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オジサン大キライ



 支配を込めても暴れ騒ぐマディアの背にザブダクルが必死で しがみつき、オーロザウラが闇禍に叱責されていた頃、封珠の中のマディアの魂も騒ぎ暴れていた。


「マディア!? 落ち着いて!

 私が分からないの?」

エーデリリィは飛んで行ってしまわないように声を掛け、抱き締め続けていた。


〈オジサン嫌い!! 嫌い嫌い大キライ!!

 髪引っ張らないで!! 降りて!!

 ヤダヤダヤダヤダヤダーーーッ!!〉


「エーデリリィ様、外の様子を見て参ります。

 ザブダクルはマディア様の魂を抜き、そのお身体に支配を込めようとしているのではないでしょうか。

 神世の破壊を始めようとしているのではないでしょうか」

ダグラナタンが上昇を始めた。


「支配……それじゃあマディアが神世を破壊してしまうの?」


「それだけは阻止しなければなりません。

 おそらく、なのですが……ザブダクルの支配は人神用。

 私が盗み持っていたマリュース様の支配も人神用の、しかも一部です。

 ですので、いくら神力の強いザブダクルでもマディア様ほどの獣神様を操るなんて不可能です」


「それならいいんだけど……」


「ですので阻止は可能です。

 では確かめに行って参ります」勢いをつけて上昇。



 暴れるマディアの魂を抱き締めるだけでエーデリリィは精一杯なので、ユーチャリスが宥めようと撫で始めた。


その手がピクンと止まる。

「姉様、この糸……もしかして身体に繋がっているのでは?

 マディアは外しか見えていないのでは?

 音も外のものしか……」

姉の顔が見えてしまったユーチャリスは、それ以上の言葉を続けられなかった。


「そうなのかもね。

 この糸は身体に戻る道にもなれるわね。

 切らないように気をつけないと……」


マディアの魂を見ていると涙が零れそうになるので、エーデリリィは糸を辿って視線を上げた。



―・―*―・―



 中学校では体育館で終業式の全体集会が始まった。

校長の長い話は聞かずに、彩桜はサーロン 悟 竜騎と話していた。

【揺れるまではパニックならないよぉに普通にだよ。

 不安もダメだからね。

 俺達はマーズなんだからね】


【分かってるよ】

【彩桜こそ動ける者が少ない場所に行くんだからシッカリしろよな。

 サーロン、彩桜を頼むぞ】【はい♪】



―◦―



 稲荷山と奥ノ山の各(やしろ)では、回復したばかりの術の女神達とバステト バステート 梅華 桜華と輝竜家の妻達が、眠らせたままの職神達の支配の呪縛を解く誘導をしていた。

そこに到着したチャリルとタオファも加わる。



 山の社の外には支配が解けている職神達が集められていた。

浄化最高司補ロークス、保魂最高司補ラナクス、再生最高司補ハーリィが前に並び、騒めきを静めた後、声を張った。


「最高司様方は只今 話し合いをなさっておられます!

 ですので最高司補の我々の指示に従ってくださいますようお願い致します!」


「皆様は神力を高める修行をお願いします!

 反撃の為、急ぎ態勢を整えねばなりません!

 どうか御力を! お願い致します!」


「王からも、優秀な職神の皆様に期待するとの御言葉を頂いております!

 速やかに! お願い致します!」



―・―*―・―



 滅茶苦茶に飛んでいたマディアは帰巣本能なのか偶然なのか、禍の滝に着いた。

〈あ♪ 龍がいっぱいだ~♪

 共鳴してるから兄様姉様なんだね♪

 兄様~♪ た~す~け~て~!!〉


「お~いマディア、泥でも被ったかぁ?

 それとも煙の中を飛んで来たのかぁ?」

飛んで寄ろうとした白銀龍(シルバスノー)黄金龍(ゴルシャイン)が止めた。

【滅禍浄破邪雷撃!!】


一瞬で眼前に見えた神雷光をどうにか避けたザブダクルはマディアを連れて全力で瞬移した。



「兄貴、さっきの……」


「マディアには違いないが抜け殻だ。

 背には禍の塊の如き人神が居た。

 前に視察とやらでマディアに乗っていた輩だ」


「ゲ……じゃあマディアは!?」


「魂を抜かれ、何処かに封じられているのだろう。

 マディアの咆哮は、そうされる直前のものだったのだろう」


「だから白い弟が来てたのか……」


「身体を維持する為の繋がりが有る限り、操られる事は無いだろうが……」


「マディアは助けを求めて来たんだろ!

