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日常に帰ろう



 翌朝の神王殿で輝竜兄弟は神王達に歴史編纂を手伝うと約束して帰宅した。

彩桜は早速アトリエに走る。

「たっだいま~♪ 俺、一時帰国なの~♪」


「お帰り彩桜♪」一斉♪ 「サーロンは?」


「漢中国に一時帰国♪ 明日はコッチ♪」


「あ~そっか」「いつまで居られるの?」

「ヘンゲ龍ツアーは終わったの?」

「テレビが普通の番組に戻ったからマーズが見られないって、みんなで話してたんだよ」

「やっぱり部長がマ――」

言い掛けた1年生と、まだマーズの正体を知らない・考えてもいない1年生達は、マーズスタッフな下忍達に引っ張られて部屋の隅へ。


その集まりを見ながら陽太郎が彩桜に寄った。

〈話し方、鹿の神様から習いました。

 秘密は守りますから僕も入れてください。

 あ、兄と姉と弟も〉


〈うんうん♪ 下忍登録しとくねっ♪

 ライブのスタッフお願いねっ♪〉


〈はい♪〉


〈メグル達は? 居ないよね?〉


〈水泳の強化合宿です♪〉


〈あ~、そんなのもあったねぇ。

 ぜ~んぶ元通りなったんだね~♪〉


〈はい♪〉〈輝竜君、そろそろ助けてあげて〉


〈ん、篠宮さん ありがと♪〉〈篠宮先輩も?〉

〈けっこう多いんだよ♪〉

にっこり笑って集まりの方へ。

「マーズはキリュウ兄弟の親友なんだよ♪

 だから俺達兄弟は連絡係なの~♪

 それだけだからジオラマ作ろ~♪」


「どうして先輩達は怒るんですか?」


「マーズに繋がるから、だよねぇ?

 俺もマーズには続けてもらいたいの。

 寄付を受けてるヒト達も困る思うの。

 だから憶測とか不用意な発言とかイヤなの。

 解ってもらえない?」


「それは解りますけど……」


「ウチでお面してないマーズと会うかもなの。

 聞こえちゃうかもだよ? 忍者て地獄耳だから。

 寄付活動、引き継ぎたい?」


1年生達、首を横にブンブンブンッ!


「だったら軽々しく憶測で喋らないでね。

 あ♪ 忍者なりたいんだったら試験いつでもだからね♪

 俺も音忍だから試験官できるの。

 命懸け覚悟できたら言ってね♪」


「オト忍って何ですか?」

「どんな試験なんですか?」

「部長って忍者だったんですね!」


「音楽忍者♪ 音楽修行の指導してるの♪

 試験は複数あるけど覚悟ナイと話せないの。

 俺達も忍者のハシクレだからマーズと一緒にエルサム行ったの。

 世界大震災の復興も一緒にしたの。

 ライブも一緒してるの。

 今は平和なったけど戦争とか災害とか起こったら行かなきゃなの。

 だから命懸け。

 それにね、そもそも忍者は常識外の存在と戦う集団なの。

 悪魔とか悪霊とか、そゆ存在。

 居ないを常識にしてるのはパニックなるから。

 だって普通は見えないんだもん。

 ね、季勇(ときお)くん節勇(みさお)くん」


「うわ、コッチにフリやがった」

「でも確かに憑かれても気づけないよね。

 気絶させられて、勝手に身体を動かされてしまうんだよ」

「だな。俺も動かされちまってたよ」


「アタシもだったんだよね~。

 ホントにコワイんだから。

 その時はコワイもナニもないんだよ。

 後で考えたらゾッとするんだよね~」

美雪輝(みゆき)も真っ黒オバケに操られて大暴れしたんだぁよ~」

愛綺羅(あきら)だってムチャクチャ言ったんだよ。

「覚えてないんだけどね~」」


「輝竜君達が祓ってくれたの。

 本当に命懸け。修行も厳しいの」

「ここに集まる2年生は輝竜君に助けてもらったから、マーズを守りたいって輝竜君の思いを一緒に守りたいのよ」

沙都莉と夏月が美雪輝と愛綺羅に笑顔を向けた。


「だな。彩桜に護ってもらったり、助けてもらったり、常識の外を見せてもらったり。いろいろあったんだよ」

「今年は彩桜が忙しくて殆ど居なかったから1年生は理解できてなくても仕方ないと思っているんだけどね、それでも文化祭に向けて纏まりたいんだよね」


「そーいや凌央、去年の文化祭――」

「今 言わなくてもいいだろ!」

「――古代人の幽霊が出たんだよな♪」


「……そうだね。

 だから僕も常識外を信じるに至ったんだ。

 一般的な意味とは違うけど、疑心暗鬼という鬼だと言ったらいいのかな?

