表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/23

07.距離感

 王立学園に入学して、半年が経った。私は公爵家の共有馬車で学園へ通っている。公爵家が支援している者の家や孤児院を回るもので、要は通学バスのような存在だ。


 ようやく基礎学が終わり、試験を挟んで、来週から実技や貴族に必要なダンスの授業が始まる。基礎学は、魔力の種類や成り立ち、歴史を学ぶ授業だった。


(やっと終わった⋯⋯)


「ミリーには勝てんな?」


 第一王子ディゼロア殿下が、張り出された順位表を見て呟く。


「まあ、ロアは俺にも勝ててないけどね?

 何位だったかは、聞かないでおくよ」


 ディゼロア殿下とヒーロム様は幼馴染み。寮でもルームメイトだし、殿下とヒーロム様の妹ディアンナ様は婚約者。結婚すれば、親族になる。


(ディゼロア殿下とヒーロム様のじゃれ合い、尊い⋯⋯!)


「ロア、来週からのダンスはどうするんだ?」


(来週から始まるダンスの話をしてるみたいだけど、聞いちゃ悪いかしら?)


「母さんに、ミリーを見てやるよう言われてる。残念だよ。

 ――ふふふ、ははっ。急に笑い出してごめん。

 平民とか身分以前に、その、ミリーが壊滅的だからさ」


 自分の名前が聞こえ、思わずドキリとした。


「え? あんなに勉強できるのに?」

「な?」

「ミリーにも苦手なものがあったんだな」


(もう、笑わないでください!)


 そう言いたかったけど、ヒロイン仕様の甘ったるい声で言ったらヤバイことになる。そう思って、ぐっと堪える。第一王子は攻略対象じゃないけど、できるだけ、リスクは避けたい。


◇◇


翌日の午後。


「も、申し訳ありません」


 俯きながら、何度もヒーロム様に向かって謝る。顔を上げて、ヒロインスマイルに惚れられたら困る。


「謝るな、お前が悪いわけじゃないだろ?」


(優しい⋯⋯でも、他の女の子だったら、ため息ついてそっぽ向くんじゃない?

 私がヒロインで、しかも聖女だからよね?)


「今日は、早めに切り上げるか?」


(見限られた!?)


「わ、私、頑張りますから! もう少しだけ、時間をください!」

「必死だな⋯⋯」


(そりゃ必死にもなるわよ。できれば、隣国の王子様にでも見初められて、国外脱出したいんだから⋯⋯)


「もう少しだけ付き合おう」


 足を踏んでばかりで申し訳ないけど、正直ほっとした。


「ご、ごめんなさい!」

「大丈夫だ。気にしないでくれ。初めは皆そんなものだ」


(本当に優しいなぁ。もう、この人、何で攻略対象じゃないのかしら。ああ、疲れてきた? 身体がちょっと怠いかも?)


「もしかして、緊張してるのか?」


(あれ? 緊張なの? ああ、だからいつもより疲労が激しいの? そういうこと?)


「そ、その、ヒーロム様と踊ると、どうしても緊張してしまうみたいで⋯⋯」

「力を抜け」

「でも、今まで何度もヒーロム様の足を踏んでしまって⋯⋯

 また踏んでしまうんじゃないかって、それが怖くて」


 私は、正直に思ったことを口にした。


「ははっ、俺もだ。お前を転ばせずに、どう躱せばいいのか、緊張しっぱなしだよ」

「え?」


(躱す? どういうこと?)


「いつまでも、足を踏まれる愚鈍な男だと思われたくない」

「ふふっ、ふふふふっ⋯⋯」


 思わず声を立てて、顔を上げて笑ってしまった。


(攻略対象者じゃないし、まさかこれで惚れられちゃうなんてこと、ないわよね?)

「目指せ、大神官」10.距離感にヒーロム視点公開中です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