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「杏奈」

杏奈あんなと呼ばれた女性は長い髪とヒールのせいもあろうが高い身長は

小柄なマリと対称的だった。

「このヒト、ここでずっと座りこんでん…」

「あ? ホームレスやろ。そんなん珍しくも何とも無いやん」

「でもあんま見ない顔だよ」

「確かに。それによく見ると結構若いんじゃね? コイツ。ねぇ、あんた聞こえる?」

強めに問いただすも返答は無い。杏奈はしばらく考え込んだ後にどこかへ連絡し、

やがて強面の男がやって来た。彼は座り込む男を見て、

「なんやコイツ?」

「マリのいつものクセ。困ってる人間は放っとけないって」

「は? おい俺達は慈善団体じゃねーんだぞ」

と軽く怒気を含んだ口調で返す。

「いいじゃん。ちょうど男手が欲しいって言ってたし。コイツもしかしたら何かの役に立つかもよ」


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