第52話 再び彼の地へ
「あら!目覚めたのねぇ。」
小皺が目立つ看護師がコユキたちの病室へ入ってくる。彼女は3人の顔を見て安心したように微笑んだ。その笑みを見たコユキは、改めて自身らが何故病院にいるのか聞くことにした。
「すいません。私たちはどうしてここに?」
「それがねぇ、貴方たちの住む籠目島?っていうところの住民がバタバタ突然倒れちゃったのよ。」
「島のお医者さんもですか?」
「えぇ。それで、島に行き来する船のクルーが外の病院に連絡したの。」
看護師の説明を聞き、目を閉じる。頭が少し痛むものの、倒れる直前のことがぼんやり浮かんできた。確か、いつも通り両親と食事をとっていたはずだ。そして、長い夢を見て目が覚めると病室、というわけになる。
黙って頷いていたミキは内容を咀嚼し終えたのか、小さく挙手をする。
「それで、私達が倒れた原因は分かったんですか?」
「それがねぇ…。ただの貧血なのよ。」
「島の住民全員が?」
「えぇ。」
ミキは瞼をパチパチと動かす。そもそも、彼女は常日頃から食事をとっていたのだ。だと言うのに貧血で倒れるということもおかしい。それに加え、島の住民全てが貧血だというのも異常だ。しかし、目前の看護師を見ても彼女が嘘や隠し事をしているとは思えない。
つまりは、ミキらが貧血だったというのは動かざる事実ということ。理解はしつつも納得は出来ない。
と、思考にふける隣ではスイがベットの側に置かれたあるモノに注意を向けた。
「すみません。このかざぐるまは?」
「あぁ。お見舞いに来た子が置いていったのよ。………少し不思議な男の子だったわねぇ。」
「へぇー。」
何の気なしに息を吹きかける。赤いかざぐるまはクルクルと回る。それを見たコユキに雷を受けたような衝撃が走った。
「『つくも様』です…!」
突然の大声に3人は驚く。だが、スイとミキは彼女の放った『つくも様』という単語を知っている。夢、または現実の籠目島で信仰していた神だ。確かそれは、かざぐるまに宿った神だとされていた。
神の宿るかざぐるま。そんなものが目覚めた傍らに置いてあるのは偶然とは思えない。だとしても、いったい誰がこんなことを。看護師は言っていた。不思議な少年が見舞いに来たのだと。
「看護師さん。見舞いに来た少年の名は?」
「明羅くん…って言ってたわ。」
「!」
3人は明羅なる人物を知っていた。そう、彼は夢のような現実のような籠目島で神官をやっていたのだ。無論、彼女らの知る彼は神官などしていない。将来はなるであろうが、両親のいる今は手伝いに留まっていた。だというのに、3人の見た彼は島の住民を統率していたのだ。
「…………一度、島に行くべきかもしれないね。より詳しく言うなら、明羅さんのいる神社へ。」
ミキの呟きに他2人も頷く。自身らの身に何が起きたのか。籠目島の、明羅がいるであろう神社へ真実を確かめに。




