表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スケアクロウの翼  作者: 甲斐 雫
第1章 王都ヘデントール
7/10

4 カラスの襲撃とDVを受ける男爵夫人

 真っ黒な鳥の集団が、広い公園に向かって舞い降りつつあった。

「な、何だっ!」

「キャァッ~~~!」

「うわぁぁぁぁーーーッ!」

 園内を散歩していた人々が、悲鳴を上げつつ逃げ惑う。


「あれは!・・・デビルクロウか!」

「山岳地帯に棲む、大型のカラスね」

 王都にいる普通のカラスの3倍くらいの大きさがあるそれを、ここ王都で見ることは殆ど無い。

 そんな魔物が、何故集団で王都に来たのか。

 けれど、それを考えている暇はない。


「ハッ!」

 アリスヴェルチェは、愛馬グラーネの横腹を蹴って、黒い鳥の群れに向かって駆けた。ジークもそれに倣って、後に続く。

 ジークは男性の習わしで、護身用の剣を下げていたが、アリスヴェルチェは杖しか持っていない。

 けれど、逃げ惑う人々の中には、幼い子供もいた。

 2人は、人々を狙うように降下する黒い鳥たちの群れに突っ込んだ。


 グァァッ! ギャァギャァ・・・ギャァギャァ ガァァッ!

 濁った威嚇の鳴き声を交わしながら、デビルクロウたちは攻撃の矛先をジークとアリスヴェルチェに向けた。その鳴き声を聞いて、公園に散っていた仲間の鳥たちも集まって来る。カラスの仲間は頭が良い。集団での行動は、お手の物だ。


 けれど2人は馬に乗ったまま、巧みな手綱さばきと、的確な攻撃で1羽また1羽とデビルクロウを落としてゆく。

 ジークは縦横無尽に剣を振るい、機敏に鳥たちの攻撃をかわした。『戦う者』の力は無くても、素の体力と能力だけで充分すぎるほどの働きだ。寧ろ魔法に頼って鍛錬を怠っている貴族たちに比べれば、彼の方が武人として勝っている。

 アリスヴェルチェは、同じように愛馬グラーネと共に、黒い鳥の魔物に立ち向かっている。


 賢く忠実なグラーネは、大切な主人が戦いやすいように態勢を整え、アリスヴェルチェは愛馬を信頼して杖を振るう。

 けれど武器がただの杖では、ストレングスの魔法をかけてもダメージが少ない。叩き落されたデビルクロウは、再び跳び上がってしまう。そこで彼女は、付与魔法を最大限に活用するしかなかった。



 この世界の魔法には様々な種類があるが、古くから研究がなされていた。その結果、魔法はレベルと威力について、明確に段階づけられている。

 大まかに言えば、『戦う者』の魔法の場合、レベルは持続時間がどれだけ続くかを表す。

 威力はレベルには関係なく、例えばレベル1の短時間の魔法でも、訓練次第でいくらでも伸ばすことが出来るとされていた。

 魔法を起動させる詠唱は、レベル・威力共に、高くなればなるほど集中のために長くなる。


 魔法検定を受けて専門の学院に入った王族貴族の少年少女は、レベルを上げるための教育を受け、威力についても訓練を受ける。

 在校中は学院所有の教育用Orareを貸し出されるので、効率的に学べると言うわけだ。


 そして、Orareなしで魔法を使う場合、それは使用者の持っている魔力のみで行われるため、使用回数は制限され、疲れも蓄積される。

 ジークの場合だけは特殊で、彼は独学で自然エネルギーを魔力に変換する技術を身に着けていたが、少なくとも王国内でそれが出来る物はいない。そもそも学院では、変換できるという事すら知らず、当然そんな教育もされていないからだ。



