第34話 つくも様と付喪
「いただきます!」
『タチバナ荘』内ではミキの元気な声が響く。彼、彼女は居間に正座して食卓に並べられた食事を頂こうとしていた。向かいにはタチバナがいる。彼もまた手を合わせ、箸を持つ。
ミキは早速、並べられたハゼの唐揚げをひとつまみ。カレー粉で味付けされたそれは小さいながらも味がしっかりしており美味しい。
「ハゼを侮っていたよ。あまり大きくないのに、中々美味しい。」
しみじみという彼、彼女に対してタチバナは口を開く。
「このサイズのハゼなら下ごしらえも面倒じゃない。お前でも出来るだろう。」
「へぇ。それは良いね!」
それから2人は黙々と食事をした。食べ終え、片付けを手伝うミキ。彼女はこれからの日程を考える。昼食は無事に済んだわけなので、引き続き『つくも様』の信仰について調べることにしよう。そう思い、近くで皿を洗っていたタチバナへ話しかける。
「そう言えばこの島には、神様が宿っていて、触れると不思議なことが起こる付喪という物があるらしいじゃないか。君達の信仰する『つくも様』も付喪なのかい?」
ミキの言葉にタチバナは口を閉ざす。やや踏み込みすぎた質問だったか。ミキは目を細めてタチバナの動向をうかがう。最悪の場合、突然襲われて生贄にされることも予想した。しかし、タチバナは黙り込んだ後、ぽつりと話し始める。
「この島の付喪神はかざぐるまに宿る『つくも様』だけだ。………お前の言う付喪は他の連中も俺も信仰なんざしてない。」
「…………へぇ。」
テーブルを綺麗に拭き、ミキは居間を後にする。そうして先の言葉を反芻した。彼の話では『つくも様』は他のものに宿る神の総称などではなく、かざぐるまに宿る神を特定したものらしい。それに加え、この島の住民は件の『つくも様』のみを信仰している。他のものには神など宿っていないと考えているようだ。
だが、それはおかしい。神が宿っていないのならばミキが出くわした奇妙な出来事に説明がつかない。物に触れただけで、過去の人間の声が聞こえるだなんてのはあり得ないことなのだから。
『タチバナ荘』を出て、潮風にあたるミキはひとりでに結論づける。
「恐らく神は存在する。『つくも様』とやらの他にも。」
ただの推測に過ぎないが、『ヨモの湯』にいた番台の少年はそれを知っているだろう。故に、彼は付喪の情報を話したに違いない。いま一度、彼処へ戻ろう。少年と話をして、『つくも様』信仰を止める手掛かりを掴むために。




