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第1話 子供だけの島

 「ん?………ここ、は?」


 少年ヤナキは砂の感触と共に目を覚ます。聞こえるのは波の音。見えるのは青い海のみだった。


 「あっ!目が覚めたでござるね!」

 「ござる…?」


 珍妙な口調の少年。彼はヤナキの近くによって、話しかける。


 「拙者、コウガでござる!よろしく!」

 「お、俺はヤナキだ。よろしく…。」


 よく分からないまま自己紹介と握手を終える。聞きたいことは山程あったが、先ずは優先順位の高いものから聞くことにした。


 「あー、コウガ。ここは何処だ?」


 頭をかきながら質問するヤナキに対して、コウガはあっけからんと答える。


 「ここは籠目島(かごめしま)でござるよ!拙者もヤナキ殿も旅行で来たんでござろう?」

 「?そう、だったっけか。」

 「そうでござる!」


 随分自信ありげに言うので、記憶が定かではないヤナキは本当に旅行でやって来たような気がしてきた。というか、何故ここへ来たのかなんて理由はどうでもいいとさえ思える。

 夢見心地というべきか、いまいち地に足つかない感覚のまま立ち上がる。


 旅行に来たというのなら宿があるはず。取り敢えず、そこでひと息つきたい。そんな思いからヤナキは砂浜を離れることにした。


 「ヤナキ殿!どちらへ行かれるのでござるかー?」

 「泊まるとこだよ。あるはず……だよな?」

 「勿論でござるよ!拙者が案内するでござる!」


 おかしな口調ではあるものの、未知の場所では幾分か頼もしい。ヤナキは大人しくコウガについて行くことにした。


 砂浜から離れると舗装されていない凸凹の道が彼らを迎えた。田んぼや畑に挟まれた道を進む。道なりに沿うまま進むと、ふとした違和感に襲われる。今の今まですれ違う人間、皆子供なのだ。

 畑で作業をするのも、自転車で牛乳を配達するのも、挨拶を交わすのも全て。


 「なぁコウガ。お前、この島で大人と会ったか?」

 「え?うーん。ないでござるねぇ。」

 「…………なんか、変じゃないか。」


 蝉の鳴く声がよく聞こえる。喧しいほどにヤナキの耳を打つ虫の音は、いつしかパタリと止むのだろう。短い天寿を全うして。


 「確かに不思議でござるねぇ。」


 呑気にコウガは呟く。


 「でも『じょじほうれいか』の今では良いことだと思うでござるよ!」

 「『じょじほうれいか』…?少子高齢化のことか…?」

 「そうとも言うでござるね!」

 「いや、そうとしか言わねぇよ…。」


 コウガの雰囲気に、ヤナキは少し毒気を抜かれる。そうだ。別に子供が多いのは悪いことではない。別段、そういう島があったっていいじゃないか。気を取り直して先を行くコウガについて行くことにした。

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