第59話 次なる目標
包丁に触れたコユキはスイ同様に、しばらくの間虚空を眺めていた。反応はない。スイとミキはそんな彼女を見守る。すると遂に、コユキに動きがあった。
「…………私、は………。」
「コユキちゃん!平気!?」
瞬きをして周囲を見渡す。そこには友2人の姿が。今度こそ正常になった視界に安堵し、コユキは先までの出来事を説明することにした。
「はい。へいき、です。………私もスイさんのようにもうひとりの自分と出会いました…。」
「ほう。それで?」
興味深げにミキはコユキへ詰め寄る。コユキは息を吸い、頭の整理を行う。
「それで…。聞いたんです。妖怪九十九を止めるには、スイさんの持つ鍬や私の触れた包丁のような付喪が使えると。」
「使える、か。……具体的な用途については何か言っていたかな。」
「具体的…ではありませんが…。ただ、妖怪九十九の見せる夢に割り込めるそうです。他の機能も聞いたのですが…その、別の話に変わってしまって…。」
「そうかい。ありがとう。」
2人の会話を耳にしていたスイ。彼女はコユキの話に驚く。何せ、スイ自身は付喪について全く疑問を持つことなく、また質問をすることもなかったからだ。今となっては、何か情報を得るためにもう少し自分と話せばよかった等と考える。まぁ、スイはコユキやミキと違い賢い方ではない。故に、質問を捻り出したところでたかが知れているだろう。
そう結論付けて、取り敢えず不確定な事柄は頭脳担当の2人に任せようとひとり頷く。
さて、頭脳担当のひとり、ミキは先の話を己のうちにある疑念と共に組み合わせていく。コユキの聞いた話では、やはり島民が昏睡状態に陥っているのは妖怪九十九の影響らしい。そして、彼らは夢を見ていると。対抗する術としては、妖怪が宿る付喪が有用。そこまで事実を組み立て終えると、切り替えるために手を叩く。
「新たな情報も得たことだ。次の付喪を探しに行こう。コユキさん、動けるかい?」
「はい。……次の付喪というと…ミキさんに縁のあるもの…ですね。」
スイは首を傾げる。付喪は妖怪の力が宿るものと説明されたが、宿る対象が限られているというのだろうか。例えば、ひとりの人間の近くに必ず一匹妖怪が取り付くだとか。考えていても仕方がない。スイは疑問をストレートに口にする。
「次はミキちゃんの探すの?なんで?順番とかあるの?」
「いや、そういうわけじゃない。ただ、妖怪九十九というのは大切にされた道具へ宿るとされてるからね。ひとりの人間に最低でもひとつはあると考えているのさ。」
「私とスイさんは見つけましたから、ミキさんのを探す、ということです。」
2人の補足を受けてなるほどと拳を手のひらへ打つ。やはり頭脳担当の2人は頼もしい。スイは納得して、ミキの付喪探しへついていくことにするのだった。




