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スケアクロウの翼   作者: 甲斐 雫
第2章 王国の東

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13/21

2 アルアイン公爵の領地

 王都の門を出た時は、もう夕暮れが近かった。

 アリスヴェルチェとジークは、東へ馬を走らせたが、丘を2つ3つ越えた辺りで野宿をすることにする。2人は慣れた様子で安全な場所を見つけ、手際よく火を起こすと、ジークが買って来た夕食を一緒に食べる。

 開放感を覚えるのは、一時的とはいえ面倒ごとから逃げられたからかもしれない。


 夕食を終えてひと段落したところで、ジークは焚火の炎を見ながら、徐に口を開いた。

「アリス、言って置きたい事があるんだ」

「ん?・・・何?」

「イレーネの件だけど、絶対に結婚はしないからな。それだけは、信じていて欲しい。傍にいて欲しいのは、アリスだけだから。一生、愛し続けるから」


 滅多に『愛している』とは言わないジークの言葉に、アリスヴェルチェは一瞬面食らった。

「・・・は・・・はい、ええと・・・」

 ここは自分も、言った方が良いのかもしれない。

「私も・・・ええと・・・愛しています・・・けど?」


 甘い雰囲気がまるで無い、愛の言葉の交換に、話の接ぎ穂が無くなった。

 微妙な沈黙が続き、ジークはいっそこのまま抱きすくめてキスしてしまおうかと手を伸ばす。

 けれどそこで、アリスヴェルチェは唐突に口を開いた。


「イレーネをきっぱりと拒絶したら、彼女は私の義妹になるのよね?」

 想像するだに、ありがたくない状況だ。

 ジークは少し残念そうに手を降ろしながら、真面目な顔で答えた。

「それは絶対に避けたいところだから、考えがある」


 ジークは淡々と説明を始めた。

 アルアイン公爵にとって、娘が王弟と結婚して王族と繋がりを持つ方が、没落貴族に嫁がせるよりメリットが大きいことは確かだ。古い家柄だと言う家名と、僅かな領土を得ることは、今の彼にとっては大した物でもない。それでも少しくらい、娘が家の役に立てばいいという程度なのだろう。

 レイラ王女が正式に院主になるまでは、まだ1年くらいは掛かるだろう。それまでは、王弟殿下を気長懐柔するつもりだと思われる。


「姉上は、院主になるのが早くなりそうだと仰っていたが、それを外部に漏らさないようにお願いしている。ギリギリまで隠しておいて、油断させておこうと思ってるんだ。それまでの間は、脈がありそうな素振りを時々しておいて、婚約が近いくらいに思わせておこう、とね」


 そして突然レイラ王女が院主になったら、婚約や結婚はかなり難しくなり、時間が掛かるだろう。それまでの間に、アルアイン公爵の謀反の証拠を押さえておきたい、とジークは言った。


「ただそうなると、イレーネとの間に関して、変な噂が立つかもしれない。だがアリスには、それを聞いても、信じていて欲しいんだ」


 アリスヴェルチェは、焚火の炎を見つめながら、静かに頷いた。

「解ったわ・・・私はいつも、ジークに対して申し訳ない気持ちと、私で良いのかなって思う気持ちを持ってる。普通に考えて、私は恋人や結婚相手としては、事故物件だろうと思ってるから」

「へ?」

 不動産じゃあるまいし、とジークは思うが、アリスヴェルチェの方は、淡々と指を折って話を続ける。


「家は没落してて貧乏だし、『癒しの力』を持たない貴族女性で、女だてらに魔物と戦ってるし、掃除や料理、裁縫や刺繍も出来ないし、片足は義足だしね」

「知ってるけど? だから? それがアリスだろ」

「あはは、そうよね。だから、自信は無いって言うことなの。でも、ジークが信じろって言うなら、信じていられると思う」

 最後にアリスヴェルチェは、素直な笑みを浮かべて言った。

 漸く恋人同士らしい雰囲気になり、ジークはホッとしたように彼女を抱き寄せた。



 翌日は朝から東を目指し、馬を駆る。

 眩しい朝日の中を進むと、やがて広い緑の沃野に入った。

「もうここは、アルアイン公爵の領地だな」

「ええ、ホルン地方・・・この辺りは、以前はフォーゲル家の領地だったわ」


 アリスヴェルチェは、ここホルン地方の街、ミルテンベルクの館で生まれ育った。健康にすくすくと育ち、やがて弟アーネストが産まれた。病弱な弟に母親は掛かりきりになったが、賢明な女性であった彼女は、娘にもしっかりと愛情を注ぐ。

 母と弟は領地の館を離れられないので、父であるフォーゲル公爵は、王都に行く時は必ずアリスヴェルチェを伴った。10歳になって魔法検定が行われるまで、少し風変わりな少女ではあったが、彼女はごく普通の公爵令嬢として過ごしていたのだ。


