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魔女の拠点巡り⑨最後はグリーンランド



 スザクインの案内で瞬移した先は、北の地らしく涼やかで空が明るかった。


【彩桜――】聞こうかと思ったが探りを発動した。

【――グリーンランド!?】


【その通りよ♪ その南端に近い場所ね♪】

【アレって……ホントの お城だよねぇ?】


石造りで冷たい印象の大きな建物が見えた。

高く(そび)え、ツンツン尖っている塔が複数 見える。


【冬は雪に閉ざされるから尖ってて高い?】


【それもあるかもだけれど、単なる好みじゃないかしら?】


【【あ~~】】THEおとぎ話のお城~♪


【あのお城にも不穏は漂っているのだけれど……】

北に向かって飛んだ。


【もっと不穏が……】【隠れてるねぇ】

追って飛んだ。



 感じる不穏は強くなっているが、隠れている不穏源が封じているとしか思えなかった。

勘が確信に変わろうとしている頃、森に突入したが、すぐに(ひら)けた場所に出た。

【また枯れちゃってるねぇ。

 スザクインさんは離れてね~】【ありがとう】


【もしかして……隠れてるのって……】

「カツおじさん! ソラです!

 カジ兄ちゃんも、おばさんも無事です!

 ナミじいちゃんとハルばあちゃんもユーレイですが元気です!

 禍はボク達が浄化しますから出てきてください!」

感じ取った気が記憶を呼び覚ました。

どう呼んでいたのかすら忘れていたなんてと考えるような冷静さは失っていた。


(ソラ)君……封印を解いたんだね。

 禍は出すよ。

 でも……僕を出してはならないよ〉


苦し気な声だったが、確かに隣のカツおじさんの声だった。

その声が幼いソラの記憶を引き出していった。


たくさんの思い出が過っていく。

爽快な笑顔も、真剣に叱ってくれた顔も。

父親の居ないソラにとってカツおじさんは本当に『父』だった。


もう分かっていた。

禍を連れて自身をも封じた勇敢で強いカツおじさんは怨霊化していると。

僅かに残っている正気で話しているのだと。


〈おじさん待ってて! 必ず助けるから!〉


返事は無いが禍が噴出して宙で集結している。


【ソラ兄シッカリ! 浄禍するよ!】


【あっ――うん!】


【ソッコー滅して勝士さん助けるよ!】


【そうだよね!】

一気に彩桜と同じくらいに気を高めた。


禍がソラを呑み込もうと迫る。


【引き付けて!

