表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/69

最終話 おはよう

 からからと、赤い羽が回っている。


 目覚めたヤナキの視界には白い天井と、端にかざぐるまがあった。


 「………………おはよう。ヤナキ。」


 声の主の方へと首を向ける。そこにいたのは明羅(めいら)であった。彼はベット側のパイプ椅子に腰掛けている。そこでようやく、自身が夢から覚めたことを悟った。


 「おはよう明羅(めいら)。………夢から覚めたんだな。」

 「……………あぁ。」


 数センチほど離れた窓から陽光が差し込む。既に夏は過ぎ去り、秋へと移り変わろうとしているらしい。開いた窓からは日差しのみでなく、ほんのり冷たい風が吹き込む。


 「のう、ヤナキ。」

 「なんだ。」

 「……………儂は、父様や母様のようになりとうない…。」

 「………そうか。」

  

 そうだろう。ヤナキは心の内で同意する。何せ、彼の両親は周囲へ信仰を押し付け、狂信的な気配すら感じさせているのだ。故に、彼らのようになりたくないことは理解できる。


 「じゃが…儂は結局2人と同じじゃった。夢の中で、神官をやって、お主らを意のままにしようとした…。」


 忌み嫌っていた両親と同等または、それ以上のことをしてしまった。夢の中と言えど、その事実は揺るぎようがない。

 ヤナキは気落ちしている明羅(めいら)へ手を伸ばす。励ますように、奮い立たせるように肩を叩く。


 「でも、気付けたじゃねぇか。なら一歩前進だな。これからだぜ!これから!」

 「…これから……そう、か…。」


 明羅(めいら)は一度、静かに瞳を閉じる。網膜には未だ、夢の中の島が浮かぶ。贄の儀式を執り行う自身の姿がありありと浮かぶ。自身は結局、忌避する大人になってしまうのではないか。

 恐れは完全に消え去った訳では無い。しかし、目の前には眩しいくらいに笑う友がいた。


 「…………ヤナキ。儂がもし、また、こうなってしまったら止めてくれるか?」

 「当たり前だ!……いや、今度はその前に止めるぜ!」

 「………そうか。」

 「お前も、俺が嫌な奴になりそうだったら止めてくれよ!」

 「………あぁ。勿論。」


 2人の友は約束を交わす。これからも進むために、共に歩むために。


 静かな密約の外では、何やらちょっとした騒ぎが起きているのか、喧しい声が壁越しに聞こえてきた。


 「忍法!床すべりの術でござる!」

 「コウガさん!スリッパで遊ばないでください!全く!」


 何故か懐かしいような声がする。ヤナキが見知った声であるのに。そんなおかしな感覚に囚われながらも、ふと微笑む。本当に、皆が目覚めたのだと実感したからだ。


 瞼を開けた少年少女。彼らを歓迎している空は、厚く覆われた雲から光を差し向け祝福していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