 爽やかな風の中に立ち、豊かな髪を風に靡かせているアリスヴェルチェを見ながら、ジークは優しく声を掛ける。

「懐かしい?」

 けれど彼女は、短く答えただけだった。

「そうね・・・・・」


 ホルン地方は、フォーゲル公爵が謀反の疑いを掛けられた時から、アルアイン公爵が一時的にということで管理をしていた。自分の領地であるマイミス地方に行くための通過点でもあるから、丁度良いと進言して通ってしまった感じだ。その後直ぐに、フォーゲル公爵夫婦が亡くなり、そのままアルアイン公爵が自分の領地としてしまっている。

 丁度その頃、国王が譲位しなければならない事態が突然起こったため、どさくさに紛れて、上手いことやったのではないかと思われる。

 そうして今、王都の東側の殆どが、アルアイン公爵の広大な領地となっていた。


 やがて眼下に街並みを見下ろせる丘の上に来ると、アリスヴェルチェは彼に告げる。

「ミルテンベルクの街ね。あの中に、領主館があるわ。私は街の中に入らない方が良いと思うから、情報収集はジークにお願いしてもいいかしら?」

 この街を離れて、5年くらいになるが、まだ自分を知っている人はいるだろう。前領主の娘が来たと言う話が、今この地方を任されている公爵の妾腹の息子に伝わって、公爵の耳に入っても厄介だ。

「解った。確かに、その方が良いだろうね。それじゃ、明日の正午ごろ、街の東側から出るから、その辺りで合流しよう」


 ジークはそのままミルテンベルクの街に入り、あちこちで話を聞きながら宿を取った。そして翌朝も、宿の主や市場の人々から情報を集め、昼近くに街を出る。

 しばらくゆっくりと馬を進めていると、街道沿いの林の中から、待っていたようにアリスヴェルチェが出て来た。

「アリス、昨晩は大丈夫だったかい?」

 彼女ならば、ひと晩の野宿くらい何の心配もないと解ってはいるが、それでも気掛かりなのは変わらない。大切な相手ならば、それも当然の事だろう。

「ええ、大丈夫。グラーネもいるから、寂しくも無かったわ。それより、お疲れ様。何か、解ったことはある?」

 馬を並べてゆっくりと東へ進みながら、ジークは安心したように報告を始めた。


「このところ、飛んで行く魔物の姿をよく見る、とあちこちで聞いたな。東の方から来ているようだが、北や南の方角に去っていくらしい。この地方には、特に被害はないそうだ」

「元々、この地方には、生息する魔物も少ないのよ。いても、害がない大人しい魔物くらいね。だから、農作物や家畜からの収益も、安定しているわ」

 そんな平和な土地で、アリスヴェルチェは幼少期を過ごしたのだ。


「後は、アルアイン公爵だが、ここの館にひと晩泊まって、翌朝には更に東へ行ったそうだ。手勢の者たち少数を連れて、馬で行ったと聞いた」

 馬車を使わなかったのは、その方が早いと言うのもあるが、まだ彼が『戦う者』として現役であるということに他ならない。彼が防御系の魔法に優れていると言うのは、周知の事実だ。


「それじゃ、私たちもサッサと進んだ方が良いわね」

 アリスヴェルチェはそう言って、グラーネの腹を軽く蹴る。軽々と駆ける葦毛の馬は、主を乗せてどこか楽しそうだった。



 低い山を幾つか越えると、昔からアルアイン公爵領であったマイミス地方に入る。この地方にある大きな街は、レザンと言う名で、公爵の館もその中にあった。

 ここならば自分を知る人もいないだろうと、アリスヴェルチェはジークと一緒に街に入る。


 旅行着として愛用している狩猟服を着たアリスヴェルチェは、男装に近い姿をしているにも関わらず、品の良い令嬢に見えた。貴族と言うより、裕福な商人の御令嬢のようだが、凛とした雰囲気は隠しきれない。

 一方ジークは、いかにも学者のフィールドワークのような姿で、とても王弟には見えない格好だ。持って生まれた気品は見事に隠しており、少し気難しげだが真面目な様子は、相手を安心させる何かがあった。


 ひらりと愛馬グラーネから降りると、アリスヴェルチェは仕込み杖を片手に持ち、轡を取って歩き始めた。片足が義足であることを、微塵も感じさせない自然な歩様は、彼女の努力の成果だ。