 せ~のっ!【滅禍浄破邪超特大雷撃破!!】】


同時に鋭く投げた雷槍が合わさり、太く強く輝く。

間近だったので雷槍が大きくなりつつ禍に突き刺さった。


【留めて!【浄破邪雷炸裂!!】】


先端が突き出たところで止めるとビシバシ浄破邪雷が迸って大禍を覆った。


【串刺し餡ころ餅~♪ でも美味しくなさそ~】


【彩桜ってば♪】あははっ♪


【トドメいっくよ!】双剣シャキーン☆

【じゃあ、ボクも!】双剣シャキーン☆


【【滅禍浄破邪、光の剣舞!】】


雷槍と直交するように瞬移して向き合い、舞い踊るように斬り刻みつつ進む。


細かくなった禍の破片は浄破邪雷と浄破邪光に包まれて消えていった。

森は静かなものだが神耳には大騒ぎで。



【清浄の風~♪】浄化光と共に吹かせた。


【風?】


【気合いかも~♪】まだ出している。

枯れていた森は復活中だ。


【気合い、ね……浄化を乗せて……】そよそよ~。


【さっすがソラ兄♪ 一発だねっ♪】唱え始めた。


【え? その術って……】


頷く。【――総解還! 助けるんだもんっ!】


まさしく強大、そして凶大な怨霊が姿を見せた。

正気の残りを振り絞って禍を追い出し、結界を閉じたのだろう。


【魂を壊さないギリギリ上限だよっ!】

【任せて! 浄化は得意だからねっ!】


また触れる寸前まで引き付けた。


【昇華光明闇化、光と闇の響演、治癒蓮華掌!】

【浄破邪の極み! 光の連弾、術解呪怨霊化!】


全ては一瞬。

彩桜が成した光を纏う闇蓮華の蕾に、ソラが浄破邪と解呪を込めて放った。


放たれた刹那、怨霊に触れた蕾は大きく開き、呑み込んで閉じ、人サイズまで縮んだ。


〈父さん耐えて!〉

浄破邪を纏ったソラが蕾を抱き締めた。


彩桜は少し離れて、浄治癒でソラごと包んだ。

元に戻ってと願いを込めて。



―・―*―・―



〈次はタカシかもだなっ!

 行ってみるからなっ!〉


〈トシ! まだ夜中よ!

 タカシには家庭があるのよ!〉捕まえた。


〈んあ? あ~、夜中かぁ。

 そんじゃあ陽が昇るのを待つかぁ〉


〈昇ったからって夏なのだから早過ぎるわよ!〉


〈ヨシちゃんも怒ったら響チャンと同じ俺好みだなっ♪〉


〈何を馬鹿なことばかり言ってるのよ!

 早く女神様達に治癒なさいっ!!〉


〈あ~、女神様だったのかぁ。

 ヨシちゃんが襲われたのかと思っちまったよ〉


〈あり得ないでしょっ!

 やっぱり呪なのね!〉御札を構えて狙いを定めた。


 って……まさか私の不穏が原因なのかしら……?


その一瞬がトシには動くチャンスになった。

〈俺は待ったぞ♪ 行くからな!〉GO!


〈だから待ちなさい!

 ツカサちゃん此処をお願い!〉

叫んでトシを追った。



〈ヨシさん? えっ……何が起こったの!?〉

【ホウジョウ来て! お願い早く!!】

飛ばされたらしく倒れている女神達を集めつつトウゴウジは叫んだ。



―・―*―・―



〈ソ、ラ……く……〉


〈父さん!! あっ、カツおじさん!〉


〈だったら……僕も、ソラと呼ぼうかな……〉


〈はい! すっかり解けましたか?〉術治癒!


〈そう、らしいね。スッキリだよ〉


〈良かった……カジ兄ちゃんの所に行きましょう〉

【解還♪ それと地縛切り♪】【ありがと彩桜♪】


〈怨霊になったのに?

 消えなければならないだろ?〉

蕾は消えたが治癒に包まれていて、自身を確かめている。


〈そんなの誰が言ったんです?

 きちんと解けば、ただのユーレイです♪〉

〈ソラ兄の浄破邪、強いから大丈夫です♪〉

彩桜がソラと並んだ。

〈俺、ソラ兄の相棒、彩桜です♪

 沙由さんと勝士喜くん、ウチに居ます♪

 だから〈一緒に来てください♪〉〉


〈あの女達は?〉


〈〈魔女は退治しました♪〉〉


〈そんなにも強くなっていたんだね〉しみじみ。


〈ソラ兄、ラストあのお城~♪〉

〈そうだね。父さん見ててね♪〉瞬移。


〈あ♪ コレ持っててく~ださい♪〉

保護珠を渡して瞬移した。



〈ん? 父さん? 母さん?〉珠を覗き込む。


〈見えてしまったか〉〈そうみたいね♪〉


〈護れなくてゴメン〉


〈もう皆ユーレイだ。謝らなくていいよ〉

〈ユーレイも楽しく生きられるってソラくんが教えてくれたわ。

 だから一緒に生きましょうね♪〉


〈そうだね。一緒にね〉


 少し離れた場所が明るくなり、おとぎ話的な城がライトアップされたかのように浮かび上がった。

暗闇ではないので、ほんのりとなのだが。



 ソラと彩桜が戻った。

〈負けた悪霊魔女、気絶して死神に連れてかれたみたいで~す♪〉

〈禍だけだったから楽勝でした♪〉

〈み~んな一緒に邦和に帰ろ~♪〉

〈あれ? スザクインさんは?〉

〈居にゃいねぇ。どしたのかな?〉



―・―*―・―



【スザクちゃん! この馬鹿トシ封じて!】

【ヨシちゃんの御札を破るくらいに強いのに?

