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キリュウ兄弟の音楽修行②



 カソーディア城での治癒演奏を終えてマヌルの里に戻り、アミュラの作業部屋前に行くと、イーガスタが相談中だった。

【終わりましたの報告だけだから帰りま~す♪】


【待ちな。手伝っておくれ】


【ほえ?】【行こう彩桜】【ん】


 入ると、イーガスタが安堵の笑みを浮かべた。

それを見てアミュラも笑う。

「そうかい、知り合いだったねぇ。

 信頼してるなら話が早い。

 結婚の絆が取り込んじまったサリーニアを分離できないかと相談しに来たんだよ。

 光と闇の双子がメインだ。

 アタシが支えるからサッサとやっとくれ」

「自由にしてやりたい。頼む」


「ん♪ 頑張る~んるん♪」

青生も頷き、ブルーから貰った術の中から最適を探した。

【絆 切ったら一緒に消えちゃうから先に補強でしょ?】

【そうだね。治癒で包んでみるよ】

【うんうん、安心してもらうイチバンだよね♪】

【うん。絆を抜き出す術があるね】

【修復の為の? んと……結婚のだけダメだよ?】

【だからアレンジ。でも結婚の絆は出したら……】

【消えるかもだねぇ。だったら具現化する♪】

【俺が出すから具現化をお願いね】

【補強しながら具現化ねっ♪ 決っまり~♪】

「「では始めます」」


 青生がイーガスタと向かい合い、彩桜はイーガスタの背後に。

光と闇で魔法円を成して唱え始めた。


傷ついたり、そもそもが弱かった絆を修復する為の術は2つ。

より強く長い術を青生が光明を発動して、短い術を彩桜が闇障を発動して唱えた。

青生が唱える術は、結婚の絆に関する他の術に よく現れるフレーズを組み込んでいた。


彩桜の術が終わると、イーガスタの頭上にキラキラ美しい絆が淡く浮かんだ。

【成功だねっ♪ 具現化クレッシェンド!】

最適の強さを探りつつ絆を保つ。


青生の術が進むに連れ、イーガスタから立ち昇る光が絆に合わさっていく。



 青生の術も終わると絆が明瞭になった。

魂護闇呼(たまごあん)吸着ピアニシモから♪】


青生は治癒を微調整しつつ彩桜を支え、彩桜は具現化を最適で保ちつつキラキラ魂の青緑光点達を吸着していった。


その流れが減っていき、やがて出なくなった。


【少ないねぇ……】どぉしよ困ったねぇ。


【鳳凰の命の欠片を加えたら助かるのかい?】


【かも~】


【そんならアタシが親族を連れて来てやるよ】


【長老様?】


【そりゃあ、ず~っと前のだよ。

 ロクに修行もしてなさそうだからねぇ、今は己を保つので精一杯さね。

 だから命の欠片が成せる若者だよ。

 それとイーガスタの子や孫達だね。

 まぁ待ってな】消えた。



 アミュラを待つ間に、サリーニアが再び絆に引き込まれないように気をつけながら結婚の絆を消していった。


【おやまぁ器用だねぇ。

 それじゃあ始めておくれよ】


【は~い♪ だからマディアも鳳凰してねっ♪】

【イーリスタ父様っ、どうしてっ!?】

【いいからいいから~♪】【もうっ!】

エーデラークのままイーリスタに引っ張られて来たマディアが恥ずかし気に鳳凰になった。

【それで、何をしてるんです?】


【お祖父様の奥様を助けるんだよ~ん♪

 命の欠片を足してあげてねっ♪

 マディアがイッチバン羽色近いんだからねっ♪】


【はいっ!】それならそうと早く言って!



【ラピスリはアタシと一緒に支える側だよ。

 保ってる青生(カイヤナ)彩桜(モルガナ)も支えてやっとくれ】


【はい】

青生の後ろで姿を消していたが、龍狐姿で並んだ。


【瑠璃?】【後で……頼む】【うん】?


