悪魔、降臨
意識が戻ると、目の前が真っ暗だった。
一瞬混乱したが、地上に降りてきた事を思い出した。
(あいつは大丈夫か?)
確認したくても動けない。声も出せない。
どうしようか考えていると、何処からか声がした。
「ふぅ…やっと完成しましたよ…」
初めて聞く声と共に、急に視覚が戻り、身体が自由になった。
(身体に異状は無いな…無事依代に定着出来たか。ただ…)
「やりました、成功です!!」
(誰だこいつ…?)
目の前に馬鹿みたいに騒ぐ奴がいた。
「うぅ~ん…あれ、ここは…?」
聞き覚えのある声のした方を向くと、その姿に目を奪われた。
2つに結ばれた、元より少し青み掛かった透き通る髪に、金色に輝く瞳。
地上に降りても美しいらしい、あいつが眠たそうに目を擦っていた。
「あなたはだれ…?」
「はじめまして、ここは僕の家ですよ。そして、僕は久遠永茉と言います。僕の事はお父さんだと思っていいですからね」
「わかった!よろしくね、パパ」
あいつがそう言うと、自らを父と宣う奴が後ろに倒れた。
「ぱ、パパ!?」
「う…嬉しすぎて…」
(…馬鹿みたい、じゃねーわ。こいつは本物の馬鹿だ)
そう思ったが、一応警戒しておく事にした。今でも警戒してるつもりだ。
「あ、そうだ!2人に名前を付けましょう!えーと…刹那と涅槃でいかがですか?」
(話題の振り方下手くそか?)
「アト…うん、気に入った!」
(気に入るのかよ。まあこいつ…アトが良いならそれで良いけど)
「よろしくな、アト…とう」
「うん!ヨクトちゃん、よろしくね!」
(ヨクトちゃん…?)
呼び方こそ気になったが、名前を呼ばれるのも悪くない気分だった。
「あの、涅槃…とう、とは?」
「お前の事だよ」
(…父さんなんて恥ずかしくて言えるかよ)