表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/69

第40話 見知らぬ君、感じる面影

 タカヤはひとりで山を下りる。彼のそばには喧しい虫の音と監視をしているかのような月のみ。彼はただその存在を感じながら歩く。そんな中、タカヤに声を掛ける人間がいた。


 「よっ。タカヤ。どうしたんだ?気分でもワリィのか?」

 「…………ヤナキくん…。」


 少年の前に現れたのは死した筈の人間、ヤナキであった。彼は『かざぐるまの宿』に帰ることなく、ふらついていたようだ。


 「まだ、帰ってなかったんだね。………もしかして僕に用事?」


 ふと、ありもしないことを想像して聞く。が、やはり妄想は妄想。ヤナキの解答はタカヤの想像の斜め上をいった。


 「いや、タカヤってか神官に…だな。」

 「………神官に…。どうして…?」


 イヤな予感がはしる。どうかこれ以上言葉を発しないでくれ。そんな願いむなしく、ヤナキは真っすぐ答えた。


 「『贄の儀式』を止めさせてぇからだ。………やっぱり、生贄なんかどうかしてる。」

 「……………………。」


 何故、そのような考えに至ってしまったのか。タカヤには到底思いつかなかった。だが、理由など大したものではないのかもしれない。ヤナキがヤナキである限り、生贄の存在は許容し得ないのかもしれない。

 だとしても。それでも、悲劇につながる彼の思想を、タカヤが受け入れるのは容易ではなかった。


 「………止めなよ。『贄の儀式』を止めさせるなんて、そんなの、危険だよ。だって、それは『つくも様』の不敬になるんだよ。…………そうしたら、君もただじゃ済まなくなる。」


 哀れなほどに悲しげに、目を細めて相手を見つめる。されど、ヤナキの意志は変わらないようだ。彼は強く突っぱねる。


 「俺はどうなったっていい。でもな、人の命を神様なんぞに捧げるってのは変だろ。大昔の村じゃねぇんだ。」

 「……そうだね。確かに、そうだね。」


 あまりにはっきりとした物言いに、不思議な感覚を覚える。目前のヤナキはタカヤにとって親しい仲ではない。勿論、神官の力で親しかったような記憶はあるが実感はない。にも関わらず、ヤナキの気迫は懐かしいものに思えてしまった。それは、記憶がどれ程ほつれてしまっても彼が彼であるという証拠である。


 「ねぇ、ヤナキくん。どうしたら君みたいになれる?」


 突然の問いに、ヤナキは少し固まる。だが、微笑んだかと思うと白い歯を見せて宣言した。


 「そりゃあ、自分に従えばいいんじゃねえか。間違ってるって思ったことは止めて、正しいって感じた道へ行きゃあいい。」

 「………思うこと、考えることも嫌になったら?」

 「そしたら…。俺が一緒に考える!ちっとずつでもいいからさ。」

 「それは…頼もしいね。うん。心強いや。」


 簡単で単純な解。しかし、タカヤにはそれで十分だった。話せることをヤナキへ話そう。そして楽になるはずだ。後のことは一緒に悩めばいい。

 月が照らす中、タカヤはひとつの決断を下したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