 ルナール(オフォクス)様の所に誘導しましょっ!】

【それしかありませんよヨシさん】


ジョーイチ(ナンジョウ)くんは応援を集めて!】


【はいっ!】逃げるように消えた。



―◦―



 トウゴウジとホウジョウの方も、女神達をキツネの社に運ぼうと決めたところだった。


〈すまぬな……私は後でよい。王妃様方を先に。

 社の神に、あの男神は呪を受けていると伝えてもらいたい〉

抱き上げようとしたトウゴウジを止めたサマルータは、苦痛が滲む表情で先に運んでもらいたい者を視線で示した。


トウゴウジは弟子達に素早く指示をした。

〈トシの呪とは、どのような?〉


〈あの、分からず屋状態が悪化する。

 力の神だけに、厄介極まりない。

 しかし、強い神力を持つのだから、神だと自覚すれば跳ね返せるだろう……〉


〈ありがとうございます!〉

瞬移が可能な者は限られているので、トウゴウジも運ぶ側に加わった。



―◦―



 夜明けが近付いている邦和に戻った彩桜とソラは、磯前(いさき)家の居場所にした彩桜の部屋のサーロンスペースに勝士を案内して波輝(なみき)美海(はるみ)を保護珠から出すと、何やら騒がしい稲荷山へと瞬移した。

【あ、スザクインさん居た】【大騒ぎだねぇ】

先ずは状況把握から。


【騒ぎの原因は】【トシ兄だねぇ】


【これって不穏禍? まさか呪!?】


【仕方にゃいにゃ~ん。

 昇華闇障暗黒、激天特大闇呼吸着!!】

【術光矢封乱悪牢!!】放つ!


光矢に背を押され、暴れながら騒ぎながらで闇呼玉へと吸い込まれた。


【【滅禍浄破邪大っ輝雷!!】】バリビシッ!!


やっと静かになった。


【ドラグーナ様ぁ、どしたら治るのぉ?】


【治すって……解呪しかないよね?】


そこに女神を抱えたトウゴウジとホウジョウが瞬移して来た。

【あら?】


【うわわ。ソレしたのもトシ兄?】


【そうらしいわ。

 トシが神様だと自覚すれば呪は解けるそうよ】

急いでいるので通り過ぎた。



【ソレって大問題だよねぇ】【そうだよね】


【試してみるよ。

 カケルの解呪には参考にならないけどね】

桜ドラグーナが抜け出て闇呼玉を握った。

【先ずは雁字搦めな意思塊ウンディを解放して目覚めさせないとね】

唱え始めた。



【つまり、お兄も呪われてるんだね?】


【そぉみたいだねぇ。確かめ行こっ】


【離れて大丈夫なの?】ドラグーナを見る。


【この距離なら楽勝なの~♪】瞬移♪


【待って彩桜!】瞬移!







勝士と魔女との最終決戦の場はグリーンランドでした。

地星のグリーンランドは今は独立国ですが、築城した当時はデンマーク領、つまり王国の一部だったんです。


漢中国の2代目悪霊魔女・水鈴(シュイリン)は、初代悪霊魔女な母・富鈴(フーリン)が魔女の丘で眠り修行に入った後、真っ黒悪霊を継いで悪事を続けていたんです。

グリーンランドまで追ってきて禍攻撃したものの、勝士に負けて気絶していたところを死神に連行され、途中で脱走して神世に潜伏していたようですね。


勝士も禍に包まれて命を落としましたが、その禍ごと自身を封印できるくらい、とんでもなく強い神力持ちだったんです。



さて……鍵達(トシとカケル)は呪を受けていたようです。

これも試練なんでしょうか?



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