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魔女の拠点巡り⑧エスパーニアの大屋敷



 邦和は早朝だが欧州は夜中なので、先にホーランドを調べて禍や魔女を感じないと確かめた桜マーズと空マーズは、今はエスパーニア上空を飛んでいた。

【あれれ? 王様、お忍び?

 お休みなのかにゃ?】方向転換。


【夜中にお忍びって……でも確かに王様だね。

 周りに居るのはSPさんかな?】

ロシア大帝城での会合で騒ぎを起こしたので、よ~く覚えている。


【あの大きなお屋敷……】

街からは離れた遠くに灯りが見える。

エスパーニア王の車が走っているのは、その屋敷への一本道だった。


【うん。たぶん魔女のだよ。

 高嶺さんの写真には写ってなかったけど】


禍隷臭(かれいしゅう)するもんねぇ】

一緒に降下して瞬移。



――後部座席の王を挟んで現れた。

「桜マーズ参上です♪」「空マーズ参上です」

「何かありましたか?」「悪霊ですか?」


「そうか、来てくれたか。ありがとう」


「あのお屋敷ですか?」「人が居ますね」


「君達ならば……」

運転席との間を防音壁で遮った。

「……救出を頼みたい。

 次男が監禁されている可能性があってね」


「「承知」此処でお待ちください」

「必ず王子様をお連れしますので」一緒に瞬移。



――上空。念の為、姿は消している。

【結界じゃなくて禍の地雷だねぇ】


【うん。でも怨霊化用じゃない、のかな?】


【強いから入ったヒト滅する本気な禍だねぇ。

 浄滅しなきゃね】


【誰の持ち物なのかも探るからね】


【うんっ♪】瞬移。



――庭の禍と禍の間。

向かい合って両掌を地面に。

【せ~のっ【滅禍浄破邪大っ輝雷の極み!!】】

この庭もすっかり枯れているので

【続けて【浄治癒の極み! 拡散!!】】

ピッカン☆ドッカン2連発だ。

爆発騒ぎにならないように神眼にのみにした。


爽やか美しい薔薇園になった。

残念ながら深夜で真っ暗なのだが。


屋敷内に神眼を向ける。

【操られてるヒトばっかりだねぇ】


【所有者は高嶺さんだけど、他の魔女も来てたみたいだね】


【そっかぁ。ベッドで寝てるヒトが王子様?】


【……うん。でもボク達くらいだね】


【だよねぇ。俺、藤慈兄トコ行くから高嶺さんの姿で入ってみて。

 でもベッドに近づかないでね】


【執事さん達と話してみるよ】と~っても嫌々。


【解毒薬 貰って戻るから~】瞬移。



 高嶺(サーロン)が瞬移して現れても執事達は驚く様子もなく跪いた。

「麗しの女王様。何なりと」


「カルロ(王子の愛称)の様子は?」


「お健やかに。女王様をお待ちでしたが、お休みになられました。

 いかがなさいますか?」


「眠らせてあげて。

 今日は話し相手が欲しかったの。

 皆、集まってサロンで。どうかしら?」


「では、お茶をご用意いたします」

立ち上がり、数人が残って深々と礼。



 若い執事達に囲まれ、その中でも魔女好みでエスコート役にされたらしい執事に連れられてサロンに向かった。


 ヨーシェそっくり……ってボク似?