 一歩足を出すごとに、ごく微量の魔法を使って左足の強化と負担軽減をして、それを無意識に自然に行えるようにまでなっている。短時間なら、走ることも出来る。

 杖をつく必要も無いが、護身用の武器として常時携帯している仕込み杖だ。


 ジークも馬を降り、2人は街路をゆっくりと歩いた。

「かなり大きな街だな。賑やかで活気がある。発展途上という感じだな」

 街の中には、新しく建築中の建物が幾つか見える。人々も忙しそうに行き交い、王都に準じるような規模ではないかと感じさせられた。

 取りあえず目についた宿に入って部屋を取り、馬たちを預けると、アリスヴェルチェとジークは賑やかな屋台街へ足を向けた。


 暖めたパンに切れ目を入れ、レタスと玉ねぎのスライスにドレッシングをかけたものと、鉄板で焼いたソーセージを挟んだ品を売る屋台は、話好きそうな雰囲気の中年女性がやっていた。

 そろそろ売り切れそうなその品を、ジークは2つ購入する。

「この横で食べていっても良いかな?」

「ああ、構わないよ。残りはあと1つだから、そろそろ店じまいだしね」

 立ったまま、パクリとひと口齧った2人は、素直に驚きの声を上げた。


「・・・これは、絶品だな!」

「ホント、レタスと玉ねぎは新鮮だし、ドレッシングの酸味が良いわ。ソーセージも、肉汁が溢れて来てスパイスが効いてて最高ね」


 2人の言葉に、屋台の女性は嬉しそうに笑った。

「嬉しいねぇ、ドレッシングはアタシのお手製だし、ソーセージは旦那が作ってるんだよ。小さな肉屋をやってるんだけどね」

 最後の客に品物を渡しながら答えた女性は、慌てる風もなくのんびりと店じまいを始めた。

「それにしても、いい街だな。レザン、と言ったか。アルアイン公爵の領地だよな」

 話しかけたジークに、女性は手を止めて楽しそうに答える。

「ああ、そうだよ。旅の人なんだね。ここはちょっとばかり税は高いけど、魔物の襲撃も無いし、街はどんどん発展してるからねぇ」


「そうなのね。アルアイン公爵って、どんな方?」

 行儀は悪いが、モグモグとパンを頬張りながらアリスヴェルチェが無邪気に尋ねる。

「若い頃はね、イイ男だったよ。今はもう、すっかり中年だけどさ。お妾さんが何人もいたみたいだけど、それは貴族だからそういうモンだろう?奥方様は早くに亡くなったけど、その後も噂が絶えなかったねぇ」

 こう言う噂話は、大好物なのだろう。

「へぇ、どんな噂?」

「あっちの山の中に、美女を隠してるっていう話さ。もうだいぶ前の話だけどね・・・」


 正妻を亡くした後しばらくして、アルアイン公爵はそれまでたまに別荘として訪れていた山城に、頻繁に足を運ぶようになった。数名の雇人を置き、食料や衣類などの品も運び込まれたと言う。


「その美女には、誰も会ったことが無いんだけど、きっと身分違いの女性で、公には出来なかったんじゃないかって皆言ってたね。でも、近頃は・・・もう、10年近くなるかねぇ。雇人も移動させられたみたいで、食料品とかも運び込まれなくなってね。噂じゃ、その美女は亡くなったんじゃないかって言われたんだよ」


 以前は足しげく通っていた公爵も、領地に戻ってきた時は必ず、その山城に行く。城に通じる道は、麓に番人を置き、誰もそこへ行かれないようにしていると言う。


「公爵様にとっては、大切な思い出の場所なのかもしれないね。ちゃんとお墓参りしに行くんじゃないかって、言ってるんだよ。公爵様は、悪い噂も聞かないんじゃないけど、そういう点ではいいところもあるんじゃないかって、街の人は言ってるね」

 少なくとも、自分の領地内では、それなりに評価されているアルアイン公爵らしい。


(まぁ、謀反を画策しているなら、地元はしっかり統治しておかなければならないからな)

 ジークは残りのパンを飲み下しながら、腹の中でそう考えていた。



 翌日、早朝に宿を出た2人は、昨日聞いた話を元に、東の山にあると言う山城の方へ向かった。

 宿の主に聞いた話では、山城と言うより砦のような物らしい。昔の領主が建てたものだが、多少改装して別荘のようにしていたそうだ。とは言え、周りに何も無い、面白くもない場所なので、殆ど使っていないと言う。


「・・・番人を置いている、と言うのが気になるな」

 ジークは、とりあえずその番人とやらに、話を聞いてみるつもりだった。公爵の若かりし時のラブロマンスなどはどうでも良いが、何となく引っ掛かるものを感じていた。


 散策するような風情で馬を進めていた2人の前に、やがて物々しいような柵と扉が見えてくる。

 道は隘路と言って良いくらいに、細くて険しい。馬が1頭歩ける程度で、両側は岩と木々がぎっしりと立ち並んでいる。この道を通る以外に、先に進める方法は無いと思われた。


「おい!ここから先は、立ち入り禁止だ!」

 門の手前にあった小屋から、1人の男が飛び出して来た。

「御領主様の命で、何人たりとも通すなと言われている」

 真面目そうな男は、手に持った槍の石突でこれ見よがしに地面を叩いた。


「これは失礼した。そうか、ここが噂で聞いた、御領主様の禁足地なんだな。実は私は、王都の作家なんだが、次の作品のインスピレーションを求めて旅をしているんだよ。せめて、その門だけでも見たいと思ってね」

