10.隠された光
「全て、ヒーロム坊ちゃまのことを思っていたのじゃろ?」
ニコラス様は、事も無げに言った。
(ヒーロム様とダンスして、
ヒーロム様に習った問題を答えて、
ヒーロム様が好きだと言ったお菓子を食べて、
ヒーロム様に貸して頂いた本を読んで⋯⋯)
思い浮かべると全てがヒーロム様に埋め尽くされていた。
第2王子に恋しない事に夢中で、自分の気持ちは置き去りだった。急に恥ずかしくなり、身体が熱くなる。
(前世の25年間でも、こんなに身体が熱くなったことはないわ。これって、この子の気持ち? それとも私?)
「ミリー? 顔が真っ赤よ?」
ディアンナお嬢様が呟いた。私は慌てて顔を覆う。
(平民が貴族に恋したって、不幸になるだけ。
いくらなんでも身分が違いすぎる。
聖女になれば乗り越えられる?
ダメよ。それでは、第2王子と出会ってしまう。
私が恋をしなくても、見初められたら、終わりだわ⋯⋯)
「あ、憧れです。単なる憧れ!
ね? ディアンナお嬢様、ニコラス様、今のお話は無かったことに」
無理矢理ディアンナお嬢様の手を握る。すると、私とディアンナお嬢様の手が一瞬光って、心臓が「ドクン」と大きく波打ったような気がした。
「あら? 今、何のお話をしてたかしら?」
ディアンナお嬢様が、突然呆けた顔で辺りを見回す。
「今、ミリーの病気をじゃな⋯⋯いや、なんでもない」
ニコラス様が途中まで言いかけて止めた。
「病気? 大変じゃない! 原因はわかったの?」
(いや、だからヒーロム様に恋してるって⋯⋯)
「過労じゃ。ミリーは少々、頑張り過ぎているようじゃから、2~3日休養させるとよろしいかと思いますぞ。その間、わしがまた様子を見ることに致しますから」
こうして私は、どこも悪くないのに2日間の休養が決まった。
(あの光りは何だったの? ディアンナお嬢様の様子がおかしかった。話を覚えてない様子だったけど、わざと聞かなかったことにしてくれたなんてことないわよね?)
翌日、無理やり学園を休まされた私に、ニコじいが事実を告げに来るまで、モヤモヤが続いた。




