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19.変わりゆく世界

 ディアンナお嬢様が王宮で倒れたと、私のいる伯爵家に連絡が入った。物語が動き出した感覚。指先が冷たくなり、血の気が引いていく。

 

(まさか、本当にディアンナお嬢様が倒れるなんて⋯⋯)

 

 私の記憶では、この事故の後、ディアンナお嬢様が公爵邸へ戻り、第2王子がお見舞いに来る事になっている。

 第2王子はディアンナお嬢様の婚約者。原因はよくわからないけど、ディアンナお嬢様に会ってもらえず、それを慰めた侍女の私を好きになってしまう。


(でも、違うのよ⋯⋯)


 ディアンナお嬢様の今の婚約者は、第一王子のディゼロア殿下。ディゼロア殿下は、謎の病で床に伏して、婚約者が変わるはずだったのに、そのイベントが起きてない。


 それに、13歳で屋敷を出ようとした私は、本来まだ公爵邸にいるはずだった。魔法が未熟だという理由で、公爵夫人に反対されて。それなのに、脱出できないはずだった公爵邸を、既にすんなり出てしまった。


(やっぱり私のせい? 私が物語を変えたから?)

 

 こればかりは、考えても結論が出ない。


 学園の入学試験だってそう。私がディアンナお嬢様の家庭教師をして差し上げたけど、すでに時期がズレていたし、教えるのに苦労した。


「問1:貴族と平民に、身分以外の差はあるか? 『ある』『ない』から選び、理由を述べよ」


 私達が受験した頃と、何も変わらない。どちらを選んでも良いけど、理由に矛盾がないこと。素早い判断が鍵。この問題は、いわば『初動の思考力』を見るものだ。


 そして、偶数番号の問題はすべて、「君の答えは間違っていると指摘された。答えを変えるか? 変えないか? その理由を述べよ」という形式だった。単純に正誤を見るのではなく、思考の柔軟性や自省の力が試されていた。


(これが、大問題だったのよね⋯⋯)


 ディアンナお嬢様は、全ての答えを「変えない」とした。理由は「私の意見を否定するのは、許されることじゃないから!」


(初めて見た時には、目が飛び出そうだったわ。いくら、王配の地位が確約されているにしたって、傲慢すぎるでしょ)


 結局、ディアンナお嬢様の入学試験の成績は、ギリギリだった。


(ディアンナお嬢様が倒れたのは、物語と同じように事故なのかしら? たしかあの事故は⋯⋯)


 事故は、ディアンナお嬢様の魔力吸収のしすぎが原因だったはず。婚約者が変わったことが納得できず、紛らわしに始めた「魔力がどこまで溜められるか」っていう実験に没頭して⋯⋯。


(身体から魔力がダダ漏れの状態で、王宮の階段を踏み外したのよね⋯⋯)


 原作を読んだときは、敵役に階段から突き落とされたんじゃないんかい? って笑ってられたけど、自分の身に起きたら笑えない。


 この事件がきっかけで、ディアンナお嬢様は、魔王化したんだから。


「すぐに公爵家へお邪魔するから、準備してちょうだい」


 私は侍女に告げた。

 

 ディアンナお嬢様の婚約者が第一王子から変わらないことで、油断していた気持ちが半分。聖女の力を使いたくなかった気持ちが半分。

 いずれにしても、知っていて何もしなかったのだから、後味が悪い。


(ディアンナお嬢様が回復されるまで、少しでもお手伝いして差し上げたい)


 その時、幼い頃のヒーロム様の言葉が浮かんだ。


「周囲の目を気にして、チャンスを捨てるのか?」と。


 そう、むしろこれは未来を変えるチャンスかもしれない。ここまで、原作が改変されているのだから、ディアンナお嬢様の魔王化だけ変わらないなんて許さない。

  

(私の聖女の力で防いでみせる。私だって、変えてみせるんだから!!)

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