 ジークの噓八百な言葉に、けれど番人はコロッと信じてしまった。

 確かに見た目は、どこか文人のようでもある。

「・・・ほう・・・まあ、ここを見るだけなら・・・で、あの女性は?」

「恋人だよ。狩人なんだ。旅の護衛も兼ねて、一緒に旅してるんだ」

 ジークは馬から降り、荷物の中から酒瓶を取り出した。

「もし良ければ、話を聞かせて貰えないかな。ロマンチックな話だと、嬉しいんだが」


 門の前の地べたに座り込んで、ジークは番人の話を聞いた。アリスヴェルチェは、少し離れた場所で辺りを見回している。

「俺も中に入ったことは無いんだが、多分この先の城に、御領主様の愛人のお墓がるんじゃないかって思ってるんだ」

 こんな場所で1人で番人という務めを続けていると、誰かと話をすることが嬉しくもなるのだろう。男はジークが勧める酒を美味そうに飲みながら、楽しそうに話し始めた。

「番人は交代制だけど、他のモンもそう言ってるぜ。公爵様以外は、誰も入れないしな。城に誰もいないのは解ってるんだ。でも公爵様は、少なくとも月に一度は来るよ。そうさナ、半日くらいは居るな。思い出に浸ってるんだろうな。そう言えば、昨日も来てたよ」


(うわ、鉢合わせしなくて良かった)


 運良くすれ違いで済んだことに安堵して、ジークは更に言葉を続けた。

「誰も中に入れないってことは、公爵様にとってここは聖域なのかもしれないな」

「・・・イイこと、言うねぇ。この辺りは深い森と大きな岩が沢山あって、この門を迂回するのは、ほぼ不可能なんだ。だからここさえ守っておけば、城には行くことが出来ないんだな」


 どうやらこの先に進むことは、不可能なようだ。

 ジークは当たり障りのない話を暫し続けて、やがて番人に礼を言って立ち上がった。


「おや?アリスヴェルチェは、どこに行った?」

 グラーネだけが待っている場所に行くと、近くの木の陰から彼女が顔を出した。

 見ると腕の中に、真っ白で真ん丸な毛玉を抱えている。


「話は終わった?」

「終わったけど・・・それは、マルム?」

 アリスヴェルチェの腕の中の毛玉が、もぞもぞ動き、その顔をジークの方へ向けた。

 むくむくの毛皮に覆われたボールの様な生き物は、小さな黒い眼鼻を細かく動かしている。あるか無いかの小さな耳が、ピクピクと揺れていた。

「ええ、鳴き声が聞こえて、行ってみたら木の股に挟まってたの」


 マルムとは魔物の一種だが、人に対して特に害はない。臆病で、そもそも人前に出てくることも稀だ。魔物として区分されているのは、その特殊能力故だ。

 とにかく、凄い勢いとスピードで弾む。

 短い手足を丸め、大きな毬のように跳んで弾んで移動する。一抱えはある身体は、軽く柔軟だ。


「ちょっと怪我してるみたいなんだけど・・・」

 よく見ると、マルムの横腹に擦れたような傷があった。

「うん、治してみよう」

「え?・・・出来るの?」


『癒しの力』は、本来相手が人間の時だけ効果がある。動物や、まして魔物相手では、そもそも生き物が持つ波動が違うのだとされていた。


「実は、少しずつ修行してたんだ」

 採集旅行などの時、折に触れては、怪我をしている動物の治癒にトライしていたジークだった。異なる波動を上手く合わせて、同調するスキルを身に着けていた。


同調(チューニング)・・・・・・」

 ジークは掌をマルムに翳すと、小さく呟く。その行為は、かなり大変なようで、時間が掛かった。けれどやがて、彼は通常の『癒し』の呪文を呟き、マルムの傷は直ぐに治った。


「ふぅ・・・これで良し・・・でも、やっぱりこれは疲れるな。魔力消費が大きすぎる」

 ぐったりと座り込んだジークを見て、アリスヴェルチェは腕の中のマルムをそっと地面に降ろした。

 真っ白な毛玉は、お礼を言うかのようにその場で小さく何度か弾むと、やがて身を翻して森の奥へと跳び込んで行った。


「ジーク、休んでから帰りましょ。傍にいるから、安心して眠って」

 少し離れた場所に彼を誘導し、野宿用の毛布を広げてそこに彼を寝かせたアリスヴェルチェは、大切な人を守る女騎士(リッテリン)として、その傍らにありつづけた。



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