1-2 日常からの非日常
そろそろアルトが15歳になろうというある日の夜、両親のシンとローズはいつもと違う様子で話をしていた。
「アルトももう15になる。基本的な体術やオーラの使い方はすべて叩き込んだし頭も悪くない。なにより得意なゲームの腕前は計り知れないとこがある。正直得意分野のゲームじゃ俺でも勝てないレベルだ」
「そこまで育ったのならもう充分じゃないかしらね?私達に残された時間もあとわずか。アルトが今後どうするかは今まで通りアルトに選ばせればいいわ。」
「そうだな。本人のやりたいようにやらせるのが基本方針はずっと変わっていないからな。これから先どう成長していくのか楽しみにしよう」
「それじゃあ話は終わりね。明日のお昼ご飯にアルトに全てを伝えましょう。家族として過ごせる最後の時間を大事にしましょう」
翌朝1人でするようになった農作業で1日が始まっていくがアルトは作業を見つめるシンに何かいつもと違う空気を感じていた。
(・・・・?なんか親父の雰囲気がちょっと違う感じがするんだよなぁ。まぁそんなこともあるか。お袋の機嫌でも損ねたのかな?w)
なんてことを考えつつ慣れた農作業はあっという間に終了する。昔は2時間はかかっていた手作業がいまや親父抜きで5分とかからない。鍛錬の成果はこういうところにも表れていた。
「・・・よし。それじゃ朝飯を食べに戻ろうか」
「・・・つか、なんか親父いつもと空気違くね?お袋となんかあったか?」
「とりあえず飯を食いながらその辺の話をしようと思う。母さんからも話があるからな」
「・・・・・・・、俺なんかやっちまったっけ?身に覚えがないんだけど」
その日の朝食は今までで1番豪華だった。それがよりアルトの違和感を強くする。
「お袋、今日は朝から随分豪勢じゃないか?全部食べきれないぞ」
「無理に全部食べる必要はないわ。好物を食べたいだけ食べればいいのよ」
「なんか不気味なんだが・・・」
「そんなことはないわよ。しっかり食べて午前の鍛錬にそなえなさい。今日は私も一緒にやるからね?」
「お袋無理すんなよ。怪我なんてしたらつまらないぜ。観るだけにしとけよ」
「アルト」
「なんだよ親父」
「正直に言おう。母ちゃん、ローズは俺よりも強い」
「・・・はぁ?」
「冗談ではない。実際に組み手をすればわかる話だが、俺が全力でいっても1分もたないからな」
「親父よ、それは夜の話じゃないよな?」
「夜はもう少し頑張れるが一般的な組みt・・・・・」
その刹那、俺も親父も全く反応出来ない速度でお袋じゃどこから取り出したかわからない包丁を手に持ち顔を真っ赤にして親父の首筋に突き付けていた
「あなた〜〜?なんの話をしているのかしらぁ〜〜?」
「ぎ、ギブ、ギブ」
俺は絶句していた。今のお袋の動きに全く反応が出来なかったからだ。つまり親父の話は真実であるということ
「全くくだらない話ばっかしてんだから。もうご飯はいいわね?道場に行きましょう」
俺は初めてお袋と組み手をしたがまるで歯が立たなかった。俺と親父対お袋の2対1で戦っても手も足も出ない。親父の奴も俺と組み手をしてるときはかなり手を抜いていたのだろうと思わざるをえない見たこともない動きをしているが、その上をいく動きで完全に封殺するお袋。
「ハァハァ・・・、親父もお袋も同一人物か?俺の知ってる人間と、ハァハァ、中身変わってないか?」
エネルギーを使い果たし疲労困憊の状態で親父にたずねる
「これが真実だぞアルト。俺に関してはお前に合わせてただけってところはあるがな」
さらに解せないのがお袋の人外な強さであった。全力の親父はまだ到達できそうな見込みは感じることができたが、お袋の強さに到れるイメージが全くわかなかった。
「俺くらいの奴はそこら中にいるレベルだがローズくらいになると、そうだな、全世界のTOP100には入るだろうな」
「まぁ、あなたったら」
「今やったのは純粋な体術のみでの勝負だったが、これがなんでもありになったらさらに手がつけられなくなる」
「アルト、一応今のでもだいぶ手加減してるのよ?」
この実力差でかなり手加減されてるとかお袋マジ半端ねぇ。よくよく見ればお袋は全く息が上がってないし汗もかいてない。親父にしてももう息は整って疲れは感じさせない。
「それじゃ一息ついたら昼飯にしよう。そこで今後について話をしよう」