【神王殿に居たんだ。会議は中断させたよ。

 その続きは一緒に頼むよ】


【そうですか。

 瑠璃、一緒に行くから安心してね。

 彩桜は先に戻ってね】【ほえ? どして?】

【講義は見ていなかったの?】【録画中~♪】

【また演奏会になりそうだからね】【そっか】

講義が終わるのは まだ先だが、説明中の理論を実演してほしいと騒がしくなっていたので。



 絆を消していく中で、青生も彩桜もイーガスタの優しい想いを拾知してしまっていた。

最強の絆に抗い、サリーニアが消滅しないようにと神力を注ぎ続けていた事も。


それでも長い時の流れは残酷で、サリーニアはごく僅かになってしまっていた。

今、イーガスタは強い後悔の念に苛まれながら必死で命の欠片を込め続けている。


あの時もっと言葉を選んで説得していれば。

本気で抗い、拒絶しておけば――そんな後悔が拾知に流れ込んでいた。


【これから一緒に修行して、もっかい結婚したらいい思うの~♪】


【そうだね。とても綺麗な絆だったからね】

サリーニアの想いも一緒に煌めいていたので。


【うんうん♪】【サクラっ!】【ほえ?】

(ランマーヤ)が背中に現れた。

【どしたの?】


【放課後になったから音大に行ったら狐儀様だし! 心配したんだから!】


【そっか。ゴメンねぇ】


【これは? 何をしてるの?】


【イーガスタ様のサリーニア様 助けるの~♪】


【え? そういう事ねっ】鱗を緑に。【再生!】


【ランありがと♪

 じゃあ俺は治癒クレッシェンド!】



 その奮闘は2講義目が終わる頃に ようやく安定を確かめて終える事が出来た。

【気がつくのは先の話だが、もう大丈夫だよ。

 よく頑張ったねぇ。

 イーガスタ。そんなに己を責めるもんじゃないよ。

 サリーニアも理解してるさね。

 一緒に修行して、また結びゃあいい。

 イーリスタは結ぶのが大好きだからねぇ♪】

【お祖父様~♪ 僕に任せてねっ♪】


【ありがとうございますアミュラ様、皆様。

 ありがとうイーリスタ】


【そんなのいいから~♪】あははっ♪

【ほら祝宴だ♪ 食って回復しろ♪】

現れたスヴァットが大皿料理をドドンと並べて去った。


【【食べよ~♪】】

イーリスタと彩桜が まっしぐら♪

【ラン、食べたら音大ねっ♪】【うん♪】



 素早くエネルギー補給した彩桜は紗を連れて音大へ。

それを見送ってから青生はマディアに寄った。

【何があったんです?】


【僕としてはラピスリ姉様にも死司に遊びに来てもらいたくて話していたんですけど、そこに来た浄化最高司様が勘違いしてしまって、全職域に渡る某かの役職にと話が大きくなってしまったんです。

 皆様、ピュアリラ信奉者ですので舞い上がってしまって……】


【そうですか。

 では、あまりお待たせするのも申し訳ありませんので参りましょう】


【はいっ。……あの、、すみませんでした】


【謝らないでくださいね。

 何も問題はありませんので。

 瑠璃、そろそろ行こう】【ふむ】

瑠璃が青生とエーデラークを連れて術移した。



――神王殿、大会議室。

其処には全最高司と最高司補長、宰相や大臣達、アノーディア王と王妃も揃っていた。


現れた今ピュアリラ(ラピスリ)を見ての騒めきが歓声かのように大きくなる。


【エーデラーク様はお席に】にっこり。


青生は瑠璃を支えて歩き、演説台に上がった。

「今ピュアリラの夫、今ブルーです。

 俺達はまだ当面、人世で暮らすつもりです。

 再生最高司補長としての職務も月に5日までとさせて頂いています。


 それを維持しなければならない理由は複数ありますが、今は1つだけを。

 地星の芯である人世を保つ事は、神世をも支え保つ事となるのです。

 それを疎かにすれば、また災厄に見舞われます。

 地星の未来を掴み取る為に、今ピュアリラは人世に居なければならないのです。

 どうかご理解ください」


「死司に出向かれていたのは?