 つまりアリスヴェルチェは、自分が持つ魔力を最大限まで使わなければならない状況になっていた。

 デビルクロウたちは、炎に焼かれ、凍結し、雷に焦げて地に落ちる。

 ジークの周りにも、多数の鳥たちの死体が転がっていた。


 やがて、1羽のデビルクロウが大きな叫び声を上げると、黒い鳥たちは高く飛び上がり、様々な方角へと去って行った。

「残りは、散ったようだが・・・いや、集まりつつあるな。・・・山の方角へ、帰ったようだ」

 遠くを眺めながら、そこまで観察して、ジークはようやく剣を鞘に納めた。



「アリス! 大丈夫かっ!」

 グラーネの首に突っ伏しているアリスヴェルチェに、ジークは慌てて駆け寄った。

「・・・・ハァハァ・・・う、うん・・ハァ・・・流石に、疲れた・・・」

 荒い息で何とか顔を上げた彼女を見て、彼はグラーネに跳び乗る。

「悪いな、グラーネ。アリスを支えているから、重いけれど一緒に乗せてくれ」

 そして自分の馬の手綱を持ち、静かにその場を離れる。

 公園に隣接する訓練施設から、ようやく『戦う者』たちが出て来る。去った魔物を確認した人々は、恐る恐る公園の中に戻って来ていた。


 フォーゲル家の裏門まで帰ると、丁度庭に出ていたパンサが慌てて木戸を開けた。

「ア、アリスヴェルチェ様っ!どうされました!」

 帰る道で多少回復したアリスヴェルチェは、何とか自力で地面に立ったが、直ぐにジークに抱き上げられてしまった。

「だ、大丈夫だから・・・」

「まだふらつくだろう?遠慮するな」

 ジークは問答無用の雰囲気で歩きながら、パンサに簡単に説明する。状況を理解したパンサは、馬たちを庭の中に入れると、慌ててドアを開けに走った。


 抱かれて運ばれながら、アリスヴェルチェは気落ちしていた。

(ちょっとふらつくだけでも、義足だと危なっかしいのよね。こういう時は、申し訳なくなる・・・)

 けれどジークの方は、滅多にないこの状況を楽しんでいた。

(アリスを抱いて運ぶなんて、滅多にないからな。思ったよりもずっと軽いし、華奢な感じがする・・・戦う姿を見ると、もっと・・・こう・・・だが実際は、柔らかくてイイな)

 アリスヴェルチェどころか、他の女性を抱き上げることさえなかったジークは、ただ嬉しくてたまらない。


「こちらが寝室です、先生」

 パンサは厨房の中の、もう1つのドアを開けて言った。

 そこはアリスヴェルチェが寝室として使っている狭い部屋だったが、簡素な木の寝台と小さなテーブルが1つ、そして壁の隅に衣装箱が置いてあるだけだ。

(質素過ぎる・・・くらいだな)

 ジークは彼女を寝台に降ろすと、さり気なく辺りを見回した。

 灰色の染みが浮く壁は、かつてここが倉庫として使われていた場所だと解る。節約生活をしていることは知っていたが、娘らしい調度の1つもない室内には少し胸が痛む。

(多少は援助できるけど、アリスは決して受け取らないからなぁ)


 騎士の給料は、決して高くはない。女騎士(Ritterin)と言ってもそれは同様で、騎士とは名誉的称号なのだ。それでもアリスヴェルチェとパンサの生活費は、節約すれば何とかやっていける。アーネストの生活については、近頃ある程度豊かになりつつあるポタジェ村の収益で賄えるようになっていた。


「少し寝るかい?」

 魔力切れは、『癒しの力』では回復できない。『癒し』は肉体的不調にしか働かないのだ。

「うん・・・このまま、ちょっと寝るわ。ありがとう、ジーク」

 もぞもぞと掛け布を引き上げたアリスヴェルチェは、そのまま直ぐに眠りに落ちた。



 数時間後、フッと目を覚ましたアリスヴェルチェは、窓から入る陽の光を見て、およその時間を知った。

(もう夕方ね。短時間だけど、熟睡したみたい)

