第57話 宿を探索せよ
ミキの提案から付喪集めをすることになった3人。彼女曰く、付喪は思い入れの強い物が変化してなるものらしい。その為、3人はそれぞれ家に向かうことにした。
「まずは私の家ですね。……どんな付喪があるんでしょうか…。」
『かざぐるまの宿』へ向かう道すがら、コユキはふとそんなことを呟く。後ろを歩くミキは頬をかいて答える。
「まぁ、付喪がどこにあるか、いくつあるかは定かじゃないからね。コユキさんの家にあるかは分からない。」
「でもコユキちゃんの家ふるいし、付喪とかわんさかあるかも!」
楽観的なスイに安心感を覚えつつ、コユキは微笑む。
「ふふっ。そうですね。持ちきれないほど見つかるかもしれませんね。」
そんな他愛もない話をしていると、古びた宿が視界に入る。建物の前には消えかかった黒字で『かざぐるまの宿』と書かれていた。コユキを先頭に、3人は宿へ入る。当然ながら出迎えはない。強いて言うならばしんとした空気が少女らを歓迎している。
「うぅ。なんか怖くない?」
スイは肩を震わせ、コユキとミキに抱きつく。
「この雰囲気なら、私達にも見える妖怪が出そうだね。」
「ちょっと勘弁してよミキちゃん!」
「スイさん。その時は鍬で一突きして、倒してくださいね。」
「えー!?ムリムリ。絶対ムリ!」
駄々をこねるスイを引き摺り、宿内を探索する。食堂、客室、いずれも人の痕跡がある。無論、誰かが今もなお存在するわけではない。恐らく、島民が眠りについた時そのままの状態であるというだけの話だ。
2階も含め、くまなく探したものの、触れてきた物は何一つとして異常などなかった。
「うーん。あと、何処か探していないところはないかい?」
「そうですね…。あっ、ありました!厨房です!……普段はお手伝いだけなのであまり行きませんが…。」
「厨房…厨房…。もしかしたら、付喪があるかも…。」
床を軋ませ、暖簾をくぐる。従業員用のスペースへ辿り着くと、スイは真っ先にまな板の上にある包丁へ視線を投げた。それは、コユキが夢の中で使用していたものだからだ。その視線に気付いたコユキもまた、包丁を見る。
包丁を見た瞬間、コユキは目が合ったと、本能的に感じた。目の装飾などはない。しかし、確実に、訴えかけられたのだ。吸い寄せられるように。
「コユキちゃん。触るなら、気を付けてね。」
「……………………はい。」
スイの忠告を受け、一歩ずつ、数センチずつ、包丁に近付く。そして慎重に人差し指かろ中指と、持ち手に触れる。
その瞬間、コユキの視界は真っ暗な闇に包まれた。