 このまま放っとくのかよ!?」


「神眼で追っている。

 何事か起こったならば直ぐに行くぞ」


「おう!」



―◦―



 ザブダクルはマディアを眠らせた。

しかしそれでも暴れ吼えるマディアは『助けて』と幾つもの名を呼んでいたが、自分にだけは助けを求めないのかと苛立ちを膨らませ続けていた。


 こうなればマディアの身体の内を

 支配で埋め尽くしてやろうぞ。


再び闇球をマディアの背に込め続けた。



―・―*―・―



 教室に戻った2年1組の生徒達の前に担任の狐松が立つ。

「では1学期末の終礼学活を始めます。

 ですか輝竜君と(シィァン)君は飛行機の時間都合で帰らなければなりませんね」


「「はい♪」」


「ですので先に通信簿を渡しますね」


「「はい♪」」一緒に前へ。

貰って席に戻り、荷物を持つ。

「これから両親が居るオーストリアに行きます。

 音楽の勉強をして、8月のコンサートで邦和に戻ります。

 教室の水槽はウチに運びました。

 歴史研究部のみんな♪ お世話ヨロシクです♪

 2学期からもヨロシクねっ♪」

「ボク、また来ます。

 いろいろ行事、参加したいです♪

 またヨロシクです♪」


皆からの温かい言葉が降り注ぐ。


「あっりがと~♪

 それじゃお先に「失礼します♪」」

ペコリとして教室を後にした。



【ソラ兄、響お姉ちゃんと普通にねっ】

【分かってるよ。彩桜、気をつけてね】

【うんっ♪ 離れてても【相棒ね♪】】



―・―*―・―



 眠らされても支配を込められてもマディアは吼え続けていた。

その声は神世中の龍神達に届いていた。


 この声……ドラグーナか? いや、孫か?

 聞き覚えはある……。


 そうか!

 幼いが滝で禍と戦っていた孫だ!


 助けを求めているな。余程の事なのだろう。

 ならば俺が助けるしかないな!


目覚めた者がガッと視界を確保すると、破邪の光に包まれていた。


 此処は? この光もドラグーナの子だな。

 しかも複数か。何事が起こっている?


【おい孫達! 何事だ!?】


〖お祖父様!?

 フィアラグーナ様なのですか!?〗


【そうだ! 今、何が起こっている!?】


〖お祖父様がいらっしゃるのは保魂域です。

 お祖父様は4分割され、今、お話ししておられますのは魂頭部(たまかしら)、堕神魂として保魂されていらしたのでしょう〗

〖近くに同じく堕神魂として魂腹部(たまのはら)が見えます。

 魂胸部(たまのしん)は……人世なのでしょう。見えません。

 魂尾(たまのお)は一度、浄魂されているようです。

 欠片が職域にも散在しています〗


【ふむ……腹を見つけた。

 確かに尾が散らばっているな。

 全て集めれば助けを求めている孫の所に行けそうだな】


グン! と気合いを入れて神力を高めると、流石はドラグーナの父。魂頭部と魂腹部が同時に、包んでいた人魂素材を破って出た。


引き寄せ合い、重なり合うと魂尾の欠片が蒼光を纏って四方八方から飛来して重なった。


【孫、礼を言う。

 で、助けを求めて吼えている孫の名を知っているか?】

身体を成そうと踏ん張って唱えながら尋ねた。


〖マディアです〗


【そうか。マディアを助けた後、お前らも助け出すからな。待っていろ!】

ムンッ! ムンッ! と神力を高め続けた。



―◦―



 また何事だ!?


強い獣神力(じゅうじんりょく)を感じたザブダクルが神眼を向けると、浄破邪光で遮られている保魂域でマディアにも似ている神力が膨らんでいると感じ取れた。


〈キライ……オジサン大キライ……〉


支配の闇球でパンパンになった為に息も絶え絶えになっても まだマディアは呟き続けていた。


〈苦しいよぉ……鱗イタイよぉ……〉


「儂の指示に従えば楽にしてやる」〈ヤダ〉


即答されて言葉に詰まった。


が、固まっている場合ではなかった。

その間にも保魂域の神力は膨らみ続けている。

先ずは確かめなければならなかった。


「マディア、保魂域に――」〈イヤッ!!〉


仕方無しにマディアの尾を掴んで職域近くへと瞬移した。



――「俺の孫に何しやがる!!」

ザブダクルが出た途端、目の前に爽青鱗の龍神が現れ、咆哮を轟かせた。


〈お祖父様~♪〉


「マディア、お前そんな色だったか?

 煤けて真っ黒だが(まだら)で汚ならしいぞ」


〈このオジサンがしたのぉ~。

 なんかクッサいのイッパイ込められて苦しいのぉ~〉


「ったく! 腹立たしいヤツだな!

 マディア、下の破邪で洗ってもらえ」


〈うんっ♪〉急降下♪


ザブダクルが慌てて離れた。


【あれれ? あ、そっか~♪

 オジサン破邪が弱点かなっ♪】


【そんなら下に落としてやろう♪】【ん♪】


形勢逆転。ザブダクルは追われる身となった。



―・―*―・―



【ヨシさん、トシ借りていい?

 力持ちが必要なのよ】

山の社で手伝い中のトウゴウジ。


【え? ツカサちゃんの所じゃないの?】

キツネの社で手伝い中の寿。


【ヨシさんの所に戻るって……】


【いつ!?】


【1時間は経ってるわよ】


【もうっ! ツカサちゃんも探して!

 また何か仕出かしたら大変だから!】


【分かったわ!】







フィアラグーナ様ってサイオンジの神様ですよね。

だとしたら職域にない魂胸部(たまのしん)がサイオンジの中に?


行方不明のトシはヨシさんの所に行こうとしてマディアの咆哮を聞いたとか?


カウントダウンは進んでいます。

もう1桁なのかもです。



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