 頭は大分はっきりしていて、まだ完全に回復したわけでは無いが、ふらつきも無く普通に行動できそうだ。

 ゆっくりと体を起こした時、寝台の傍のテーブルにある物が目に入った。


(・・・あれは・・・イヌバラ・・・)

 白に近い薄桃色の花弁が5枚、輝くような黄色の雄しべを囲んでいる。

 ノイバラとも野バラとも呼ばれる可憐な花が数本、ヒビが入ったカップに差してあった。

 そしてその横には、小さな篭に入った木苺の実。


 窓から入る風に揺れる花びらは、優しい空気を運んでいる。

 洗ってあるのだろう木苺は、瑞々しさに光っていた。


(ジークが、採って来たのね。庭にあったんだわ、きっと)

 密林のように生い茂った広い庭の中に分け入って、探して採って来たのだろう。生物学者で植物に詳しい彼は、野外採集や生態観察で野山に入ることも多い。

(もう、指を怪我することも無いのでしょうけど・・・・)

 アリスヴェルチェは、薄桃色の花びらにそっと指先で触れる。


 かつて何度も思い出した、懐かしい記憶。

 ポタジェ村での厳しい日々が続いていた頃、畑の片隅でイヌバラの花を見つけた時、子供の頃の出来事が鮮明に思い出された。そしてそれ以来、彼に会えない年月を過ごしながら、ふと思い出しては安らいだ思い出。



 あれは7歳ごろのことだっただろうか。

「アリス・・・これ・・・」

 目の前にひょいと差し出された、小さなイヌバラの花。

 木に登って服を破り、世話係の女官に叱られて、木の下に蹲っていたアリスヴェルチェの、半べそをかいた顔の前に現れた薄桃色の花。

「・・・・・・花壇の花を取っちゃいけないんだよ」

 意味が解らずそう告げたアリスヴェルチェに、ジークは不機嫌そうに答えた。

「花壇の花じゃない。あっちの茂みの中にあったから、イイんだよ」

 不貞腐れてような顔の少年は、花を更に突き出した。

「あげる・・・」


 彼の手の甲には赤い蚯蚓腫れが幾つも浮かび、指先には小さな血の玉がある。

 イヌバラの鋭く細かな棘が、まだ柔らかい少年の皮膚を傷つけたのだろう。


 それに気づいたアリスヴェルチェは、薄桃色の花を受け取り、膝の上に乗せた。

「ありがと・・・」

 そしてジークの手を掴んで引き寄せると、その指先を口に含んで舐めた。

「・・・・・・トゲ、入ってるといけないから」

 そうして、アリスヴェルチェはニッコリと笑った。

「・・・・うん・・・泣くなよ?」

 照れたように言う彼の言葉に、泣いてないもんと答えたあの時。



(何度思い出しても、懐かしくて・・・)

 心が安らいで、癒されるような気がする。

 アリスヴェルチェは、傍にあった木苺の実を口の中に入れて、その甘酸っぱさに口元を綻ばせた。



 それから数日後、アリスヴェルチェは1人で街中を歩いていた。

 ジークはあのデビルクロウ事件の後、兄である国王と会い、近頃巷に流れている噂について尋ねた。魔物の襲来が、以前より多くなっているという噂だ。

『戦う者』のトップである国王は、既にその事実を知っていた。そしてジークはその詳細を聞き、魔物が襲来した場所を全て教えて貰うと、その幾つかの場所に自ら赴いて調査したいと進言する。

 許可を得たジークは、手始めに近隣の3か所ほどを回ることにしたが、アリスヴェルチェは用事があるからと言って同行しないことにしたのだった。


(やっぱりこっちの杖は、少し重いわね。でも訓練になって良いかな)

 予備の杖をつきながら、石畳の道を歩くアリスヴェルチェは、軽い足取りになっている。今はもうすっかり義足に慣れ、走ることは流石に難しいが、速足くらいには歩ける。杖は必須だが。

