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第41話 結託

 緊張をしつつも、タカヤは目前のヤナキへと言葉を発する。


 「ヤナキくん。僕も、神官を止めるよ。」

 「ホントか!?」

 「うん。………でも、直接出向くのは後にしよう。まずは作戦を練ってからの方がいいと思うんだ。」

 

 あくまで冷静に事を進めるため、静かに言う。対してタカヤは落ち着き払うように息を吸って答えた。


 「だな。じゃあ、これからよろしくなタカヤ。」

 「よろしくね。詳しいことはまた明日。」

 「おう!『ヨモの湯』でな!」


 協力者はただ1人。だと言うのに、光明がさしたとばかりの前向きな気持ちになった。それはヤナキの自信満々な態度からだろうか。いずれにせよ、タカヤは抱える不安が安らぐのを感じて今度こそ『ヨモの湯』へと帰るのだった。


***

 翌日、約束通りにヤナキは『ヨモの湯』にやって来た。タカヤはいつも通り番台として藍色の暖簾から入る人間を迎える。普段と同じではあるが唯一違うのは彼の気の持ちようであった。何せ、今の彼にはヤナキがいる。どんな悩みであろうと相談をするという手段を取れるのだ。これがどれ程大きいか。


 「よっ。来たぜ。」

 「待ってたよ。………じゃあ作戦会議の前に、説明をさせて。」

 「?おう。」


 いまいち要領を得ていないヤナキを連れて、タカヤは受付の後ろ、すりガラスの扉をスライドさせる。そこは簡易的な休憩所兼物置きであった。やや手狭な場所に身を滑り込ませ、ヤナキを迎い入れる。そこには小さな机とパイプ椅子が2つあり、目線とジェスチャーで掛けるように勧めた。

 ヤナキは小さくお辞儀をしてやや軋むパイプ椅子へと腰掛ける。続いてタカヤも腰掛け、小さなテーブルの上へ黄色いアヒルのおもちゃを置く。


 「これは付喪(つくも)っていって、神様が宿ってる特別な物なんだ。」

 「神様?………確か、神ってのはかざぐるまにしか宿らねぇんじゃねえのか。ほら、俺達が信仰してた『つくも様』だけだろ?」

 「ううん。それが違うんだ。本当は付喪(つくも)っていうのは特定のものに限るわけじゃない。だから、かざぐるまだけじゃなくてこのアヒルのおもちゃに宿るのもおかしな話じゃないんだよ。」


 話を受けて、ヤナキは目を丸くする。そして目前にある変哲のないアヒルのおもちゃを凝視した。何処からどう見ても神様が宿っているようには見えない。

 そんな彼の様子を見かねて、タカヤは説明を続けることにした。おもちゃへ手を伸ばして触れる。


 「……実感してもらうのが早いかな。少し待っててね。僕はこれから独り言をするけど、気にしないで。」

 

 コクリと頷いたのを確認し、タカヤは息を吸う。これから話すことを頭の中で纏めるためだ。それを終えると決心のついた彼は口を開く。


 「籠目島(かごめしま)の神官には特殊な力があるんだ。それは亡くなった人を蘇らせて役割を与える力。役割は旅行客、女将、漁師、いろいろある。役割を与えられた人間は記憶を植え付けられて、その通りに動くんだ。勿論、周囲の人にも違和感がないように記憶が植えられる。」

 

 彼の話す内容は、ミキが残すように言っていたものだ。これを付喪(つくも)に記録して残すために。


 「その偽物の記憶に違和感を覚えるには付喪(つくも)っていう神様の宿った特殊なものが必要なんだ。これは年季の入った物とかじゃないと駄目。それで、付喪(つくも)に触れると物の近くで起こった出来事が見聞きできる。ただ、『つくも様』だけを信仰している人間はそれが出来ない。……………こんなところかな。」


 長い説明の後、タカヤはひと息つく。これ程長く話したのは初めてかもしれない。彼はそんなことを思いつつ、混乱の最中にいるヤナキの為に言葉を継ぎ足す。


 「よし。それじゃあヤナキくん。この付喪(つくも)に触ってみて。」

 「お、おう。」


 及び腰になりながらもアヒルのおもちゃへ手を伸ばす。冷たいゴムの感触を感じたかと思うと瞬間、ヤナキの脳裏には声が響く。それは先のタカヤの言葉である。まず、このおもちゃが録音機械でないか疑ったものの、音が頭に直接響くことでそれは否定された。

 呆気にとられながらもヤナキはタカヤを見る。その様子によって、付喪(つくも)の効果が存分に発揮されたのを実感した。


 「これが付喪(つくも)の力だよ。……きっと、神官に対抗するのに役立つはず。」

 「だな。」

 

 まずは一歩。対神官に向けて使える道具を検討するのだった。

 

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