 最高司補にと聞こえたのですが?」

騒ぎの源になった浄化最高司だ。


「今ピュアリラは以前、死司最高司補をしていました。

 今ピュアリラとエーデラーク様は姉弟です。

 ですから最高司補の肩書きで、自由に遊びに来てほしいとのお話だったと伺いました。

 それだけで、職務を果たすつもりはありませんよ」


「姉弟ですと!?」


「はい♪ 四獣神ドラグーナ様の御子ですよ。

 ですから親しくて当然なんです」


「そうでしたか……」


「あまり落胆なさらないでくださいね。

 どのくらい先とは申せませんが、再誕中の真ピュアリラ様を神世にお連れしますので。

 その再誕にも今ピュアリラは神力(ちから)を注いでいますので、もう帰ってもよろしいでしょうか?」


響動(どよ)めきがクレッシェンド。


「あっ、あのっ!」観測最高司が挙手。


「どうぞ」


「死司と再生に関わる新たな役職を決めてもよろしいのでしょうか?」


「死司では働きませんよ?」


「それでも必要かと!」


「でしたら どうぞ。

 そのくらいなら いいよね?」「ふむ」

「本当にエーデラーク様に会いに、遊びに行くだけですからね」


「ええ、ええ。それはもう!

 白の衣も、黒の衣も、お美しいので……はい」

頬を染めている。


コスプレ扱いかと呆れつつ

「では、名称はご自由に。

 俺達は人世に帰りますので」

これ以上、此処に留まって居ては瑠璃の逆鱗にゾワゾワが届いてしまうと術移した。




――ウィーン、国立音大の講堂上空。

【狐儀殿、問題はありませんよね?】


【ですが、戻られたのでしたら私はメイの所に。

 急患のようですので】


【そうですか。では――】入れ換わり成功。

【――ありがとうございました】


【これはこれで楽しいものです】ふふ♪



【ん? 瑠璃?】何処?


【私は真上で聴く。ランマーヤも居るのでな】


【うん、楽しんでね♪】


【そうさせてもらう】


【今夜は泊まってね♪】【ランもねっ♪】


【修行の邪魔なのでは?】【叔母様ってば!】


【邪魔だなんて】【ナイナイ♪】


【では、そうさせてもらう】【うんっ♪】


 前日の演奏会に比べれば、理論通りと理論に反する演奏とを繰り返すのは確かに修行と言えそうだとも思いつつ、狐儀が言っていたように『これはこれで楽しい』と実感したのは青生だけではなかった。


【同じ音を奏でているのに……面白いよね】


【うんうん♪ 面白~い♪

 兄貴達と一緒、楽し~い~♪】


【そうだね♪】【【だよなっ♪】】【はい♪】

【その通りだな】【む……】ふ♪


【【紅火が笑った!?】】【む……】睨む。


【兄貴達、仲良しさ~ん♪】【ですよね♪】


末2人の笑い声で兄達も和んだ。

修行も兄弟揃ってなら楽しもうと演奏し続けるのだった。


【狐儀師匠♪ メイ姉も一緒に来てねっ♪

 夜の基礎練、一緒しよ~ねっ♪】


【ではサーロンも連れて参りますね】


【うんっ♪】【彩桜、あの子達……】


【特別学生なんだって~♪

 この講義、受けるのダメで悔しかったんだって。

 だからイッチバン前の席に入れてもらったの~♪】


【彩桜に嫉妬していたのは解決した?】


【うん♪ 俺 話して入っていいなったの知ってるから♪ 友達なったよ♪

 明日 一緒に演奏するの~♪】


【そう。良かったね】


【うんっ♪】







少年達の強い嫉妬は彩桜を親と兄達の七光りのくせにと誤解していた事から生じたものでした。

それが前日の生霊を膨らませるくらいに強くなっていたんです。

ですが演奏も忍者としても兄達と遜色ないと認め、彩桜の優しさに触れて、嫉妬は消えて友情が芽生えたんです。


神世に行けば大神として忙しくなってしまう彩桜ですが、人世では ただの中学生でいたいんです。

そうは問屋が卸しませんけどね。



キリュウ兄弟の音楽修行は東京でのコンサート込み込みで8月末まで続きます。

以降も10月の選抜学生との演奏会まで通いますけどね。



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