降り積もる『うんざり』に()に傾きそうになってしまうサーロン(ソラ)だった。



―◦―



 キツネの里で藤慈に解毒薬を頼んだ彩桜は、少し時間が欲しいと言われて出来上がりを待つ間にエスパーニア王の車に戻った。

「少しお話を。よろしいですか?」


「必要であろうな」


「経緯が知りたいのです」


「ふむ。カルリオナジオ(カルロ)と第2王子専属の者達のうち男ばかりが城内から忽然と消えたのは昨年の11月だった。

 衛兵も含まれておったが故に、彼等が拐ったものとして極秘に捜索しておったのだ。

 経緯は……その程度だ」


「拐ったのは魔女です。

 男性達は魔女に操られていますが、献身的に王子様のお世話をしています」


「ではカルロは生きているのだな?」


「はい。魔女の目的は女王になる事です。

 最終的には世界を統べる女王へ。

 その為の足掛かりとしてロシアもエスパーニアも狙われたんです」


「そうか……ロシアの事とも繋がっておったのか……」


「はい。そのロシアでの会合の際に取り憑かれてしまったのは、この件で心が平静ではなかったからなんですね?」


「……そうであろうな。

 邦和の女が所有する、あの屋敷に連夜 灯りを見るようになったと報告があり、本格的に調べ始めた頃であったからな。

 しかも入った者は皆、命を落とすか行方知れずとなってしまうのだ。

 故に捜査が難航しておったからな……」


「熟練者は黒く染まって亡くなり、見目の良い若者は行方知れず、ですよね?」


「言われてみれば、その通りだな」


「魔女は面食いなんですよ。

 今は魔女に操られていますが皆さん無事です。

 彼らも被害者です。

 彼らに罪はありませんので、ご配慮をお願い致します」


「ふむ。カルロの世話をしてくれたのだからな。

 して、あの屋敷に来る迄は、何処に潜伏しておったのだ?」


「魔女が所有する建物は多くありますので、転々としていた可能性があります」


「そうか……故に見つからなかったか……」



―◦―



 サロンの高嶺(サーロン)は、男達に最近あった楽しい話をとリクエストしたのに賛辞のシャワーを浴びる羽目になり、全く探りに集中できなかった。


もう下がらせようかと考えていると、

【サーロンただいま♪

 治癒眠するから防護してね~♪】

真上の部屋に彩桜が戻った。


【もう限界だったよ】浄化防護。


執事達が眠りに落ちて倒れそうになるのをソファに座らせたり横たえたり。

仮眠していた者も運んで治癒眠を重ねた。


【まだ居たんだね】


【時差あるから24時間体制みたいだねぇ】


【高嶺さんの魔女は空き時間に自由に瞬移して来ていたんだね?】


【たぶんね~。でっきた♪】


【注射器? でも針は?】


【神世物質してもらった~♪

 針ナシでも注入できるの~♪

 はいサーロンも♪ 1人1本分ねっ♪】

大きな瓶から注射器へと吸い上げている。


【王子様は?】


【ベッドの解呪してもらってる~。

 浄化を込めて、額にね】注入~。


【額じゃないとダメなの?】恐る恐る注入。


【解呪コミコミだから~】


楽しくない作業だが解決の為にと頑張る彩桜とサーロンだった。



―・―*―・―



 その頃、稲荷堂の作業部屋ではカケルを指導しようと気合いを入れていた理俱が、始めて数分でギブアップ寸前になっていた。


【お~い紅火、昨日は どうやって指導したんだ?】

結局、前日はカケルを放置していたので自業自得だ。


【神力漏れには気付いていたが、修正すらも出来ぬ程度にしか導けなかった。

 理俱の好きに指導してやってくれ】

今日も世界中を巡るつもりなので急いで機材を調整中で狐儀に説明中。

理俱の相手はしていられない。


【うわぁ。兄様も笑うなよなぁ】


【頑張ってくださいね】ふふ♪


【ったく~】「おい、瞑想は?」


「指導してくれるんじゃなかったのか?」


「己で乗り越えるしかないんだよ!

 心を無にしろ! 無にする事だけに集中だ!」

三日月鎌を頭上でブンブン回している。



【お兄~、ちゃんと座って目を閉じてね】


【その先は?】


【雑念を追い出してね~】

カケルの額に肉球ぴと。

【強制爆睡修行~♪ 倒れないよ~に固める~♪】


カッチコチ状態で眠った。


【静かになった~♪】【うんっ♪】

力丸とモグが大喜び。


ショウも元の位置へ。【瞑想しよ~♪】



【これでいいのか……?】

自問自答にしかならないので、カケルの額に手を翳して調べ始めた理俱だった。



―・―*―・―



 サロンの男達は自然に目覚めるのを待つばかりとなったので、彩桜とサーロンは王子の部屋に行った。


【呪と状態異常は全て解いたよ。

 幼い心には耐えられそうになかったから魔女との記憶は封じたが、余計だったか?】

サマルータの表情には『嫌なものを見てしまった』がアリアリだった。


【ううん。ありがとございます】

彩桜の表情には見付けられなかった悔しさがアリアリだ。


【彩桜、命が無事だったのを喜ぼうよ。

 理子さんと鳳子さんの魔女は他の魔女とは接触してなかったけど、きっと連携していたんだよ。

 まんまと翻弄されて遅くなってしまったけど、それでも今、災厄までに全部 解決しようよ】

【彩桜、魔女達が焦って動きを大きくしたのは思いの外マーズが手強かったからだ。

 失敗なんぞしていない。

 この事に当たる時が今であっただけだ。

 前を向き、次に向かえ】

【そうですよ。私達を助けたことまで失敗だなんて思わないでくださいね】

シャナカリューが癒しで煌めく両手で彩桜を抱き締めた。


【ありがとございます。

 俺、王様と話したら次に行きます!】

【あっ、リグーリ様がお困りですので、お兄の魂を確かめて頂けますか?】


【利幸も頼まれている。任せよ】

半ば苦笑な笑顔のサマルータが消え、他の女神達も似たり寄ったりな笑顔で続いた。



【彩桜、行こう】【うんっ♪】




 エスパーニア王には災厄についても少し話し、あの屋敷も避難所にするから壊さないでと頼んで踏み込んでもらった。

もちろん魔女は退治しているし、呪やら罠やらは全て解いているとも、操られていた間の記憶は無いとも話している。



 王が王子を抱き抱えて屋敷から出たところまでを上空から見届けた二人は、次を何処にしようかと残りの写真から考えを巡らせていた。

【魔女が勝士さん連れてったら拠点だけどぉ、勝士さんが場所変えしたら……】


【可能性あるよね。魔女の拠点じゃ不利だから。

 でも……そうなると場所なんて絞れないよ。

 探ってみるけどね】

【あら、あの大屋敷の不穏を消してくれたのね♪

 もしかしてスコットランドのお城も?】


【ほえ?】【スザクインさん♪【行きました♪】】


【ありがとう♪ 見回りしていて驚いたわ♪

 此処も不穏が膨らむようだったらお願いしようと思っていたのよ♪】


【あ、そっか。魔女を退治したから膨らまなかったんですね?】

【萎んでたかも~】


【そうなのよね♪ もう1つには、これから?】


【もう1つ!?】【案内してく~ださい♪】

彩桜が手を出した。


握手♪【此処よ♪】


【は~い♪】連れて瞬移♪







とうとう結婚相手を見つけていたらしい魔女。

年齢差すんごいんですけどっ!

それでも救出できた事を喜ぼうと、ナイスタイミングで現れた欧州総括スザクインに連れられて次へと向かいます。



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