第62話 いざ乗り込まん
ミキは自身と瓜二つの少女と重なる。そして瞬きをすると、あっという間に友のいる空間へと元通り。
「ミキちゃん大丈夫?異常なし?」
スイが心配そうに顔を覗き込む。ミキはあんまりにも大事があったような顔をしている彼女を見て頬を緩ませる。
「あぁ。異常なしさ。」
「そっか。良かった…。」
「ということは、付喪も無事に手に入れられた、ということですね。」
冷静に場を収めたコユキは、ミキが手にするロングコートへ視線を投げる。事実、ミキは付喪の試練を乗り越えて協力を得ることが出来た。そのことを示すためにも、コユキの言葉に頷く。
「勿論手に入れられたよ。」
「ま、まぁ、考えて見ればミキちゃんは頭良いもんね!もうひとりの自分に会ってもすぐ論破しちゃうよね!」
「ふふっ。そうでもないさ。」
眉尻を下げ笑う。嘘はない。確かにミキはもうひとりの自分に対してやや劣勢を取ってしまった。結果としては認められたので問題はないが。
「これで、3人とも付喪を手に入れられましたね。」
「うん。………てことは、神社に乗り込むんだよね…。明羅くんを止めに…!」
当初の目的を再確認し、3人は決意を固める。互いの瞳に映る表情は迷いなく、決定に異論もない。
「よし。…それじゃあ、神社へ向かおうじゃないか!」
「はい!」
「うん!」
ミキの音頭を皮切りに皆は石垣に囲まれた家を出る。目指すは籠目島の中心にそびえる山。その中に、明羅のいる神社がある。無論、そこに明羅がいると決まりきってはいないが、確率は高い。
緩やかな斜面を登りつつ、対峙するであろう少年を頭に浮かべる。
「……そう言えば、2人は明羅さんに詳しいかい?」
「え?ううん。だってうちの両親が明羅くんとは遊ぶなって。」
「私もです。……その、彼の家は中々独特でしたから…。」
口々に言う意見にミキも心の内で同意する。彼女もまた明羅を遠ざけるよう言いつけられ、盲目的に従っていたのだ。しかし、仕方がないと正当化してしまいたくもなる。何せ明羅の家が営む神社は押し付けがましさを体現したかのような存在だったからだ。
怪しげな札やお布施の強制は勿論、家にまでの催促が止まらずいつしか島の住民は神社を危険視するようになった。そこの子である明羅もまた標的となってしまったのだ。故に3人は、いや彼女に限らず明羅と深く関わった人間などいない。
「あっ!でもヤナキくんなら詳しいかもね!仲良しっぽかったし!」
「ふむ。ヤナキさんか…。恐らく彼もまだ病室で眠っているだろうね…。」
「ですね…。目覚めた人がいると言う話は聞きませんでしたし…。」
未知の存在である少年像を語り合う3人の視界には、遂に赤い鳥居が入る。この先こそが明羅の居る場所だろう。
先程までの緩んだ気を締め直す。背筋を伸ばして、3人は石段の向こうにある赤い鳥居をくぐるのだった。




