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12.幸せな未来

(聖女の秘密、なんなのよ?

 私が知らないのに、なぜ奥様が知ってるの?)


 私の頭が疑問で混乱する中、公爵夫人がゆっくりと語りかけてくれた。

 

「聖女はね、万物を癒す。一番有名なのは、傷ついた生き物を治すこと。これは子供向けの絵本にもよく出てくるし、あなたも知っているのよね?」

「はい」

「でもね、万物を癒すというのは、身体的なことだけじゃないのよ。

 ――心も癒す。そのために、特定の記憶を消去することもできてしまうの」

 

「――え? ちょっと待って下さい。それじゃあ、私はディアンナお嬢様の記憶を?」

「そうね。今回は、あなたに都合が悪いだけの、たいした話じゃないと、ニコラスから報告を受けているわ。

 でもね、いつもそうだとは限らないでしょ?」


(おっしゃる通りです。

 聖女って、実は魔王様並みに、ヤバイ人物じゃない?) 


「特に今回のように無自覚に力を使ってしまっては⋯⋯。

 だから、聖女の存在は国に報告され、管理されるの」


(記憶を消すだなんて、知らなかったとはいえ簡単に使って良い能力じゃないわ。何てことをしてしまったのだろう)


「ど、どうしたらいいのでしょうか? 私⋯⋯」


(怖い⋯⋯私、どうなるんだろう?)


「うふふふっ」

 

 公爵婦人が笑いだした。


「笑ったりして、ごめんなさいね。でも、あなたがあまりに深刻な顔をするから、可笑しくて⋯⋯」


(それは、深刻にもなるわよ。魔王様より、聖女の方がヤバかったなんてオチ、あり得ない)


「今まで通りとはいかないけれど⋯⋯、

 私と1日1時間、魔力制御を学んでもらえるかしら?」

「え? あの、国への報告は?」

「すでに王妃様にはしてあるから、問題ないわ」


(え? 既に? でも、それじゃあ、第2王子と接触しないように必死に足掻いてたのに、ここで「ジ・エンド」)

 

 私は、今までの自分の行動が、無意味な事だったのではないかと混乱した。


「といっても、知っているのは、私、王妃様、孤児院の院長様、ニコラスだけ。

 王妃様は、今のところ公表されるつもりは無いそうよ」

「でも、聖女は国が管理するって」

「そうねぇ。他国に奪われて、戦争の道具にでもされたら、堪らないものね」


(あははっ、国外に出られない。うん、これは軟禁か?)


「じゃあ、やっぱり⋯⋯」

「言ったでしょ? 王妃様は公表されないって。公表したら、あなたも周りも、幸せな未来が壊れちゃうもの」

「幸せな未来ですか? それって、いったい⋯⋯」

 

 私の問いに、どんな未来なのか公爵婦人が答えてくれることはなかった。

 

(幸せな未来って何?

 地獄のトゥルーエンドを回避する以外の未来なんて考えたことないのに⋯⋯)

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