1-1 いつもの日常
「親父〜、こっちは終わったぞ」
「よ〜し、それじゃ今日はこのくらいにしておくか〜」
早朝は農作業から、これが我が家の1日の始まりになる。
人里離れた秘境とも言える場所にポツンとある一軒家に親父とお袋と3人暮らしにおいて自給自足はマストであり、1日と欠かすことは無い。
農作業を終えて親父と一緒に家に向かっていると丁度朝食の準備が出来たようでお袋の呼び声が聞こえてくる。
「ご飯できたわよ〜、今朝はハンバーグよ!」
朝飯をうまうまと食べ終えて一休みしたら次は昼飯まで鍛錬の時間となる。
昔は鍛錬なんて嫌いだったがそうも言ってられない事情が出来たため今は真面目にやるようになった。
とは言え、最近ではもっぱら親父との組み手がメインとなっており、そこで課題を見つけて自主訓練で克服する感じだ。
贔屓目に見ても親父は大分強いように思うが、判断基準が親父とオカンしかいないため世間一般と比べてどうかはよくわからない。
少なくとも親父よりは強くなっておかないと独り立ちは厳しいと思い、日々鍛錬には真剣に取り組んでいるのであった。
「ふぅ、美味しかったな。それじゃ午後は街に用事があるから出掛けてくるぞ」
「ちょっと待って親父、新しいゲーム欲しいんだけど」
「つい先日買ったばかりじゃなかったか?」
「それはもうクリアしちゃったよ。もうちょっと条件のキツいやつ買って来てよ」
「最近の消化速度半端ねぇな…。それじゃ次はシューティングでいいか?」
「うん、それでいいよ」
「あなた、せっかくだから私もついていくわ。色々買っておきたいものもあるし」
「せっかくだから街でのんびりしてきたら?俺は留守番してるからさ」
「そうか、・・・わかった。じゃあお言葉に甘えてゆっくりしてくるか」
と新作ゲームのおねだりを取り付けつつ両親が出掛けていくのを見送ったらゲームの時間である。
(今日は1人だから久々に全力でやれるな)
ゲームをプレイするために集中しようとした瞬間、ふと昔の記憶がフラッシュバックして一旦気持ちを落ち着ける。
それは俺が物心ついて色々と興味を持ち始めた5歳くらいのころの出来事
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「〜♪、これでこいつも及第点だなぁ、苦労したぜ」
「?、とおちゃんそれ何?」
「おっ、こいつに興味があるのか?」
「なんかやってみたい、面白そう」
「お前にはまだ早いと思うぞ?そもそも起動しないだろうな」
「起動?」
「大嫌いな鍛錬をしないと動かないんだよ」
「とおちゃんはやれてるよ?」
「これはプレイする人のオーラでしか動かないゲーム機なんだ。とおちゃんのオーラで動かしてもとおちゃんにしか遊べないんだよ」
そう言って親父はゲーム機を俺に手渡すとその瞬間にプレイ中のゲームがリセットされてシステム画面に書き換わる。
「あれ、画面変わっちゃった…」
「それはゲームのセレクト画面だ。そこでやりたいゲームを選ぶとプレイするための条件が表示される」
「条件って?」
「やればわかる。この端末はお前にやるから、ゲームがやりたいならサボらず毎日真面目に鍛錬するように」
「ぇ〜」
当時の俺は愕然とした。そのゲーム機は動力に生体エネルギーを必要としていたのだった。
親父が言うにはゲーム機を動かすためにはいわゆる気の力だのオーラだのMPだのというような人間の内なるエネルギーを扱えるようにならねばならないというのだ。
充電したゲーム機は充電した人間でしか扱えず(リセットは出来る)自分で充電する必要があり、長時間ゲームがしたいならばそれ相応の練度がないと話にならない。
俺は覚えてなく親父の談だが、当時の俺はゲームをするためにすぐになけなしのオーラを端末に注入しようとしてひっくり返ったらしい。そして翌日から真面目に鍛錬し始めて1ヶ月後には上級ゲームを1時間維持できるまでになったそうだ。
これは親父にしても見たことの無い成長速度だったらしく、より鍛え上げようとその後新しいゲームソフトを餌に色んな修行をやらせて今に至るのであった。
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(今日こそは親父のハイスコアを更新するぞ!)
なんとなく書き始めてみました
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