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第46話 いつかの日の断片

 「は、はぁ、はぁ。」


 ヤナキは走っていた。向かう先は神官がいるであろうお社だ。鳥居をくぐり、敷地内に入る。日の落ちていない時間に神官が何処にいるかは知らないが、きっとお社には居るはず。そうして砂利を蹴って神官を探す。


 「何処に、いんだ…。」


 石段を登ってきた疲れにより、ヤナキは近くにあった御神木に手を触れる。呼吸を整え、すぐさま捜索を再開しなければ。と、思っている最中、彼の視界に異常が。


 「………?おい、お前、どこから…。」


 突如、目前に見知らぬ人間が現れたのだ。いや、よく観察をすればその顔は彼の知る人物である。それは探していた神官だ。が、様子、雰囲気共に『贄の儀式』で感じるものではない。僅かな違和感。正体を突き止める前に、神官は口を開く。


 『そうじゃ。九十九(つくも)の力を借りてイタズラをするのじゃ。これで(みな)を眠らせて、これで(みな)の夢を弄る。………そうすれば、お主も帰らずに済む。』


 神官は赤いかざぐるまと古びた扇子を抱えて呟く。


 「なに、言って、」


 わけの分からぬヤナキは全てを口にする前に気が付く。目の前の神官はヤナキなど気にもしていないことに。正確には、彼の存在が側にあるということすら知らないようだ。よほど集中しているのだろうか。それにしても突然現れた神官はどこから来たのだろう。

 いや、今はそんなことを気にしている場合ではない。御神木から離れてヤナキは神官へ近づこうとする。しかし、木から手を離した瞬間に神官の姿が見えなくなる。


 「なんなんだ一体…。」


 ますます混乱が深まる。だが、時はヤナキを思考の海へと泳がせてはくれない。今度は後ろから神官の声がした。


 「ヤナキか…。お主、こんなところで何をしておる。」

 「!」


 再び不意を突かれた登場に心臓が飛び出そうになる。何とか動揺を抑えて振り向く。そこには馴染み深い神官が立っていた。


 「………何を、か。そりゃあお前を探してたんだよ。」

 「ほぉ。なんじゃ。以前のように遊びたいのか?」

 「はっ!ワリィがお前と遊んだ記憶はねぇし、遊びに来たわけでもねぇよ。」

 「……………そうか。であれば、なにゆえここに?」


 張り詰めた空気の中、ヤナキは懐に手を忍ばせる。そこから取り出すのはかつてコユキが使用していた包丁だ。取り出し、刃に付く革のカバーを外す。


 「これ以上、『贄の儀式』をやらせねぇためだ!」

 「………………。」


 神官は彼の行動に驚くこともなく、口を一文字に結んでいる。かと思うと瞳を閉じて、顔を背けてしまった。


 「おい。今からでも『贄の儀式』をやめる気はねぇのか。」

 

 ゆっくりと顔をこちらに向ける。


 「……あるわけなかろう。………信仰はこの島を統率する為に不可欠じゃ。」

 「へっ。なら、仕方ねぇ!」


 ヤナキは包丁を片手に神官へ駆け寄る。これで『贄の儀式』を終わらせるために。

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