婚活プリンセスのハッピーエンド
友人と一文ずつつくった物語です。頭空っぽにして読みましょ。
むかしむかし、あるところに大きなお城と素敵な家族を持つお姫様がおりました。お父上もお母上も健在でそれはそれはお優しく、次期国王はお優しい兄上でございましたから、お姫様は何不自由なくすくすくとお優しい姫君に育ちました。元気に育ったお姫様は御歳29歳、もうすぐいきおくれとなってしまうお歳頃でした。しかし、お姫様はことごとく男を見る目がなかったのです。彼女の初めての彼氏は隣の国の王子様でした。彼は自国の文化を大切にする方でした。お姫様はそんな姿を好きになったのですが、彼はそれを彼女にも強要するモラハラ男でした。お姫様の国の文化を理解せず、郷に入っては郷に従えと日々強要してくるので、お姫様は心を病みました。彼女が次にすきになったのは騎士団長のご子息でした。勇敢に戦う姿に思わず好きになってしまったのですが、彼は良くも悪くも女性の扱いが雑でした。力が強いこともあり、お姫様はすぐ怪我をしてしまうのです。騎士団長のご子息はDV男でした。
そんな娘を見かねた国王様は、もともと恋愛結婚推奨派でしたが、仕方なくお見合いの場を設けることにしました。そう、舞踏会です。舞踏会に呼ばれる条件は
性格がよく、ある程度の容姿とある程度の教養とある程度の身分があることでした。そうして集まったのは5人の貴公子でした。
「よくぞ舞踏会に集まってくれた。心優しい貴公子たちよ。今宵は姫との親睦を深めて欲しい。あとは当人に任せることとしよう」
国王はお姫様の肩を叩いてエールを送るとその場を後にしました。
お姫様は1人目の男に挨拶をしました。
「クラダリ国第1王女、クララと申します」
「これはご丁寧にどうも。カール公国公子カールJrです」
カール公子は、丁寧な挨拶で応えます。
カール公子は、姿は中性的で、身分もお姫様に相応しい好青年でありました。ただ少し気になるのはクララ姫よりも歳若いことでしょうか。しかし、思ったよりカール公子のエスコートはスマートでありました。クララ姫もその素敵なエスコートに今にも心を奪われそうでした。そして、お見合いが終わる頃、彼がお付きの侍女を呼びました。
「おい、あれをお姫様へ」
「かしこまりました」
公子にお付の侍女は抱えるほどの贈り物を持ってきました。そうして、お姫様に献上いたしました。お姫様がありがたく受け取ると、公子は嫌そうな顔をしました。
「どうかなさいまして、公子」
「クララ姫、今贈り物を開けてはくれませんか」
「今?どうしてですの?」
「今でないと、意味が無い贈り物なのですよ」
公子の強い望みもあって、お姫様はその場で贈り物の箱を開きました。
すると、大きなピエロがわっと出てきたではありませんか。
お姫様は驚いて、思わず「ぎぇ」とおよそお姫様とは思えない声を出してしまわれました。それを見て、公子はひーひーと腹を抱えて笑っているではありませんか。
お姫様はその場を誤魔化すように咳払いをして、公子を締め出したのでした。
次にお姫様に紹介されたのは、カエルの王子様でした。なんでも、カエルのお国では1番の美丈夫だとか。カエルの王子様は見事な挨拶をし、少しベタつく手をお姫様に差し出しました。
カエルの王子様カエサルと名乗りました。王子はお姫様より2つ上、カエルの国はひとつしかありませんから戦争もありませんし、なによりとても紳士的です。
「おぉ、お姫様。私めに機会を与えて下さり感謝いたします。なんといっても、私は出会って直ぐに貴方を好きになってしまったのですから」
などと、ロマンチックな一言まで言うのです。
彼の姿がカエルでなかったら、どんなに良かったでしょうとお姫様は何度も考えました。しかし、さすがにカエルのお嫁さんというのはなんとも滑稽ではありませんか。お姫様はその場でお断りしました。
3人目は隣国の貴公子でした。彼の名はアムル。彼は由緒正しい家の者で、お姫様の方が少し年上です。この国で好ましいとされるブロンドの長髪、ハッキリとした目鼻立ち。少し崩した略式の礼と共に、アムルは甘い言葉を囁きます。
「なんと麗しの姫君。あなたは精霊の生まれ変わりのようですね。絹のような黒髪がとてもお似合いだ」
はにかむ唇から真っ白な歯がのぞきます。