(ああ、でも随分お金を使っちゃったわ。少しずつ貯めていた貯金が、ほぼカラ・・・でも、必要経費よね。また少しずつ、頑張って貯めれば良いんだから)


 そんな事を考えながら歩くアリスヴェルチェの耳に、路地の奥から怒声とくぐもった悲鳴が届いた。

 辺りを見回すが、人影は遠い。声を上げて人を呼ぶより行った方が良いと判断し、アリスヴェルチェは出来るだけ急いで路地に入った。


「ッこの、バカ女!役立たずっ!・・・愚図!アホウ!」

 罵声を浴びせている男は、地べたに倒れ伏している女性を何度も蹴りつけていた。

「やめなさいっ!」

 大声で怒鳴りつけ、アリスヴェルチェは駆け寄った。

「っ!な、何だお前は!」

 振り返った男の顔は真っ赤で、酒に酔っているように見える。

 アリスヴェルチェは何も言わず、杖で思い切り男の横腹を殴った。当然、ストレングスの魔法をかけている。

「グエェッ!」

 衝撃で吹っ飛び、塀に身体を打ち付けた男は、身体を折って横腹を抱え込む。

 もう1発、と向き直ったアリスヴェルチェに、男は大慌てでヨタヨタと逃げ出した。


「ちょっと、貴女・・・大丈夫?しっかりして」

 身体を丸めて倒れている女性に近寄ったが、気絶しているようで反応が無い。

(困ったわ・・・私じゃ運べないし)

 すると路地の出口から、若い男が声を掛けながら走って来た。

「大丈夫かっ。短足デブが路地から逃げてったのが見えたもんで・・・」

「この方が、襲われていたんです。どうしようかと思っていました」

「・・・俺ン家、ココだからとりあえず運び込むか」


 若い男はウル・クラフトと名乗り、大工で出仕事から帰って来たところだと言う。

 彼が持っていた大工道具を受け取ったアリスヴェルチェは、女性を運ぶ若い大工の後ろに付いて家の中に入った。


 質素な寝台に寝かされた女性は、直ぐに目を覚ました。

「大丈夫か?医者、呼んで来っからよ」

 大工のウルが声を掛けると、女性は弱々しくだがはっきりと答える。

「だ、大丈夫ですからっ」

 彼女の服装を見て、アリスヴェルチェは穏やかに尋ねた。

「貴族の方ですね。『癒しの力』がある?」

『癒し手』には自己回復力がある。多少の怪我や病気に、医者が必要になることはあまり無い。

「は、はい・・・助けて下さって、本当にありがとうございました」

「ああ、無理しなくて大丈夫。私はアリス。貴女は?」

「ヒルダ・リーフと申します。リーフ男爵家の・・・嫁です」


(ん?・・・普通は、男爵の妻って言うものじゃないの?)

 引っ掛かりを感じながらも、アリスヴェルチェは言葉を続けた。


「男爵家にお知らせしましょうか?」

「あっ、いえ・・・その必要は・・・無いと思います。私を・・・その・・・叱ったのは、主人なので」


「はぁっ⁉」

 アリスヴェルチェとウルは、同時に声を上げた。

「夫が妻を?しかも路地裏で?って言うか、あれが叱った行動だって言うの?」

 呆れかえって言うアリスヴェルチェだが、彼女の様子を見た限りでも殴る蹴るの暴行を加えていたのは事実だ。それを叱られたと表現するヒルダは、どこかおかしいのではないかと思う。

