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第53話 肩を並べて

 看護師に島へ戻ると伝えた3人は、早速病院をあとにする。外は薄曇りで、どんよりしていた。港に行くと見知った男が籠目島(かごめしま)行きの船を用意している。コユキは背筋を伸ばして話しかけた。


 「こんにちは。……その、私達島に戻りたいのですが、船を出していただけますか?」


 男は人懐っこい笑みを浮かべると、活発に答える。


 「おうよ!任せときな!…………それよかコユキちゃん達、体はもう平気なのかい?」

 「はい。おかげさまで。」


 3人は静かに船に乗り込む。どうやら他に島へ行く人は居ないらしく、最後尾のミキが入った途端に出発した。

 船の縁が波を切り、海に波紋を残す。自然を崩しながらも目下の島を目指して進んでいく。確かに目的へは近付いているはず。だが、デッキに出ている少女らの表情は芳しくなかった。未知への不安か、得体のしれない不気味さのせいか。いずれにせよ、軽快な気分になどはなれなかった。重苦しい空のように、皆の気持ちも下へしたへと縛り付けられる。


 スイは静かに辺りを見渡す。自身が求め、見たかったのはこんな表情をした彼女らなのだろうか。目を細め、自問自答をする。

 いや、そんなはずはない。少女スイが夢、あるいは現実で望んだのはただの平穏、ただの日常だ。故に、凝り固まった口角を上げて言う。


 「いやぁ~、なんかワクワクするね!冒険家になったみたいでさ!」

 「冒険家…ですか?」

 

 怪訝そうな瞳のコユキへ明るく振る舞う。


 「そっ!未知の島の探検!怪しげな原住民に、オカルトチックな信仰!どう?面白そうじゃない?」

 「その場合、私達が怪しげな原住民側ですね…。島に住んでるわけですし…。」

 「確かに!………なら人とか食っといたほうが良いかなぁ。雰囲気出すためにもさ!」

 「………ふふっ。映画の見過ぎですよ。」


 眉尻を下げる彼女は、先よりかは緊張もほぐれたらしい。ほんの小さな綻びが見て取れた。スイは安心する。やはり、友人には笑顔でいてほしいものだ。

 話をしている間、ミキは黙ったまま俯いていた。スイは自身の話があまりにもつまらなすぎたのではないかと不安になり、そっと目をやる。


 「………ミキちゃん、大丈夫?その、さっきから暗いカンジだけど。」


 スイは心配気に顔を近づける。ミキは口に手を当てながら言う。


 「あ、あぁ。平気さ。ただ…。」

 「ただ?」


 海へ視線をやる。遠くを見て、彼女は続けた。


 「そろそろ吐きそうだ…。」

 「え!?」

 「すまない。吐く!」

 「わぁ!?」


 ミキは甲板へと胃の中のものを吐き出す。幸い、外に出てきたのは胃液のみ。ずっと眠っていたのがある種の幸運だった。スイとコユキは船の中へ戻り、デッキブラシやアルコールを持ってくる。急ぎ床を掃除して落ち着くと3人は息をつく。


 「…………………いやぁ、すまないね。おかげですっきりしたよ!」

 「す、すっきりしたのなら良かったです。」

 「そだね…。」


 トラブルはあったものの、3人の顔はぱっと明るい。知るべきことを知るため、皆は心構えをするのだった。

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