そんな彼に少し気になるところがあるとすれば、彼は許嫁と少し前に婚約破棄をしている点と彼の周りで金粉を散らしている愉快な従者たちでありましょうか。派手な演出にお姫様は下品にも吹き出しそうになる口元を扇で覆い隠しておりました。
たくさんの王子と出会ってきたお姫様だが、ここまで王子らしい貴公子もなかなかに珍しいのです。面白いアムル公子なのです。
こんなやつと夫婦になるのも悪くない、そう思ったお姫様でしたが、お姫様が手を置こうとしたその時、少女が叫んだのです。
「ちょーっと待ったぁぁぁあ」
何事かと思ったお姫様でしたが、声がしたドアの方を見ると、純白のドレスを着たご令嬢が衛兵に捕らえられながら、こちらに連れられて来るところでした。
「アイリーン!!」
アムルが驚きながら、そのご令嬢に駆け寄っていきます。
「どうしたんだ。来ちゃダメって言ったじゃないか」
「おにぃさま!なぜ私を置いていかれるのですか。私のことが嫌いになったのですかっ」
「そんなわけないじゃないか!だが、俺たちは兄妹で……」
目に大粒の涙を浮かべた少女はアムルにすがりついています。
おふ、これは。と嫌な雰囲気を察したお姫様の目と耳を下女が覆い、お姫様はそれ以上何も見ませんでした。次の瞬間にはもうアムル達は金粉を散らしていた従者ごと居なくなっていました。
4人目の候補は、坊主でした。神を崇める信仰国の王であり、お姫様より6歳ほどお年が上です。
その人は酷く厳格で、自分は妻を娶りたくないと話します。しかし、王であるため、その血を受け継ぐものが欲しいとあれこれ画策した周囲の者たちによってついにお見合いの場までやってきたと話します。こちらは何も聞いていないのにペラペラと話します。嫌々来たのは、こちらとしても悪いので、早々にお断りさせていただきました。それにもかかわらず、何故か王が肩を落としていたのはなんとも解せないお姫様なのでした。
最後に5人目の候補はなんとも不思議、珍妙な格好をしていました。頭にターバンを巻きゾウなどという巨大な馬に乗ってやってきたといいます。ターバン男は身分はこそ高くありませんが、商人として大成功を収め、ものすごくお金持ちなんだそう。1部では石油王などと言われ、崇められているのだとか。お姫様も持ち込まれた金銀財宝に思わず目の色を変えました。ようやく素晴らしい伴侶に出会えたのでしょうか。しかし、現実はそううまくはいきません。
「(¥@*’(;&$!;”’=_¥$」
王子様は凛々しい笑顔でお姫様に手を差し伸べました。しかし、その間、挨拶をしていたのか口説き文句を言ってくれていたのか、お姫様にはちっとも聞き取れないのです。国が遠いからか、言葉ができるものもなく、お姫様はなくなくお断りしました。
さてさて、ついに5人と顔を合わせたお姫様でしたが、白馬の王子様はおりませんでした。
そして部屋に帰ったお姫様はきついコルセットを脱ぎ部屋着になると、下女が持ってきた缶ビールを煽りました。
「あたしって、そんなに価値ないかしら!!」
お姫様は言います。
「これでも、一国の姫なのよ!そりゃ、三十路近いけど!!……こんなことになったのも全部元カレのせいよっ」
泣き言は止まりません。
そうして枕を涙で濡らしていると、そこへ小さな妖精がやって来ました。
「どうもこんにちは、レディ。私は妖精教会結婚相談所のペティと申します。私共は近年、誕生を祝福する子供の減少に伴い婚活市場に乗り出すことに相成りました。レディがお客様第一号の新しい企業でございます!」
小さな妖精のペティはお姫様の周りをクルクルと回って、綺麗にお辞儀して見せました。
「先程のお話聞いておりました。今でしたら、初回特典として、こちらの価格で運命の人を見つけることが出来ます!いかがでしょう!」
ペティはどこからともなく取りだした電卓をカタカタと操り、目の前に金額を弾き出しました。お姫様としては少々高い気もしましたが、運命の人と聞いて、胸がときめいていました。
お姫様はよく説明を聞きもせず、「契約するわ!」とおっしゃいました。
その数日後のことでございます。妖精ペティが1人の王子を連れてきました。
その方はなんと、お姫様が2番目にお断りしたカエルの王子様ではありませんか!