 心の中のドロドロした黒いものが消えたと感じたからね。ん? 彩桜は?」


「恥ずかしくなって逃げたんじゃねぇか?」


『違うんだもん。

 桜マーズ見つけたから楽器準備してるんだもん。

 演奏するんだもん』階下から。

楽器をホールに運んでいるらしく、声が移動している。


「下りようぜ♪」

堅太を先頭に2年生とマーズ学園生が走った。



「行かないの?」陽太郎が階段口で足を止めた。


「陽太郎は納得したの?」

「あんなに知りたがってたのに?」


「マーズの正体より常識の外が知りたくなったから♪」


「そっか」「空飛ぶソリ?」「乗りたいな……」


「ちょっと前、先輩達だけ安土城の幻影を見せてもらったんだって。

 だからソッチ側に入れてもらいたくて♪

 そう思わない?」


「思う!」「ソッチ側か……」

「面白そうだよね♪」「でも怖くない?」


「常識の外は怖い世界なんだと思うよ。

 でもマーズが味方だったら大丈夫じゃないかな?

 怖いものと戦うのが忍者なんだから♪

 だから正体なんて どうでもになったんだよ♪」


「そっか」「確かにね」

「暴いたらマーズの敵になるもんね」

「世界の敵かも」「あ~、だよね」


「だから行かない?」


「行こう」「だよね♪」

「でも……部長、毎日いたよね?」


「忍者活動してた時は神マーズが部長にヘンゲしてたんじゃない?」


「な~る」「そっか~」

なんだか皆、笑いたくなった。

1年生達も笑顔で階段を下りて、チューニング(なんだかご陽気な)音が聞こえるホールに走った。



―◦―



 演奏会が始まった頃、狐儀に神世を案内してもらった悟と竜騎もキツネの社に戻った。

瞑想する為によく使っている部屋に入ると、

「銀河ちゃん!」「夕香ちゃん!」

二人が向かい合って瞑想していたので駆け寄った。


「「お帰りなさい♪」」


「「ただいま♪」でも勉強会は?」


「輝竜君が戻っていて演奏会するって」

「それで1階に下りたら、社で待ってって」

「大勢だから居なくなっても大丈夫って。

「だから待ってたの」」


「演奏会?」「彩桜のリサイタル?」


「桜マーズ君と一緒によ」

「久世君とかも一緒にね」


「あ~そうか。1年生達に別人だと近くで見せようって作戦だな」

「じゃあ僕達も分身と一緒に行く?」

「そうするか。ん? サーロンは?」


「漢中国に一時帰国って言ってた」

「明日は来るらしいわよ」


「ま、アリだよな」「そうだね」


「あのね、輝竜君がキリュウ兄弟は忍者で、マーズは親友だって言ったの。

 今までは否定だけだったのに、どうしてだと思う?」


悟と竜騎は顔を見合わせて手を繋ぎ、視線を交わしながら考えた。

「たぶんだけどな、戦う相手が神様より上の超越者様になったからだろうな」

「僕達も話を合わせないといけないし、気をつけないといけないから、直接 彩桜に確かめてみるけど、たぶんね」


「「超越者様って?」」


「神様は地星を管理してる。

 超越者様は宇宙を管理してるんだ」

「複数いるらしくて、マーズは死滅様と戦うことになってしまったんだよ」

「死滅様が地星を滅亡に向かわせようとしているからな」

「神様を魔にしてるのも死滅様だったんだよ」

「つまり災厄の原因は超越者様だったんだ」

「だからマーズの正体は どうしても明かせなくなったんだと思うよ。

 闇禍モドキに追いかけられた時みたいに、知ってる者みんながマーズメンバーだと死滅様に思われてしまったら護りきれないから」

「今、マーズの正体を知ってるスタッフ達は なにがなんでも護るつもりだけどな。

 と神様からの情報を纏めて俺達なりに考えたけど、やっぱ彩桜に確かめるよ」


【その通りだからコッチ来て~】


「あ、彩桜だ」「聞こえてたんだね」苦笑。

【分身と一緒に行く。

 けど何処に行けばいいんだ?】

【けっこう満席だよね?】


【そろそろ区切りだから、これまでのを2階席で記録撮影してたにして~♪】


【そうか。そうする】「「行こう」」

未来の妻の手を取って瞬移した。



