1-3 ひとり立ちは突然に
「アルト、俺とローズは今日家を出る。もうここには戻らない」
「はい?」
「それにあたってまずこの星の所有権をお前に移す」
そう言うと親父は以前俺にくれたゲーム機のような端末をどこからともなく取り出しいくつか操作してから画面を俺に見せた。
「この最終確認をお前の生体で認証すればこの星はお前の物になる。あとはお前の好きにすればいい。」
「待ってくれ親父、頭がついていかないんだが」
「今のままだと所有権を移しても権限の大部分を操作する手段がない。そこでこの後のことは以前遊びに来てくれたディムおじに任せてある」
「後のことはディムに聞くと良いわ。とは言ってもアルトをとある施設に連れてってもらうだけのことなんだけど。」
「とりあえずお前に認証してもらわないと話が先に進まん。この部分をタッチしてし手続きを終わらせようか」
怒涛の展開に頭が追いつかないが、とりあえず所有権の移譲をするために端末にタッチをする。すると親父の全身が光輝き、その光が俺に移り灯り一気に輝いて消えた。
「これでこの星はお前の物だ。このままここで生きていくなり、世界を旅して回るなり好きに生きていくといいだろう」
「まぁゲーム好きのアルトだもの、私達と同じ道を選ぶと思うけどね」
ふふっとお袋のローズは笑った。
「お前ら、いつまで経っても人使い荒くないか?」
急に背後から聞き慣れない声がして臨戦態勢で振り返るとそこにはいつの間にかディムがいた。
「ナイスタイミングだディム。ちょうど今すべて説明と譲渡が終わったところだよ」
「久しぶりねディム。私達はもう行くわ。後のことは宜しく頼むわね」
「まったく、今度1回奢りな?」
「お手柔らかに頼むぜ?」
「それじゃアルト、私達は行くけどあなたが進む先次第では今後また会うこともあると思うわ。その時を楽しみにしてるわね」
そう言うとお袋は親父の横に寄り添って立ち、次の瞬間に眩い光に包まれ親父共々跡形もなく消え去った。
(一気に色々あり過ぎないかこれ・・・・・)
そう思いながらディムおじを見つめる。以前にここに遊びに来た時に会っているが3年は前になるだろうか。
「ディムおじさん、お久しぶりです」
「よぉアルト、元気にしてたか?前見た時よりだいぶ成長したみたいだな」
(この人もか)
そう思った。以前に見た時は戦闘なんてからっきしの人の良さそうなおっさんって感じだったが、今目の前にいる人間はまるっきり別人の印象を感じる。
「久しぶりの再会だが生憎とこっちも忙しい中抜けてきてる身分なんでな。とっととやる事やらせてもらおうかね」
「やることやる?」
思わずゾワゾワっと身体が身震いを起こし後ずさりする。以前にそういう内容と知らずにその手の恋愛ゲームをやったことがあったがあまりも衝撃に2回目の起動は出来ず、数少ない未クリアゲームになっている。
「アルト少年、俺はちゃんと女の子が好きな健全な男子だよ?勘弁してくれ(笑)」
「すいません。トラウマゲームを思い出しちゃいまして・・・」
「とりあえず俺の仕事は君をあの2人の影響力があまり無い地方に連れて行き、世界の仕組みを取得させることだ」
「はぁ」
「君は知らないだろうがあの2人はこの宇宙ではなかなかどうして有名人だからね。2人の影響があまりないように2人の行ったことのないエリアを調べて、その中で良さげな冒険都市をピックアップし、そこへ連れて行くのが頼まれた仕事さ」
今日の今日だが腑には落ちる。単なる専業主婦と思っていたあのお袋の強さは異常だ。だがまさか宇宙を股にかける有名人とは思わなかったが。
「その冒険都市?とやらに行って世界の仕組み?を手に入れるとどうなるんです?」
「その辺は取得時に色々教えてもらえるから俺から言うことは無いんだが、君、シンからゲーム機貰ったよな。」
「子供の頃に貰いましたね」
「世界の仕組みは神端末とも言われているが、君のゲーム機は神端末のゲーム機能のみを抜き出した特別品なんだ」
「特別品?」
「神端末でプレイしたゲームのスコアは他プレイヤーに強制オープンになるルールなんだ。そこでオフラインで練習できる価値が君のゲーム機にはある訳だが、デメリットとして動かすのに大量のオーラが必要になる。まぁ修行にもなるんだけどな。」
「神端末でゲームする分にはオーラは使わないんです?」
「使わんね。一般に神端末は物心付いたらみんなすぐに取得する物だしな。わざわざゲームするために死に物狂いで鍛錬して並外れたオーラを身に付けようとする奴なんてほとんどいないよな、はははは(笑)」
と大笑いするディムおじ。
「それじゃそろそろ移動しようかと思うんんだが何かリクエストはあるか?」
「リクエスト、ですか?」
「ああ。基本的にある程度は規模のデカい都市は選んでるが、都市ごとに特色はあるが、冒険者の流入が活発な都市がおすすめではあるが」
「じゃあのんびりできそうな田舎な街がいいです。自分のペースでのんびりやりたいんで」
「そうか。そうなると……ここだな、初級都市カナリヤ。昔は中級都市だったが都市付きの有名冒険者の引退で初級に落ちたみたいだな。ここならのんびりやれるだろう」
「はい、そこでお願いします」
「よし、それじゃ…これでいいな。俺の隣に立っててくれ」
「はい」
言われて隣まで移動したのをディムが確認すると「じゃ飛ぶぞ」と端末を操作し3秒後に浮遊感と共に見たことの無い街へと転移していた。