なんということでしょう。お姫様は期待していただけに落胆が大きかった様です。
「妖精ペティよ。話が違うのでは無いかしら?」
「お姫様、お気をお鎮めください。私を信じて、カエルの王子とよく知り合うのです。さすればあなたのシンデレラストーリーが始まるはずなのですよ」
お姫様は仕方なく、カエルの王子と話してみることにいたしました。
「王子よ。あなたご趣味は」
「調理でございます。一国の王子が何をと思われますでしょうが、あれは奥が深く突き詰めていくと素晴らしい味に出会えるのです」
お姫様はほぅ、と頷きます。王子は長い舌をベロリと出して答えました。
「王子よ。私が嫌なことがあり、泣いていたらどうなさいます?」
「隣でただ座って待ちましょう。私は壁になります。あなたがいくら当たってもつき返したり、砕けたりしない頑丈な壁でございます」
お姫様は長い長いお見合い質問の解答用紙を出してきて、回答と照らし合わせ始めました。王子様は嫌な顔ひとつせず、ニコニコと答えます。スラスラと答えていくにつれ、お姫様もカエルの王子カエサルが人間であったらどんなに良いかしらと思うようになりました。心惹かれ始めていたのです。
「それではカエサル様。最後の質問でございます。」
「えぇ、どうぞ」
「私とあなたの国民、どちらかしか助けられないとするなら、貴方はどちらを助けます?」
カエサルは黙りこみました。しばらく、懇々と悩み続けていましたが、遂に答えを出しました。
「我が民を助けるでしょう」
「ほぅ?私ではないと?」
「えぇ、しかしそれはあなたを大切に思っているかどうかとは関係ないと考えます」
お姫様は首を傾げました。カエサル王子は続けます。
「私が知る貴方は、民を思い民に好かれるお方。そんな貴方が危機に瀕しているというのに、周りのものは助けないでしょうか。神は助けないと?そんなはずは無いのです。それであるならば、我が民はどうか。親をなくした孤児かもしれぬのです。神も助けようとしない盗人かもしれません。だからこそ私は、我が国民を助けるのです。もちろん、私がその時理性的であればの話ですがね」
姫様はそれを聞いてなんと素晴らしい心の持ち主なのだろうと感じました。過去であったどんな男性よりも素敵です。しかし、お姫様は悩みました。彼はカエルなのです。彼のねっとりとした肌は体温を感じることが出来ず、お姫様は沼地にひっそり建つ小さな小さなお城でくらさなければなりません。
しかし、妖精さんの言うことです。何かしら、意味があるのではないでしょうか。
お姫様は素晴らしい内面を持つカエサル王子を見て言いました。
「あなたはとても素敵な方。貴方と私はぴったりな伴侶となるでしょう。ですがあなたと私では体の大きさが違います。身体の姿かたちも全く違うでしょうあなたが私を愛しても、私があなたの事をどんなに思っていても、その事は変わらない事実なのです」
お姫様はカエサル王子の方へ歩み寄っていきました。そして、カエサル王子の目線に合わせてしゃがみこみ、2人は見つめ合いました。お姫様の目には溢れんばかりの涙を溜めています。
「でも、それでも」
2人は恋に落ちておりました。お姫様の涙を拭おうと、カエサル王子がお姫様の頬に手を伸ばしました。すると、お姫様の涙は綺麗に一筋の線を描いて王子の湿った手のひらに落ちたのです。
するとどうでしょう!王子の手のひらから城内を覆うほどの光が充ち満ちていくではありませんか。
しばらくして、お姫様は眩しい目を瞬かせました。
「目が〜、目が〜」
ちなみにお姫様はメガネをしてはおりません。しばらくして目が慣れてくると、目の前には体格の良い人間の男性がいるではありませんか!
「あ、あなたは?」
男性はびっくりしたようにお姫様を見て言いました。
「私はカエサルです。お姫様」
お姫様を目をひん剥いて口をあんぐりあけました。
人間になったカエサルは今まで会ったどんな元彼より、お姫様のタイプな外見をしていました。
カエサル王子は見慣れない人間手を見てしばらく首を傾げていましたが、下女が持ってきた鏡を見ると、驚きながらも喜びました。
2人は瞬く間に恋に落ちました。そしてまもなく、盛大な結婚式が行われました。
お姫様はお望み通り、素敵な男性と結婚できたのです。
めでたしめでたし。
以上、国民が支払う税金の提供でお送り致しました。
CM:妖精教会は300人が生涯支払う血税で、運命の相手をご提供致します。
にっこり。