同情、随伴
俺が言葉も出ずに呆然としてると、あいつは力を使い過ぎたのか、その場に座り込んでしまった。
「う~…大丈夫…?」
「俺は大丈夫だ。つーか、俺より自分の心配しろよ…」
その時、良からぬ考えが俺の脳裏をよぎる。
(今ならこいつに勝てるんじゃね?)
当時の俺は仕事をサボりながら、片っ端から強い奴に喧嘩を吹っかけてた。
自棄になってたんじゃねーぞ?俺が3番隊に振り分けられたのは可笑しいと、力で訴える為にやってたんだ。
そうして一度も負けた事が無かったもんだから、俺は天使内で最強だと思い込んでた。
だが、あいつが神を堕とした、圧倒的な力を目にして自信を失いかける羽目になっちまった。
だから俺は思った。自信を取り戻す為にも、こいつに勝ちたいと。
「私は大丈夫だよ~?でも…ちょっとお願いなんだけど、私を運んでくれな」
「おらぁ!!」
「わっ…!」
卑怯だとは思うが、不意打ちで攻撃してやった。なのにあいつは…
「………」
「…そうだよね。力がなくなっちゃってかなしいよね…」
(違う、そうじゃねーよ)
片手で受け止めやがった。しかも、攻撃した俺を気にかけている始末。
こいつには勝てない。残っていた僅かな自尊心まで打ち砕かれた。
「…そんな余力があるなら自分で歩けるだろ」
「えへへ~…」
何かを隠したがる様なその笑みに、少しだけ、可愛いと思ってしまった。
結局、助けてくれたって事もあり、大人しく運ぶ事に。
「けっこう高いね!」
(…何か子供の面倒見てる気分だな)
「…さっきはありがとな」
「いえいえ~。私のほうこそ、おんぶしてくれてありがと!」
(それは俺を庇ってくれた借りを返してるだけであって…)
底の見えない優しさに、少しばかり怖くなってきた。
「はぁ~、これからどうしよっかな…」
(神を堕としちまったんだもんな。最悪指名手配とかされるかもだし)
そう考えて、冗談半分で誘ってみることにしたんだが…
「一緒に地上に来るか?どうせ俺はもう此処には居れないし、お前だって」
「え、行きたい!!」
かなり食い気味で返事が返ってきた。
「よし、じゃあ決まりな。…となると2つ依代を探さないとか」
長期間地上に居るなら、実体があった方が何かと都合が良いからな。
俺は能力を使おうとして…つい先程奪われたのを思い出した。
(しまった、どうしたもんか…)
「あ、それなら私に任せて!」
俺が悩んでいると、あいつが自信満々に言ってきた。
(何か考えがあるのか?)
「わかった、任せる」
そう返した数秒後、あいつが何かの能力を使ったのを横目に、俺は意識を失った。