「・・・アイツが男爵かよ。見かけも中身もブタ野郎だな。おっと、それじゃブタに失礼ってもんだ」

 吐き捨てるように言うウルは、本気で怒っているようだ。


「私の本名は、アリスヴェルチェ・フォーゲルと言います。フォーゲル公爵の姉に当たります」

 自己紹介すると、ヒルダは驚いて顔を上げた。そんな彼女に、アリスヴェルチェは穏やかに微笑んで続けた。

「助けたからには、事情を聴いても良いのではないかと思いますが?」

 相手が貴族の女性だということで、安心したのもあるのだろう。少しだけホッとしたような表情になり、ヒルダはおずおずと頷いた。


「わ、私はダメな嫁で、いつも旦那様を怒らせてしまうんです。お義母様からも、厳しくご指導いただいているのですが、なかなか上手く出来なくて・・・」

「例えば?具体的に」

 アリスヴェルチェが促すと、ヒルダは途切れがちに話し出した。



 夫であるレオ・リーフ男爵は、ヒルダの3歳上で父親を早くに亡くしてから家を継いでいる。最下級の貴族とは言え『戦う力』はあるので、魔物討伐に出ることもあるようだ。現在ヒルダは、夫と彼の母親と一緒に暮らしている。


 レオはヒルダに対して、高圧的な言動を取り、頻繁に殴る蹴るの暴行を行っていた。

 返事が遅い。察しが悪い。顔つきが暗い。動作が鈍い。夫への敬意が足りない。などと、ありとあらゆる場面で、当たり散らすように罵倒していた。そして機嫌が悪いと、手が出る。


 姑は、息子を溺愛していて、嫁を完全に見下していた。

 持参金が少なかった。美人でもなく気も利かない。大事な息子を怒らせるようなことしかしない。そう言って姑は、嫁を使用人のように扱い、嫁の躾だと言って理不尽な扱いをする。


「私の実家は、子沢山の子爵家で裕福ではありません。追い出されても、帰ることなぞ出来ないのです。両親にもそう言われて、嫁いできました。もう丸2年になりますが、まだ身籠ることも出来ないので、ダメなハズレの嫁なのです」

 ヒルダの言葉を聞いて、アリスヴェルチェは大きく溜息をついた。

(ダメでハズレって・・・2年も言われ続けたら、思考もマヒするわね。洗脳に近い感じかしら)

 これは厄介だと思わないでも無いが、ここまで聞いてしまっては放っておくことも出来ないと思う。暫く考えて、アリスヴェルチェは口を開いた。


「リーフ男爵は、貴女を探し出して連れ帰り、以前と同じ生活を続けるつもりでしょう。ただ、少なくとも今日1日は。痛くて動けないでしょうけど。横腹を思いっきり殴りつけたのでね。杖でだけど」

「・・・はぁ」

 杖とは言え、女性が思い切り殴ってもどれほどの物かと思うヒルダだ。けれどウルは、擦れ違った男爵の姿を思い出して、相当のダメージを受けているのだと解っていた。


「でも、アイツはアンタを探すんだろう?だったら、ここにいるのはマズくないか?現場に近すぎだろ。で、思いついたんだが、俺の店の2階に移動しねぇか?」

 大工のウルは、基本現場に出て仕事をするが、端材を使って趣味で木工製品を作っていると言う。これが結構評判が良いため、商店街の片隅に小さな店を出して置いていた。店を開けるのは大工仕事の無い日だけなので、普段は誰もいない閉店状態だと言う。


 どうやらこのウルと言う男は、虐げられている男爵夫人を助けてやりたいと思っているようだ。見かけ通り、熱血漢で義侠心に富んだ人物なのだろう。


「店は小さいけど2階建てで、鍵を掛けておけば誰も来ねぇしな。少なくとも、怪我が治るまでは家に帰らない方がイイんじゃねぇか?」

「で、でも・・・・そこまでお世話になるわけには・・・」


 するとアリスヴェルチェも、ウルの勧めを後押しする。

「もしかしたら、ある程度の事は何とか出来るかもしれません。時間を貰えませんか?それに、急いで帰っても、しばらく行方不明になっていても、男爵やお姑さんに叱られることに変わりはないでしょう?」

 とりあえず、明後日までウルの店で身を隠していて欲しいと言うアリスヴェルチェに、ヒルダは申し訳なさそうに頷いた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