気球の旅
空飛ぶにおい
幼稚園のじれったい砂のにおい
気球が熱っぽく上昇していく
無我夢中のにおい
逆らえないにおい
気後れするぐらいおおきい物体に
全身をささえられる感覚
まちが遠のく
自意識が遠のく
ここはみしらぬ初めてのまち
皆んなあっけらかんと
つくろうことを知らず
私はヘリウムフーセンになってあっさりと
世界から脱出していた
賢い人も
惨めな人も
上空からはおなじく一個の画鋲だから
知識をとめて
居場所をおさえて
結局どの家も屋根はかざらない姿をしているよ
空飛ぶにおい
幼稚園のじれったい砂のにおい
気球が熱っぽく上昇していく
もう戻れない
見て見ぬふりはできない
あの日の私にそろそろ会えるでしょうか