると、集まっていた大神達を包んだ。


最高司補達の指示に従い社で修行していた人神達が何事かと外に出た その時、輝きの球はフッと消えた。


「何だったのだ?」「さぁ……」


首を傾げようが揺れは収まらない。

もう崩壊は免れないと、職神達が覚悟した その時、黄金に輝く龍神が上空に現れた。

〈崩壊は俺が防ぐ! 皆は地に神力を!〉


獣神王(ドラグーナ)様……」


〈皆! 急ぎ地表から地を支えよ!〉

呆然としている神達にオフォクスの声が響いた。


「そうだな!」「急げ!」「全力だ!」

一斉に地に手を突き、神力を込める。


〈揺れを起こしている神力は敵神のもの!

 破邪が放てる者は破邪を!

 浄化でも構わないわ!〉

バステトの声も響いた。



―◦―



 大きな揺れが続く上に暗くなった為に人々はパニック状態に陥り、叫び声で避難誘導の声は掻き消されてしまっていた。


明るくなろうが気付かずに叫び続けるので、中学校から走って来て声掛けをしていた祐斗達も困っていたが、ふと光源を探した。

「龍神様だ……」

「確かに。だったらマーズスタッフとして動かない?」

「だなっ♪ けど着替えてるヒマあるのか?」

「お面だけで続けようよ」

「あの龍神様はマーズの龍ヘンゲで「ごじゃりましゅる~♪」」

皆で声を合わせて自分達を鼓舞した。



 全く無事な輝竜家の自転車と古風な狐面を借りて再度 人の多い場所へ。

「みんな怖がらないで!

 マーズが龍ヘンゲして助けてくれてるんだ!」

「そうだよ! 揺れも小さくなってる!」

「崩れかけのが止まってるだろ!」

「照らしてくれてるから走って!」

「北に!」「アウトレットパークに!」


制服から中学生達だと明らかな狐面の少年少女達はマーズスタッフなのだろうと、怯えて叫んでいた人々は静かになっていった。


 そこに狸面の高校生達も加わる。

制服は櫻咲高校と聖渡女学園なので信頼できると人々に安堵が拡がった。

「今なら車も使える!」

「津波が来る前に避難所に逃げるんだ!」

「誰でも拾って乗せてってくれ!」


「避難場所はアウトレットパークよ!」

「マーズが保ってくださっている間に早く!」


「誘導してくれてる人がいますので!」

「落ち着いて、でも早く行ってください!」

「事故だけは起こさないでください!」



 輝竜家の犬達と元ワル達も普段着のまま面だけを着けて走って来て、建物の中から出られない人を探しては外へ。

腰帯が黄緑の忍者(マーズ)達が背負って北へと走った。


そのマーズ達を追うように人々が動き始めた。







人世中が大地震になった原因は、ザブダクルがフィアラグーナ様を時空の彼方に飛ばそうとしたからでした。

闇禍も便乗しての巨大神力とマディアの抵抗神力との激突で全てが揺れ始めたんです。


でもキツネの社に居る大神様達が人世の芯を支えに行きましたので大丈夫でしょう。



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