――アトリエホールの2階席。

【あ、本当にカメラがあるね】

【だな。勝手に動いてるよな】


【うんうん。ほっといていいから下りて来て~。

 次の曲からパフォーマーねっ♪】


【おう】【うん♪】

手を繋ぐのを分身と代わり、橙 白マーズが先導して1階席の後方へ。

皆の後ろに予備椅子を並べて腰掛けた。


「橙と白♪ 自動撮影にしたんでしょ♪

 来て来て~♪」


「お~い修行は? 桜と空はサボリかよ」

桜も空も彩桜の分身だ。


「じゃあ1曲だけ~♪」


「ったく余裕綽々な特忍だよなぁ」

言いつつステージへ。

「マジで1曲だぞ。

 俺達は特忍を目指してる最中なんだからな」


「うんうん♪

 俺と空は特忍の上 作ってもらう~♪」


「コノッ!」「逃~げる~♪」

サッと翼を広げて飛んだ桜と空を橙と白も翼を広げて追った。


「んもぉ、そのまま上で踊ってね~♪」

彩桜はサッサと『強き絆』のイントロをギターで弾き始めた。


子供マーズ達は飛んでいるのに音が重なる。

「あ♪ 兄貴達~♪」「トーゼンだろ♪」

ドラムを叩いていた空に代わって黒瑯が笑う。

当然ベースは俺だと紅火もニヤリ。


「そうですよ、声を掛けてくださいね♪」

シンセサイザー要塞には背中合わせで藤慈と金錦。


ブラス音はシンセに任せてギターで加わった白久と青生が彩桜に笑顔を向けてから『歌え』とセンターマイクを見た。


「ん♪ 俺、メーアする~んるん♪」

ギターも弾き続けているが声を乗せた。



 間奏のギターソロを兄達に譲った彩桜が一歩下がると、ガシッと大きな身体に抱き止められた。

「ほえ?」「一緒に歌うぞ♪」「メーア♪」


2番に入る直前、わらっと忍者達が現れた。

そんなに広くはないステージでも宙でも上手く位置取って踊り始める。

【彩桜、ボクも入るからね】【ん♪】

空マーズも彩桜の分身からサーロンに。


【でもSo-χ(ソーカイ)いいの?

 響お姉ちゃんは?】


【ソッチが分身♪

 ボクは両方 楽しむんだからね♪

 それより紗ちゃんは?

 ほったらかしたら怒らない?】


【家族団欒してたからぁ。

 でも話してたから来る――来た~♪】

言い終わる前にチビッ子マーズが元気に加わっていた。

【じゃあ黄緑(わかば)する~んるん♪】分身×4出す~♪


【本当に彩桜って器用だよね♪】


【えへへ~♪】るんっ♪



 地星と月を覆っている結界は維持している。

そこからは些細な違和感すらも伝わってきていない。


本当に平穏な日常が戻ったのだと実感した。

滅の主が考えを巡らせている束の間なのかもしれないが、それでも、陽の気を保つ為にも今は安堵し、楽しむべきだとマーズは皆、音楽に集中した。


備えなければならない。

護らなければならない。

しかし重々しく捉えるのではなく、それは協神力(きょうりょく)で成せると信じて、一瞬一瞬を全力で楽しみながら未来を掴み取ろうと心に決めて。







ここでユーレイ武勇伝の外伝は終わりですが、オマケな後日談を少々続けます。



桜「その後はマーズvs死滅様でしょ♪」


凜「へ? 考えてないよ。だから後日談!」


桜「戦う戦う詐欺?」


凜「あのねぇ。次は三界奇譚2なの!

  ソッチでアオ達が戦うからコッチは終わり!」


桜「コッチ未完でしょっ! 中途半端!」ぶぅ。


凜「そんなに書けないってばぁ」


桜「老眼だから?」


凜「あのねぇ」じと~。


桜「コワぁいのぉ。逃~げる~♪」消えた。


凜「次、ねぇ……彩桜の子供世代になるよ?

  20年後ならまだしも30年後だったら……ねぇ」


桜「白久兄とか還暦過ぎちゃうねぇ」戻った。

白「ナンで俺だけ出すんだよっ!!」来た。

桜「『とか』て言ったもん。

  白久兄 還暦マーズ~♪」

白「彩桜コノッ!」

桜「逃~げる~♪」瞬移♪

白「待てコノッ!」追っかけ瞬移!



私も逃げましょ♪



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